ARCHIVE:トークセッション

第2回 VS 森永博志 前編

ついに初来日を果たしたアル・クーパーはマッドでクール。そのプレイは大人のロック・ファンの魂をかき乱し、共有された高揚感は渋谷に留まることなく東京の街全体に揺曳した。
しかしMick & Mackenzieは何事もなかったかのようにその五感を駆使してノン・ブレーキで今日も街を疾走する。
この日、六本木の『龍坊』で天才料理人が作り上げる素晴らしい料理と甕出し紹興酒を味わいながら二人は話し、笑い、時に憤り、世を憂いた・・・。

というわけで、tachikawanaoki.comでの森永博志VS立川直樹スペシャル・トーク、第2回目である。
『シャングリラの予言』(正・続)の大きな魅力の一つに、「読んでいるとMick & Mackenzieと一緒に遊んでいるような気になってワクワクする」、「元気が出る」という疑似体験効果があるように、私は前から思っていた。
前回に続いてこのトークの現場に居、テキストにまとめていて改めて痛感したのは、『シャングリラの予言』がトークで取り上げる題材の選び方、まとめ方のいずれもが非常に優れた「芸」であること。前記の疑似体験効果もその「芸」の結果であったということだ。
ラフでストレートな印象なんだけど実はすごいテクニックに裏付けられたギター・プレイが聴く側のイマジネーションに強く訴えかける、といった類の現象なのだと思う。

『シャングリラの予言』(正・続)を未読の方は是非一度。そして、すでに読んだ方ももう一度読み直して、そのあたりの「芸」の醍醐味をじっくり味わっていただきたいなと思う。

M=Naoki“Mick”Tachikawa  =Hiroshi“Mackenzie”Morinaga  飯田=飯田裕人  三島=三島太郎  敬称略)

シャングリラにまつわるあれこれ

M  : この前、女の子にね、『シャングリラの予言』の文庫の方を貸してあげたの。そしたらあれ、帯にね、『60分の通勤の間に読める本』って、そんなことが書いてあるんだって。
でもその女の子は「私、読んで思ったけど、あれは60分で会社を辞めたくなる本です」って。名言だよね(笑)。
M´: (笑)『シャングリラ』は読みやすいんだよね。中身あるかどうかわかんないけど読みやすいの。
飯田: でもあれ、理解できないっすよ、絶対。
M´: いや、理解じゃなくてさ。だからこの前のアル・クーパーのコンサートが気持ちよく聴いちゃえるんだけど、聴いてるうちに「マッド」が入ってくるようなものなんだよね。
M  : 深く掘り下げなければ、アル・クーパーのコンサートだって異常に気持ちいいだろ? 『シャングリラ』もそうなんだよ。
さらっと読んじゃうこともできるんだけど、でも、一歩入り込んじゃうと、結構すごいことになる(笑)。
M´: 今出てるクイック・ジャパンに、小西康陽と赤田祐一と坪内祐三の3人での雑誌についての座談会が出てて。
それでスタジオ・ボイスの話になって、ミックと加藤和彦さんが連載対談をやってたっていう話があったんだけど、それの脚注みたいなので「それがたぶん『クラブ・シャングリラ』の元だろう」ってあったけど、それとは実は違うんだよね。
M  : 違うんだけど、彼らからはそういう風に見えるんだろうね。
M´: この間、スペースシャワーの人間から電話があって、今度DVDのロックのレーベルを作って、昔の作品を月に1回出すことになって。
で、それに関してのレーベル・コンセプトとして、『シャングリラの予言』の前書きの中の何行か使わせてくれって。で、それはそれでいいよ、っつったんだけど。
M  : あれ良い文章だよね。マッケンジー、ああいうの本当に上手いよ。
M´: 口上?
M  : 口上は森永っていうぐらい(笑)。
M´: リードね。
M  : うん、上手い。ぼくのことをいろいろ書いた中では、マッケンジーのはすごい。
M´: あの名文はね、取ってあるの。今まで自分が雑誌に書いたやつで、単行本に入れないやつっていうのは、取ってあるんですよ。最後に出すやつ、考えてあって。
飯田: ほんとですか?
M´: うん。意外と「本、出さないか」って言われても、断っちゃうの。出さないようにして出さないようにして。でも時間が経つとつまんなくなっちゃうものもあるから。ミックのやつとか、山ちゃんのやつとかね、取ってある。
M  : 今、マッケンが言ったみたいなことで言うと、例えばチェット・ベイカーとかは、誰かがくだらない本を出したら、「(チェット・ベイカーは)こんな やつじゃない!」って、セルジュの時みたいに出してもいいなって。自分から積極的には出したくはないんだけど――自慢してるみたいだからさ。
飯田: そう言えば、昨日、植草さんの本を買って読んで思ったんですけど、ぜんぜん自慢気じゃないんですよね。
M´: 殿山泰司も面白いよ。筑摩文庫の『三文役者の待ち時間』とか。
M  : あとは、やっぱり田中小実昌ですよ。
M´: そうそう、植草さんもいいんだけど、田中小実昌と、殿山泰司。植草さんは同世代っぽいんだよね、年齢は上なんだけど。殿山泰司とコミさんは、ちょっと特別だよね。

マッド&クールなアル・クーパー

飯田: (アル・クーパー日本公演は)森永さんもすごく喜んでる感じが伝わってきましたもんね、1曲終わるたんびにロビーに出てきてビール飲んで。
M´: ああいう気持ちいい音楽って、外出てくるじゃん(笑)。でもね、あれでわかったのは、だんだんステージが進んでいくと「やっぱりアル・クーパーだなあ」って。
M  : マッドなんだよね。
M´: そう、マッドになってくるんだよね。だけどクールだから、キーワードとしては「マッドでクール」。
M  : そうそう。見に来ている側も良くて、あれは久しぶりに東京の正しい不良が集まったサロンだったね。
飯田: ぼくなんか入れない場所ですよ。
M  : でも、今、おまえ入ってるよ。地獄の門番みたいにさ(笑)。
飯田: (笑)いやいや。いやあ、でも来てるメンバーは相当エグかったですねえ。
M´: クロードとか?
飯田: 喜んでましたよ。
M´: フクちゃんも。
M  : フクちゃん来てたの?
M´: 来てたよ。フクちゃんっていうのはね、プラスティックスっていうバンドのメンバーで、前に原宿でプレッピーっていう洋服屋さんやって、すごい当たったんだけど――。
三島: 昔、よく雑誌に出ていらっしゃいましたね。
M´: そうそう。で、ロックが好きだからロック・バー始めちゃって。あの人、アル・クーパーの大ファンなんだよ。昨日行ったらかけてたもん、アル・クーパー、ガンガンに。
あるコンサートがあって、その高揚感が街に1週間2週間残ってるっていうのは久しぶりだったね。
M  : 久しぶりだった。でもさ、結果論としてうまく行ったんだけど、実は心配だったんだよ。
(アル・クーパーを)呼びたいっていう気持ちはあったけど、本当にあそこまでできるかどうか。だってヨレてる可能性だってあるわけじゃん。「昔の名前で出ています」みたいなさ。
だからぼく、それは君(飯田さん)にも見せなかったんだけど、しばらく前にデンマークかノルウェーでやったテレビ・ショーのビデオっていうのをカンバセーションが送ってきてくれたのを見た時、ちょっとこれは誰にも見せるのやめようと思ったもの。
M´: へえー。それが何年?
M  : 去年ぐらい。白髪で、なんかこうヨレてて。
M´: ツアー?
M  : ヨーロッパ・ツアーの時に、たまたま向こうのテレビ・ショーでアル・クーパーのライヴっていうのがあったわけだよ。
でもね、ぼくは賭けよう!と思ったの。とにかく自分はアル・クーパー、アル・クーパーってずっと言い続けてたんだから。
それでぼく、初日のクアトロで「あ、いいな」と思ったのは、あのキーボードの上にローマ字かなんかでメモが書いてあって、「日本に来てとても嬉しいです。 日本は世界で一番ぼくのファンがいる国です。楽しんでください」とかって言って、(お客さんも)みんなワーッて言うんだ。その時は、アル・クーパーってい わゆる良い人なんだよ。
ラメの服なんか着てるんだけど、「あ、この人良い人だな」みたいな。
M´: そうそうそう! もう「上がっちゃった」かな?みたいな。
M  : ね? でも、そこからジワジワと狂ってって、『アイ・キャント・クイット・ハー』ぐらいからソロにかけてのへんなんかものすごいでしょ? 打ち込 みだったら、あのハモンドの最後の倍音のとこ、行かないもん。それで、1時間15分目ぐらいに『シーズン・オブ・ザ・ウィッチ』と『青い影』のメドレーに なるあの瞬間を見た時に、ぼくは「ああ、やっぱりこの人のことを好きでいてよかった」って思った。
それはね、セルジュ以来、年上の人に対して初めて感じた気持だったね。
ショーが始まる前にぼくクアトロの楽屋で(アル・クーパーに)会って、ぼくは昔からあなたの大ファンで、『アイ・スタンド・アローン』がマイ・フェイバリット・アルバムですって言ってたことからもわかるでしょ。
M´: でもなんかミックに似てんだよ。ゲンズブールもアル・クーパーも似てんの。それは早乙女も言ってたもん。ミックの風貌はここ何年かで変わったと思うよ。北海道に一緒に行った時の写真から比べると、はるかにすごいよ。
三島: 良かったですね。お客さんも連日大入りだったし、内容的にも素晴らしいコンサートになって。
M´: でも初めてだよね、みんながあんなふうに受け止めたのって。
で、アル・クーパー見た後、何がいいかなあって聴いてるのって、アニマルズだもんね。アニマルズぐらいじゃないともう満足できなくなってる。他のはみんな柔(やわ)な感じがしちゃって。
マッシヴ・アタックとか聴けなくなっちゃったし、若い編集者に「レディオヘッドがいい音だ」って言われてヘッドフォンで聴いたんだけど、すぐ「もういいよ」って言っちゃったもん。ペラペラじゃん、みたいな。
M  : なんか、音が出てくるところの厚さがぜんぜん違うんだよね。
M´: ペラペラ。カベ紙みたいなんだよね。壁になってない。
今まではどっちかだったんだよね。「マッド」だけか「クール」だけか。
でもアル・クーパーはその両方があったところがすごく良かったんだと思う。
そう、バンドのメンバーの人たちが、バークレーの先生たちなんだって聞いたんだけど・・・。
飯田: びっくりしたのが、ミッキー吉野さんが受付に来たんですけど、あのミッキーさんが、「ミッキーです」なんてお辞儀して。でもそれは(バークレーで)先生に習ったっていうのがあるんで、「見させていただきます」みたいな感じなわけですよ。
M´: よく話にはバークレーで勉強したっていうのを聞いてて、どんな学校なのか想像つかなかったけど、もしあのバンドのメンバーが先生だったらば、すごい学校だよね。
M  : ギターの人なんか、顔見たらマンハッタンの証券会社勤めって言ってもおかしくないのに、フレージングは、ケニー・バレルがサイケ入っちゃってんだよ。
飯田: リハーサルしか見てないすけど、すごいテクでしたよね。
M  : いや、すごいすごい。だからケニー・バレルのジャズのあのイディオムを完全に習得して、なおかつジミヘン入ってるんだよ。
M´: 入ってんだよね。でもやっぱり他のメンバーもギターのプレイに入ると、興味深々で見てるから。「今日はこういうので来るか」みたいな。
あのステージの中で、アル・クーパー中心にして、火花散ってたと思うよ。で、一番の華が「今日も来るかなあ、アル・クーパー」(笑)で、「行ったー!」みたいな(笑)。ドカーンと花火打ちあがったような感じだもんね、あのマッド・プレイは。
M  : いやあ、後半のマッドな感じはすごかったねえ。
M´: ミック・ジャガーなんかそれとはぜんぜん違うんだよな。
M  : 彼は最初からロック商人的なところがあったもんね。
店の人: (海老を揚げた料理を出しながら)熱いうちに召し上がってくださいね。
M  : これはいつもの海老(の料理)じゃないんだよね。・・・うん、美味しいこれ!
三島: うまい! さすが(孫さんが)「いつもと違うのを作らせろ」と言っただけありますねえ。
M´: うん、うまい!
M  : マッケン、ほんっと美味いと食うの早いね(笑)。あっという間に食べ終わってる(笑)。
M´: うちの父親が品川じゃないすか。オヤジの話を聞くと、うちは昔、旧東海道に家があって、目の前海だったんだって。すっげえキレイな海。
M  : だって芝海老っていうのはね、芝で採れたから芝海老っていうんだから。
M´: そうそう。
M  : 全部埋め立てだからな。
M´: 家からぽっと出たらもう海で、もう泳いでたって言ってた。
M  : 大森でアサリが採れたんだから。
M´: それがもうどの辺だかわかんなくなっちゃって。
M  : だから東京湾全域でそうで、稲毛なんていうのは、ぼくが子供の頃は潮干狩りしてたんだから。
M´: 品川も子供ん時、泳げましたよ。海苔とかも採れてたし。朝は生海苔とかだったり。

身震いするほどの蛍を見た

M  : 先週の蛍、良かったね。身震いしちゃったもん、あまりのすごさに。
M´: すごかったよね。
M  : 名古屋で万博のミーティングして、その後、列車の中でマッケンジーと待ち合わせて小浜の方まで蛍を見に行ったんだけど、ぼくの知り合いの人の山荘といってもそこは山奥で、もう『地獄の黙示録』みたいなんだよね(笑)。
M´: 『地獄の黙示録』か連合赤軍か。あさま山荘状態(笑)。それでそこに行く途中、電車の中で本読んでたんだけど、なぜか読んでたのが偶然『地獄の黙示録』の『NOTES(原題:Notes/on the Making of Apocalypse Now)』で。
そしたらたどり着いたところが、なんか『地獄の黙示録』のまんまだった(笑)。
M  : いやあ、マッケンが『NOTES』を見てたから、「なんかこいつ呼んでるなあ」みたいな(笑)。
M´: まあ、なんか本を1冊持ってこうかなと思って手に取ったのが『NOTES』で。読み始めたらすんごい面白いわけ、今読むと。なんか今の時代とオーバーラップしてて。
M  : ぼくが前言ったじゃん、『NOTES』は最高だって。
M´: 今読むとおっもしろいんだよねえ。なぜならば、イラク戦争は映画のような戦争だから。
『地獄の黙示録』はロケ自体が戦争だったみたいな感じで、なんかパラレルになってる。
飯田: じゃあアル・クーパーを見た数日後に小浜に行って、小浜がもっとびっくりだったわけですか?
M  : 小浜といっても、小浜から20キロ近くさば街道を京都に向かって走った名田庄村というところ。で、迎えにきてくれたのが敦賀ね。
M´: 蛍がいる場所まで行く出発点に原子力発電所があるんだからさ、すごいよね。
M  : で、そこに立体映画館があるのよ、アイマックスシアター(笑)。
M´: アイマックスシアターに3人しかいないという。で、そこからさらにその山の中に分け入って見た蛍、すごかった。満天の星空みたい。だって真っ暗で明かりが無いところに星と蛍がミックスしちゃってわからないんだもん。
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