立川直樹の内省日記

2010年6月9日(水)

6月4日(金)朝の10時からホテルオークラの“CAMERIA”で“The 地球ライヴ”のミーティング。朝食と昼間の時間の間の人気のない感じがとてもいい。ミーティングもまずまず順調で、その順調さはジョイ・ディヴィジョンをかなりの音量で聞きながら出かけたTOKYO FMでの40周年記念コンサートのミーティング、クエストホールでの夜のコンサートのミーティングへと続いていった。こまどり姉妹をスペシャルゲストに迎え、東京パノラママンボボーイズ、渚ようこもそろっての夜の“歌謡ワンダーランド”も大成功。思っていた以上の受けよう、まとまりようで一気にシリーズ化の話まで発展したのがうれしかったが、ミーティングとコンサート本番の間に出かけた大倉集古館の館蔵品展<爽やかな日本>と西武渋谷店B館美術画廊の「明和電機ボイス計画宣言」展、根津美術館の新創記念特別展第6部<能面の心・装束の華~物語をうつす姿>も出かけてよかったと思えるものだった。特に根津美術館の展覧会は能面が内包する深い精神性や、能装束の美しさ、それがともになって生み出す物語の世界を感じとれる素晴しいもので、しばし夢幻の世界に遊ぶことができた。それに対してこまどり姉妹のステージは歌謡曲の俗の魅力全開という感じの凄さで、こまどり姉妹初体験の若い観客も口あんぐりという感じ。「ソーラン渡り鳥」「浅草姉妹」……と続くステージはカラオケのバックとはいえ、芸能生活50年の貫禄、芸人の凄味に唸らされた。コンサート後の打上げの食事でも話題はこまどり姉妹。週末にはサインしてもらったCD「こまどり姉妹大全集」をBGMに一人宴会が楽しめそうだ。


6月5日(土)菅新首相誕生をめぐるネタが中心のニュースを見ながらの朝食の後、キャロル・キングとジェイムス・テイラーの「トルバドール・リユニオン」のDVDを観る。何と異なる2つの世界。その後はここしばらく読んでいたマイケル・ヴェンチュラの「動物園 世界の終る場所」を仕上げたが、かけひきや中傷が渦巻く政治や商業主義系エンタテインメントの世界より、自分の思いに忠実に創作活動を続けているアーティストにはジャンルに関係なく共感できるし、そうした人たちと同じ世界で生きていたいという気持がどんどん強くなっている。いい映画や音楽、美術…は僕にとって最高の良薬になっている。


6月8日(火)みのもんたが「朝ズバ!」の中で「日記なんて、自分で引き出しの中に入れておくようなものだろ…」とブログの話をしていた時にふとつぶやいたのが妙に印象に残っている。マイケル・ヴェンチュラの小説のあとがきにも考えさせられる部分が多かった。先週末の朝日新聞の夕刊に載っていたマーケッター、川島蓉子さんの<ファストファッション隆盛に一言~不況疲れ 潤い与えて>という文章にも大いにうなづかされた。「価格の安さや機能性だけでなく、多くの価値軸が存在するところに、社会の豊かさはあると思わずにはいられない」という締めの文章には同意できる。そんな気分の中で観た「氷雪の門」はズシーンと身体に響いた。1974年3月、公開を目前にしながら当時のソ連の抗議により公開が中止になった問題作。アンジェイ・ワイダの「カチンの森」とダブりながら、思いを持って作られた映画の凄味というものに唸らされた。


6月9日(水)朝刊にHMV渋谷が8月中旬に閉店するという記事。CDの売り上げがピークの1998年の4割程度にまで落ち込んでいるから仕方がないかという気もするが、これも時代の流れか。大学のゼミでもデジタルの時代に実際に手にしたり、目で見たりするものの話をしたが、世界はどんなふうに変わっていくのだろう。そんなことをぼんやりと考えながら2時30分出発の飛行機で金沢へ。旧知のY氏を案内して、金沢市内のホールを下見して夜は“むら井”で小宴会。月曜は西麻布の“藤森”、昨日は広尾の“季楽”と珍しく日本食が続いているが、日々よく食べよく飲んでいる。鮎や鰻はそれぞれの店でそれなりのおいしさだし、料理人の顔が見え、かつ過度のサービスもない店は性にあっている。“むら井”の後は久々に東の茶屋街に出かけ、“照菜”と“二の字”をはしご。赤ワインから再び日本酒へとよく飲んだが、全く人気のない茶屋街の道と路地を歩いていたら、ふと自分がいつの時代にいるのかわからなくなった。この鏡花的世界はここでしか味わえない至福の時間だ。

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