立川直樹の内省日記

2010年4月26日(月)

4月22日(木)寒い朝。昨日が夏日だったのに、温度が15℃も急降下。テレビの画面には満開の桜に雪が積もっている景色が映し出されている。こんな変な天候はいつまで続くのだろう。早く春の暖かさの中で過ごしたいと心から思う。この変な感じは、政治情況とも世の中の動きともシンクロしていて、何もかもが迷走している。きょうのミーティングは昨日と同じ数の3つ。どれも進展はスローだ。夕方には名古屋へ移動。冷たい雨はずっと降り続いていて、ホテルの部屋から見える景色は“RAIN TOWN”とでも呼びたいような映画的な感じだった。


4月23日(金)東京の寒さが1947年以来だとテレビのニュースが告げていた。昨日も温度のことを書いたが、名古屋もこの時期なのに冬のコートを着ていてちょうどいい。“月曜会”という読書会で知り合って以来親しくしている三宅さんに“蓬莱陣屋”で昼食をごちそうになった以外は4時過ぎに“ボトムライン”するまでずっとホテルの部屋で本を読んでいた。斎藤明美さんが書いた「高峰秀子の流儀」。三島クンが「とてもいい…」と言って貸してくれた本だが、本当におもしろい。高峰秀子さんてこんな人だったのかと思うと同時に、いろいろなことを教えてもらえる。毎日毎日、「“食う”ように本を読む」というくだりにもぐっときたが、高峰秀子さんから全幅の信頼を受けている斎藤明美さんの文章もスッキリしていて魅力的だし、読んでいると軽く浮世離れできる。そして、明治6年に創業したという“蓬莱陣屋”の昼食も軽く時空を超えていた。足長蛸の旨煮と琵琶湖の小鮎の天麩羅、肝焼をつまみながらビールを飲み、メインは勿論ひつまぶし。甘めのタレが何ともおいしい。名古屋の食は充実していると僕は常々思っているのだが、“ボトムライン”で“BELLOWS LOVERS NIGHT”が始まる前に食べた“味仙”の台湾ラーメンと、終演後“今池屋”で食べたあさりや砂肝、ナンコツの鉄板焼やいか玉焼も絶品。“今池屋”は2年ぶりだったが、昭和の香りを色濃く残す店のたたずまいと、店主の品のいい対応は、自分が映画の一場面の中に入ってしまったような不思議な気分になる。こんな店が近所にあったらいいのに…


4月24日(土)10時15分発ののぞみで名古屋から新神戸に移動。夜のイベント立ち会いだけが仕事なので久しぶりに一昨日から“旅行気分”を味わっている。昼は里中さんと高岡さんと三宮高架下の“老香港酒家”でランチ。アヒルの照り焼きや豆腐のライスペーパー巻、海鮮レタス包み……締めの海南鶏飯、どれも非常においしく、こちらのノリもメニューのチョイスもよかったせいか、最後には店主のShiさんに挨拶され、デザートのエッグタルトをごちそうになる。こういうゆるやかな知り合い方はとてもいい。そして、食後に出かけた兵庫県立美術館の<写真家 中山岩太「私は美しいものが好きだ。」>は大収穫。第1部の<甦る中山岩太―モダニズムの光と影>は既に写真美術館で見たものだったが、天井の高い空間で見るとまた違った魅力が発見でき、中山が神戸をテーマとして撮影したヴィンテージプリントを、その撮影地を可能な限りたどりながら様々な資料と合わせて展示し、戦前のモダン都市神戸の姿を検証した第2部<レトロ・モダン 神戸―中山岩太たちが遺した戦前の神戸>はそこを訪れなければ見られないものだった。神戸大丸が作っていたDMや絵葉書などを見ると、いかにデパートが文化を発信する場所、庶民からの憧れの場所であったかが如実に感じられ、当時の神戸の街のロマンティシズムに満ちた美しさも目にした僕は30年代に生きていたら、どんなに幸せだったろうかと心から思った。同時開催されていた<絵画の5つの部屋>なども見たが、中山岩太の写真が放つオーラが強烈すぎて、流し見の域を超えることはなかった。そして、“BELLOWS LOVERS NIGHT Vol.9”ツアーのしめくくりである神戸“クラブ月世界”公演はバラエティに富んだ出演者が個性を競い合った結果、とても楽しい3時間になった。思いっきり笑わせてくれたザッハトルテとおしどり、それにデカダンなアート空間を創り出したmamamilk torioあたりは機会があれば15分以上のパフォーマンスを是非見てみたいと思った。終演後、貫禄のパフォーマンスでトリをしめたcobaとも話したがこのイベントは回を増すごとに内容は充実、おもしろくなってきている。打ち上げで乾杯の挨拶をした後、鼻をきかせて見つけた割烹“文之助”も割烹はかくあるべしという感じのいい店で食べ物も白鶴特製の日本酒も実においしかった。とりわけ筍まんじゅうなどは忘れ難い味。そして、うれしいことにこの数日、これだけ飲み続けても(KIRIN LAGER CLUBのイベントだから当然ビールの量は増大する)痛風の予兆は全くない。神様に感謝だ。


4月25日(日)朝の新幹線で東京に戻る。昼はかたづけものと原稿書き。夜は「真相報道バンキシャ!」から始まったテレビ三昧。日曜美術館の森村泰昌のドキュメンタリー、NHKスペシャルの「上海・百年の物語」、ETV特集の「普天間基地問題・沖縄から本土への問いかけ」を観て、しめは「SHOWBIZ」。上海と沖縄の違いはあれ、映像の記録は本当に力がある。温度はようやくその季節らしくなってきた。


4月26日(月)午前中、大学で授業を済ませた後、上野・寛永寺書院に向かう。蜷川有紀さんの絵画展「薔薇まんだら」に合わせて行われるシンポジウムに参加するためで、蜷川有紀、谷川渥、假屋崎省吾の3人による鼎談「桜の文化・薔薇の文化」と寛永寺山内現龍院住職の浦井正明さんのお話「上野の桜」は中々おもしろかった。第2部は根元中堂に場所を移し中国琵琶奏者、邵容(シャオ・ロン)の演奏という趣向だったが、根元中堂の中の螢光灯の明かりはちょっと興ざめだった。寛永寺の後は上野の森美術館の“上野の森美術館大賞展”と江戸東京博物館の“龍馬展”の内覧会・レセプションパーティーを回る。上野の森の方は全体に作品のレベルが高かったし、“龍馬展”も興味深い展示物がそろっていて楽しめたが、その展示が壁目線ではないので押しかける入場者をどうさばくのだろうかと心配になった。夜は“va-tout”で夏の“The 地球LIVE”の打合せをしながらの会食。音楽業界の産業革命に近い変化とどう対応していくか課題はたくさんある。

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