立川直樹の内省日記

2010年5月31日(月)

5月25日(火)朝刊にラッシャー木村の死亡記事。アントニオ猪木を頂点にしたプロレス全盛時代のことが懐しく思い出される。音楽も映画も含めてエンタテインメントが元気でいい時代だった。仕事は朝の10時から一時帰国している喜多郎と6月20日の諏訪大社・春宮でのコンサートの打合せをし、昼は“Buca Junta”でI氏と会食、4時からはTFMで9月の40周年記念コンサートの打合せをして、夜はすみだトリフォニーホールでブラジルの名門グループ、エポカ・ヂ・オウロのライヴを見る。帰宅後は書き物をしながらテレビのニュース。口蹄疫の拡大には心が痛むが、社民党の福島党首の沖縄訪問はただただ驚くばかり。民主党の情況がどうであれ、閣僚として全く変な話だし、以前からの発言も含めて、この幼稚さはもうコメディの域に入っている。あとは朝日新聞の夕刊に載っていたイタリア人ロベルタ・ノビエッリの<キタノの詩的世界どこへ~カンヌで上映「アウトレイジ」>という記事が深い洞察力があって印象に残った。一昨日の夜も石坂氏たちとその話になったが、いい批評というのは絶対に必要だ。


5月26日(水)リュック・ベッソン監督の最新作「アデル」を観る。大学から2CVを飛ばして試写室に急いだ割には何とも肩すかしな作品だった。ミイラを甦らせ“復活の秘薬”を手に入れるヒロイン、アデルの冒険物語だが、べッソンお前もか!と言いたくなるくらいに子供じみている。ヨーロッパ・コープの作品が快調なだけに、どういうことなんだろう。1日の締めという感じで、コットンクラブで見たビージー・アデールのライヴが正しい大人のエンタテインメントだったので、この落差は本当に大きい。テクノロジーの進歩は本当にいろいろなものを置き忘れていってしまっている。


5月27日(木)世の中の動きよりもゆっくりと静かに過ごした1日だった。「ライナーノーツ」を書くためにアナログ・レコードのチェックをしていると、マジック・カーペットに乗っているような気分になる。夜は“ROCK AROUND THE CLOCK”で6月4日に原宿クエストホールで開催するイベント“歌謡ワンダーランド”のプロモーションも兼ねてゴンザレス鈴木とトークショー。ここでもKIRIN LAGER CLUBの20年を越す歴史の旅を楽しんだ。いい音楽には本当にマジックがある。


5月28日(金)“普天間”というタイトルで演じられる鳩山芝居。余りにも凄すぎて、記者会見のやりとりに至ってはもはや言葉を失う。宮崎の口蹄疫の騒ぎも歯止めがきかない。不謹慎だが、2本立ての映画を見ているような感じだ。それもエンディングのない……


5月29日(土)久しぶりに「朝まで生テレビ」を見た。ここでもテーマは“普天間問題”。“パンドラの函”を開けてしまった―という形容は言い得て妙だが、“ウェークアップ”“action!”と午前中の番組でも特集は“普天間”。あとは“i-pad”のニュースが昨日から続いているが、これでいいの?という気持はますます強くなる。マーティン・スコセッシと仕事をする可能性の中で読み終えた遠藤周作の「沈黙」で描かれている世界観とは対極にある感じがするノー天気な世の中。どんよりとした曇り空が憂鬱な気分とリンクしている。


5月30日(日)お昼のNHKニュースでデニス・ホッパー死去の報。余命いくばくもないと聞いてはいたもののやっぱりショックだ。セルジュ・ゲンズブールも伊丹十三もみんなこの世を去っているし、僕が影響を受けた、また敬愛している年上の人であと残っているのはレナード・コーエンぐらいか…そんな思いで出かけた日比谷野外音楽堂での<JAPAN BLUES&SOUL CARNIVAL 2010~25周年記念スペシャル~>だったが、お目当てのソロモン・バークのステージが本当に素晴しくて憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれた。デニス・ホッパーの死を悼むかのように歌われたサム・クックの名曲「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」や、楽屋で話した時にニコニコ笑いながら「安心しろよ、歌うから…」と言ってくれた「クライ・トゥ・ミー」や「イフ・ユー・ニード・ミー」……イタリア人の美人ヴァイオリニスト2人を含む15人編成のバンドのサウンドはゴージャスだったし、MCまでもう歌のように聞こえてしまうソロモン・バークのステージングは最上級のものだった。190キロの身体を王様が坐るような椅子にのせてオーラを放つ伝説のソウル・スター。「ワンダフル・ワールド」をつなぎにして始まった「エヴリバディ・ニーズ・サムバディ・トゥ・ラヴ」で終わったコンサートは忘れ難い記憶になったが、一緒に出かけた“Amore”の澤口さんの「このままバラけるのはしのびない…」という誘いにのって、恵比寿の“鮨翔”と“BAR ROTA”をはしごして、コンサートの余韻は増幅していった。3時半少し過ぎから飲み始めたから、ビール、赤ワイン、ビール、日本酒、カクテル…と飲みも飲んだり7時間。澤口さんの「もうズブズブやね」という言葉をしめにして、楽しい会合は幕となり、恵比寿をあとにした。“BAR ROTA”で聴いたニーナ・シモンも最高。やっぱり僕は“いい音楽”の力を信じているし、また助けられている。


5月31日(月)昨夜に続いて今夜もよく飲みよく食べた。cobaとゲストのAさんと3人で麻布十番の“ピアット・スズキ”で食前酒に白・赤1本づつと食後酒。前菜も青唐辛子と小蛤のパスタ、メインの鳩のグリルも十分に満足感があったし、4時間近い酒宴はとても楽しくかつ濃いものだった。午後、試写で観たジェフ・ブリッジス主演の「クレイジー・ハート」も予想した通りの素晴しい出来映えだったし、5月最後の日にふさわしい1日だった感じがする。天気も良く、やはり人間には太陽の光が必要だ。政治の動きは余りにひどすぎてもうどうでもいいやという気分になってしまった。

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