立川直樹の内省日記

2010年4月30日(金)

4月27日(火)小沢氏「起訴相当」のニュースがかけめぐる。そんな日にレニングラード・カウボーイズが旧ソ連の軍楽隊と共演して作った「ハッピー・トゥギャザー」を聴いていたのは何ともブラックな偶然だ。各局で映し出されるニュース映像に頭の中で「デライラ」や「天国への階段」が重なり合う。音楽と映像の関係というのは本当におもしろいものだが、Chageの秋に出る新しいシングルのPVでタカハシカオリのフィギュアを使おうというミーティングも、エンディングにはナイン・インチ・ネールズの曲が爆音で流れた塚本晋也の話題作「鉄男 THE BULLET MAN」の夜の試写も音楽と映像のシンクロが楽しめた。そして、きょうは久々に痛風の症状。数日前に神様に感謝なんていったのが仇になったのかも知れないが、早目に対応したのでさほどひどいことにはならなかった。でも、残念ながら禁酒。昼に飲んだ一口のシャンパンが何だか遠い昔のような気がする。



4月28日(水)アンドレア・ボチェッリの武道館のコンサートが素晴しかった。以前オーチャードホールで見た時とは別人のようないいステージ。指揮者もよかったし、特別ゲストの葉加瀬太郎に超絶技巧のフルート奏者などゲスト陣も充実、あっという間に2時間が過ぎた。全くMCがなかったのも音楽に集中できてよかったし、ひどく新鮮だった。武道館に出かける前に松坂屋上野店の美術画廊で見た蜷川有紀絵画展<薔薇まんだら>も魅惑的な作品が並んでいたし、ゴールデンウィークの休みがスタートする前日は打合せも含めてとても気持よく時間が流れていった。武道館の後は“香妃園”で鶏煮込そば。足の腫れがまだひかないのでお酒を我慢するための苦肉の選択だったが、妙にはまった。六本木通り沿いにあった頃はよく行っていたが、新しい場所に移ってからは初めての来店。内装の感じや働いている人たちが40年以上前とほとんど変わっていないのはもはや“六本木の奇跡”といってもいいかも知れない。帰宅後はテレビのニュースを見てから、アナログ盤でビリー・ホリデイ。この選択は間違いなく“香妃園”の流れだ。夕刊に載っていたマルコムⅩ暗殺犯仮釈放の記事も60年代に僕を運んでいった。


4月29日(木)書棚を整理していてふっと目にとまったE.L.O.の3枚組ボックス・セット「フラックバック」を聴き終える。珠玉の名曲群に70年代と80年代の記憶をフラッシュバックさせながら、アレンジ全体やギターのエコーのかけ方なども含めて本当に音楽が愛情を持って丁寧に作られていたことを改めて確認し、一体21世紀になってからの音楽業界ってのは……とつい愚痴りたくなってしまった。休日なので、幻想世界に逃避しようと読み始めたミルチャ・エリアーデの「セランポーレの夜」のBGMに選んだエドガー・フローゼの「イプシロン・イン・マレイシアン・ペール」と、リュウ・ソラの「ブルース・イン・ジ・イースト」も70年代半ばと90年代半ばと、20年近い時間差があるとはいえ、まぎれなく“20世紀の産物”。時代をさかのぼる旅はますます加速していきそうだ。


4月30日(金)連日報道されている沢尻エリカの離婚騒動について、みのもんたが“朝ズバ”でアシスタントの女の子に向かって「何でこんなに大騒ぎするの?」、コメンテーターの人達に向かって「女優として凄い人なんですか?」と白けた調子で言っていたのが痛快。世の中は休みモードに入っていて、ミーティングもなく、連絡事項も数えるほど。かたづけものをした後、しめの感じでAXIS GALLERYの“GELATIN SILVER SESSION”を見に出かける。「0・1のような有限桁の数字列の電気信号に置き換えられたデジタル画像とハロゲン化銀に光を当て化学反応で浮かび上がる画像は別物で、本来比較するものではありません。フィルムでしか表現出来ない事やメリットがあり、その逆もあります。私達写真家は、それぞれの長所を活かし、今後も写真表現の幅を拡げていきたいと次の世代の為にも願っています。」と書かれた<表現の選択肢が狭められる事が無い様に>という声明のもとに開催される合同写真展で、写真は芸術であることを再認識させられるとともに、写真や映像、文章、音楽……ありとあらゆる分野にお手軽な素人芸が氾濫し、またそれがおもしろがられ、通用してしまう風潮に警鐘を鳴らしているようにも思えた。坂本龍一に「そこまできたら、もう“アナログ原人”として生きていって欲しい」と言われた僕はさらにいろいろなことを考えてしまったが、WBCバンタム級王者の長谷川穂積とWBO同級王者のモンティエルの世界王座統一戦の生中継が実にシンプルで、格闘技の中継にはデジタル的要素は必要ないと断言したくなった。試合もテクニシャン同士のいいファイトだったが、残念ながら長谷川のKO負け。4ラウンド終了間近のモンティエルの連打はもう芸術に近かった。究極のアナログだと感動しながら、思わず“Good bye Cruel World…”という言葉が口をついて出た。

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