立川直樹の内省日記

2010年4月15日(木)

4月13日(火)諏訪に2日間、そして日光のEDO WONDERLANDで1日過ごしたことですっかり浮世離れしてしまったが、ポーランド大統領が乗った飛行機が墜落し、井上ひさし氏が死去し、バンコクでは大暴動と、ニュースは百花繚乱だ。丸3日も留守にしていると、新聞の整理だけでも中々大変。スケジュールはうまくコントロールできているのに何故こんなに時間の余裕が東京にいるとなくなるんだろうと愚痴がでてしまうが、夜7時に東京国際フォーラム・Aで幕が開いたジェフ・ベックのコンサートが気分をすっかりクリアにしてくれた。ドラムスにナラダ・マイケル・ウォルデン、ベースにプリンスのバンドで10年仕事をしていた腕ききのロンダ・スミス、キーボードにジェイソン・リベロを配した新しいバンドでステージに登場したジェフ・ベックは余計なことは何も喋らず、2時間近く見事なギター・プレイを披露。そのギターのフレーズと艶は“名人芸”の域に完全に達していたが、新作に収録されていたオペラの名曲「誰も寝てはならぬ」の素晴しさはとても言葉では表現しつくせないものだった。だから、どこに寄る気にもならず、まっすぐ家に戻ってから4時間以上、テレビのニュースを見たり、音楽を聴きながら過ごす。最初はワインで途中からはブランデーと、喜多郎からプレゼントされたダビドフの葉巻。窓の外の桜がとても魅惑的だ。


4月14日(水)素晴しいコンサートだった。夜7時少し過ぎに日本武道館で幕が開いたキャロル・キングとジェイムス・テイラーのジョイント・コンサート。“ジョイント”と言いながら絡むのが2、3曲という看板倒れのものがほとんどの中で、2人は全編出ずっぱり。いい感じで歳を重ねたジェイムスが日本語で「1971年のオリジナル・バンドです」と言って紹介したベースのリーランド・スクラー、ドラムスのラス・カンケル、ギターのダニー・コーチマーを中心としたバンドのバックアップも最高で、文字通りの“いい音楽”を心から楽しんだ。余分な照明も仕掛けも、勿論古臭い芸能界のノリのヘンテコなダンスもなく、限りなくシンプルであるが故にその魅力が際立った2時間半。昨夜のジェフ・ベックに続いて、“本物”は永遠だと改めて実感した。そして、コンサートの前には2週間ぶりの試写で「ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実」。1974年製作のドキュメンタリー映画で、翌年のアカデミー賞で最優秀長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した傑作だが、これも見事な映画で、70年代初頭の記憶や情景がコンサートと映画とクロスし、感性の化学反応が起きていった。コンサートの後は里中氏と連れ立って“Va-tout”で赤ワインと絶品のパテ。帰宅後はテレビのニュースと「シャッター・アイランド」のサントラ盤。映画のエンディングで流れた時も息をのむ素晴しさだったが、ダイナ・ワシントンの「ディス・ビター・アース」は本当に隠れた名曲だ。濃い1日のしめくくりにもぴったりだった。


4月15日(木)中国でまた大きな地震。ヨーロッパではアイスランドの火山の噴火のため、空の便が大混乱…本当に地球はどうかなってしまっている。春だというのに気温は真冬なみだし、起きている事件も含めて世界はSFの悪夢のような感じがする。午後、試写で観たジム・シェリダン監督の「マイ・ブラザー」も実にヘヴィな内容だったし、夜7時半から彩の国さいたま芸術劇場で見たバットシェバ舞踊団の「マックス」も暗示的なパフォーマンスだった。移動の車の中で聴いたのは70年代や80年代のロックのCD。5月に新丸ビルで開催予定のイベントや、CHAGEとタカハシカオリのプロジェクトの打合せなど仕事をするにはしているが、何だか自分の中で位相がずれて、きしんだ音が聞こえる。一体、世界はどんなふうに変化していくのだろう。新しい旅が始まりつつある予感……

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