往復書簡

往復書簡 8 三島太郎

<往復書簡 8 三島太郎>

立川直樹様

本当に世界は大変なことになっていますね。諸事憂鬱に感じられるのはごもっともですが、考え過ぎも身体に良くないと思いますので、何か良い気晴らしでもなさってください…。
桜が咲く頃のライブ往復書簡、いいですね。ぜひ、おいしいシャンパンでも飲みながらやりましょう!「ナイトメア・アリー」もありがとうございます。ぼくはなぜかデル・トロ作品を1本も観たことがないので、心して観に行きます。

…とはいえ、現在進行形で起きている深刻な紛争は、人の気を滅入らせるには十分だ。ロシアのウクライナへの侵攻は許されないことであり最低最悪の悪手だと思うが、世界からの経済制裁によってロシア経済が危機的状況を通り越して破滅的状況に差し掛かりつつあることもとても気になる。
ルーブルは暴落し、ロシア国内ではVisa、Masterも使えなくなった。国債はすでにジャンク債と化し、リース大手が航空機の契約を打ち切ることで、ロシアの民間航空機の半分が運行困難になるとも伝えられている。
いよいよ追い詰められたプーチンはどんな手に出るのか?あまりハッピーなイメージは浮かんでこない。

3/4付CNNの「『我々が選んだわけではない』  ウクライナ戦争の理解に苦しむロシア国民」は、ロシアの人々の「今」についての興味深い記事だ。
「母は私の言うことを信じないし、私も母の言うことを信じない。私たちの情報源は全く違う。私は、ロシアでは長い間ほとんどブロックされている独立系メディアからすべてを学び、母はテレビを見ている」というくだりを読むと暗澹たる気持ちになるが、それでもどこかに希望は残っていると信じたい。
ぼくはテレビを全く見ないのでテレビのことは分からないが、日本経済新聞をはじめとする国内外のいくつかの信頼できるメディアの分析や、インターネットを通じて世界に伝えられるゼレンスキー大統領の姿勢に励まされる人は多いと思うし、同じウクライナのコルンスキー駐日大使のtwitterを通じての発信力も凄まじく、「何かが変わるかもしれない」という感覚を我々に抱かせてくれる。

東京では「まん防」はなんだかスルッと延長になってしまったが、ロシア-ウクライナ問題のおかげで、みんな、それどころじゃないという風にも見える。
そんな中でたまたま配信で観た、マーティン・スコセッシ製作総指揮の「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」というドキュメンタリーには心を打たれるものがあった。エリック・クラプトン、ブルース・スプリングスティーンほかのアーティストの証言からはザ・バンドについて自分が全く認識不足だったことが分かったし、ロビー・ロバートソンの、(バンドの中の)「何かが壊れ 元には戻せなかった」という言葉はまるで今のぼくたちが生きる日常について語っているかのようで暗示的でさえある。
そんな興味は1974年のボブ・ディランとザ・バンドのツアーを記録したライブアルバム「偉大なる復活」に、そして大判の本「ボブ・ディラン全詩302篇―LYRICS 1962‐1985」 につながっていく…。

2月下旬には太宰府天満宮に梅を見に行った。
飛梅(とびうめ)はその枝ぶりといい花といい感動的な美しさで、心字池(しんじいけ)やそこにかかって「過去」「現在」「未来」を表すという太鼓橋もとても趣がある。名物の梅ヶ枝餅もおいしかった。やはり気になっている場所には足を運んでみるものだ。おいしかったといえば中洲かいわいで食べた「ごまさば」やアラ(クエ)の刺身、アカムツ(のどぐろ)のスープ煮といった魚料理やうどん、長浜ラーメンは素晴らしくおいしく(しかも安い!)、福岡を離れたくない気分になったほどだった。

「『我々が選んだわけではない』 ウクライナ戦争の理解に苦しむロシア国民」
https://www.cnn.co.jp/world/35184470.html

「ボブ・ディラン全詩302篇―LYRICS 1962‐1985」

飛梅

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