立川直樹の内省日記

2010年5月11日(火)

5月6日(木)ゴールデン・ウィークが終わった。時空を超えた旅を満喫した“休みの国”からの帰還。買ったまま、数ページ読んで放置しておいたマイケル・ヴェンチュラの「動物園 世界の終る場所」にどっぷりとはまり、「ルイス・バラガンの家」で夢の世界に遊び、ビル・ブラッフォードとビーチ・ボーイズという、対極にあるような音楽を楽しんだ。そして元5階級制覇チャンピオンのフロイド・メイウェザーとWBAウェルター級チャンピオンのシェーン・モズリーのドリーム・マッチと、マイク・ニコルズの2004年の映画「クローサー」……ダミアン・ライスの歌う主題歌が記憶の中から甦り、カトリーヌ・カトリーヌの「アンファン・テリブル」がまだ充分にCDが大手をふっていた時代のことを思い出させてくれた。そんな浮遊感を少し引きづりながら始まった仕事は、河北門のコンサートの打合せと、文京シビックホールで12月に金沢の歌別座で上演してもらおうと思っている勘三郎さんの演目「仇ゆめ」を見る。フワリとした風情のいい舞台でまた夢の世界に戻されてしまった。帰宅後の夕刊には佐藤慶さん死去の記事。81歳になっていたんだとちょっと驚きながら、ATGに通いつめていた日々の思い出がフラッシュバックしてきた


5月7日(金)5時に目がさめる。昨日の夜は珍しく中々眠りに入れなかった。明らかにアルコール摂取量不足だ。だから、連休前に痛風の発作が出た時に採血した結果を午前中聞いて、これでまたいける!とうれしくなった。結果は全て問題なし。肝臓もバッチリだし、凝りない人だと笑われても全面復帰は間近い。午後3時半過ぎには諏訪に到着、春宮で下見をすませ、チラシのデザインの打合せなどをした後、“イタリア田舎料理”という看板を掲げた“DANLO”なる店での松坂氏との食事ではロターリを1本と、白ワインと赤ワインを1杯づつ飲み、自家製ハムから豚のホルモンのトマト煮込みから最後のパスタまで快調に胃袋に入っていった。“酒は百薬の長”という言葉がフッと頭に浮かんだ。


5月8日(土)昨日と同じ、5時に目がさめる。部屋の窓いっぱいに広がる諏訪湖の景色が美しい。空中の楼閣にいる気分だ。そして、8時には下諏訪町の春宮大門の交叉点に下社里曳きに合わせたパレードを見るために到着、午後まで祭りの中で過ごす。車が全く走っていない世界をどんどん埋めていく人の群れ。騎馬行列や長持行列、それに春宮での木落とし…4時過ぎには“浜の湯”に戻ったが、御柱祭の間ずっと御柱祭を放送し続けている地元のケーブルテレビ局LCVをつけると、2つの世界がひとつにつながった。その後しばらくして春宮の立て御柱で落下事故。2人が亡くなったが、日本で最も危険な祭りであることを目のあたりにした。前々年、つまり14年前も春宮・一の柱では5人が亡くなったという。何か不思議な因縁……。夜は僕と諏訪のつきあいのきっかけになった山崎さんと、昼間下諏訪町を案内してくれた中村さんと御柱祭の話をメインにした酒宴。昼のふるまい酒が残っていたが、キリッと冷えたシャンパンがとてもおいしかった。5月らしい料理も申し分なしだった。


5月9日(日)新緑の美しい景色の中を東京に戻る。スピード感と音楽がぴったりとシンクロし、理屈抜きの快感……2泊3日の滞在なのに随分と長く東京を離れていた気がする。この時間の感覚というのはとても不思議だし、ドライヴというのも時間を切り裂いていく感じがある。それが昔からとても好きだ。だから、どうしても同じベッドで1週間以上寝ると妙なストレスが出てしまう。旅はきっと永遠に終わることはないんだろう。


5月10日(月)スティーヴン・ソダーバーグの新作「ガールフレンド・エクスペリエンス」を観る。21歳の現役ポルノ女優サーシャ・グレイを主演にしてドキュメンタリー・タッチで撮った話題作。60年代のゴダール映画を思わせる作りで、不思議な酔いに全身を包まれたが、そのバイブレーションが続いていたのか、夜の“龍天門”での会食は、その映画の延長線のようだった。打合せやテレビのニュースとの妙な距離感は、その映画のせいだけでもないだろうし、何か気持の変化が確実に起きている。


5月11日(火)いい映画だった。「悲劇的でいながら、驚くほどの光溢れる必見の映画」(Le Point)という評価も納得の「あの夏の子供たち」。尊敬していた映画プロデューサーの自殺という実体験から生まれたミア・ハンセン=ラブ監督の作品だが、フランス映画がフランス映画だった時代を思い起こさせてくれた。ハリウッド商業主義の中からは絶対に生まれ得ないものだし、日本映画界でやったら暗くて地味なものになってしまうだろう。こういう映画と出会えるとホッとするし、うれしくなる。CHAGEとタカハシカオリとのミーティングも順調だったし、夜、事務所で催した“バシ酒の会”もとても楽しかった。シンプルな本物は理屈抜きで人を幸福な気分にさせてくれる。

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