往復書簡

往復書簡 1 立川直樹

<往復書簡 1 立川直樹>

もう随分と長いつきあいになる関西在住のフードコラムニストにしてプロデューサーの門上武司さんから定期的にハガキが届く。映画や本の話、時には軽く政治の話…
これがとてもいい感じで、メールが一般的になってしまった世の中に一石を投じていると思う。
そして、ある日、本棚にあったアレン・ギンズバーグとウィリアム・バロウズの「麻薬書簡」が目に入った。
これだ!と思った。“アナログ原人”である僕のホームページを開設してくれ、一緒に“東京アート・パトロール”というネット・マガジンを運営したこともある三島クンと21世紀の往復書簡みたいなことができたらいいなと…

とにかく世の中の変化が恐ろしいほど早くなった。そしてフィジカルなものが軽視されていく。代官山の蔦屋書店からの<DVDレンタルサービス終了のお知らせ>のハガキ。
この20年間で日本の書店数は半減したというが、僕の周りでも普通の書店の多くが姿を消した。好きだった六本木の誠志堂がなくなったのもだいぶ昔のことだ。
でも、僕は本やレコードの現物がなければ、とても生きていけない。
映画もスクリーンでみたい。

最近読んではまったのが「デヴィッド・ボウイの人生を変えた100冊」。「本はボウイの音楽と人生の羅針盤だった」という帯のコピーに偽りなしの内容で、「異邦人」や「ロリータ」にはじまり、アンジェラ・カーターの「夜ごとのサーカス」(この人は本当にいい)など、ボウイと同じ“種族”だなと思えるものが並び、ジョン・オコーネルという書き手の分析力に脱帽した。

あとはパティ・スミスの「Mトレイン」が本ならではの魅力に満ちたもの。「カフェ、死者、書物。パティ・スミスの言葉を通して、かつてあった場所が、かつていた人が、かつて注いだ光があらわれる」というコピー通りのもはや魔術と言える時空を行き来する旅…
この秋は来年の誕生日に出版する「音楽の聴き方」という本の作業をしていたが、2冊の本からはイマジネーションがもらえた。

P.S.ジェニファー・ハドソン主演のアレサ・フランクリンの人生を描いた映画「リスペクト」が最高にいい。絶対のオススメ

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