往復書簡

往復書簡 11 立川直樹

<往復書簡 11 立川直樹>

to CAMERON

桜が咲く頃にはワインでも、なんて言っていたのにもう梅雨の時期になってしまいました。相変わらず、というか何だか前にも増して、旅する日々が続いています。
先週の週末は箱根のポーラ美術館で、SUPER AUDIO LIVE「音楽の情景〜JOURNEY TO THE FOURTH WORLD」」をプロデュース。出演もして一旦東京に戻ってからは京都から車で1時間ほど走ったところにある “比良山荘”で熊とじゅん菜の鍋に鮎の塩焼きなどを食べながら大層濃い懇親会があり、その後は“ラジオシャングリラ”の収録のために東京に戻り、22日からは週末に始まる「時間~TIME BOWIE×KYOTO×SUKITA リターンズ 鋤田正義写真展」の仕込みのためにまた京都。土曜日は大阪の“ベロニカ”と言うクラブで、僕がプロデュースしているビッグ・バンド、MUSIC UNLIMITED ORCHESTRAのライブをチェックしに行きます。
そんな旅をしながら今読んでいるのが吉田健一の「舌鼓ところどころ/私の食物誌」。その中に出てくるじゅん菜の話が比良山荘の鍋とクロスしたのもおもしろかったけど、何だか浮世離れしたノリと時代背景が最高の気分転換というか癒しになります。そしてテレビのニュースでも報じられ、新聞にも載っていましたが、書店消失の勢いは止まらず、遂には赤坂駅周辺にいくつかあった一般書店が全てなくなってしまいました。雑誌も新聞も売り上げはどんどん落ちているようですが、6月19日付の神奈川新聞の書評欄に「女帝 メリー喜多川」という中々毒々しい本と昔マガジンハウスにいて一緒に仕事をしたこともある澤田康彦さんの京都の地方紙に連載されていたコラムやエッセーを集めてまとめた「いくつもの空の下で」の対比を目のあたりにできるのは新聞ならではないかと思いました。
その中で澤田さんは「消えゆくもの」の章で、レコード、カセットテープ、ベータマックスなどに触れているのですが、つい数週間前にやはり新聞に載っていた最近の若者はギターソロを飛ばして曲を聴いていると言うコラムが、そこにクロスしてきました。世の中凄いことになっていますよね。ファスト映画のニュースも僕にはショックでした。
だからポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作「リコリス・ピザ」のような映画を観るとホッとします。70年代初頭のウェストコーストが舞台になったちょっとひねりの効いた青春映画ですが、音楽もファッションも当時のものを再現していてかなりトリップできます。使われている楽曲は38曲。選曲のセンスも中々です。
でも曲の多さということではロケ先でなくなったレイ・リオッタを追悼してWOWOWでON AIRされたマーティン・スコセッシの「グッドフェローズ」を懐かしく観たら、何と43曲も使われていました。オープニングがトニー・ベネット、最後の方でセックス・ピストルズの「マイ・ウェイ」なんてさすがです。僕もポーラ美術館のイベントでは選曲の楽しさとキツさをたっぷり味わいましたが、今後もうれしいことにSUPER AUDIO LIVEはかなりスケジュールが決まっています。
そして最後にはお知らせとお誘いですが、7月6日に立川のCINEMA CITYでバズ・ラーマン監督の最新作「ELVIS」のロードショー公開に合わせて湯川れい子さんとトーク・イベントをやります。湯川さん大絶賛で海外での評判も上々。湯川さんから「観た? 凄くいいわよ」と電話があって、急遽思いついたイベントですが時間があったら是非お出かけください。

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