立川直樹の内省日記

2010年4月1日(木)

3月29日(月)“Va-tout”でのランチミーティングから1週間がスタートする。案件は5月22日に決定した金沢城・三の丸広場での“河北門落成記念コンサート”。時間が余りないので大変だが、こういう時は妙に燃える。そして午後3時半から見た「ウインター・ソルジャー ベトナム帰還兵の告白」にはとんでもないところに連れて行かれた。6月半ば過ぎから東京都写真美術館ホールでロードショー公開される1972年のドキュメンタリー映画だが、1971年1月31日にデトロイトで開催された“ウインター・ソルジャー公聴会”で、自分たちの人間性を取り戻すため、戦場で起きた残虐行為の数々を生々しく語る勇気ある帰還兵たちは僕を60年代末の横須賀へとトリップさせてしまったのである。今、改めて思うと、僕は日本にいながら一般の人よりもずっとベトナム戦争に近いところにいる、というか、戦争の起きていることをリアルに感じる状況の中にいたような気がする。同時公開される「ハーツ・アンド・マインズ」も必見だろう。試写の後は、銀座のガレリア・グラフィカで山本容子さんの新作展「鏡の国」のレセプションに顔を出し、シャンパンを頂いて現実の世界に戻る。作品はどれも魅力的で、彼女は完全にひとつのワールドを作り上げたと言える。その後は上野の東京国立博物館・法隆寺宝物館で開催されたマセラティの“GRANCABRIO”の発表イベントでまたシャンパン。ライトアップされた桜と、人気のない宝物館の中の展示物にまた違うトリップ感を味わい、それは8時過ぎからの渋谷での小宴会へと続いていった。“成ル”と“Li-po”をハシゴして、お酒も話もたっぷりの4時間。深夜の寒さだけが身体にこたえた。


3月30日(火)古いステレオに、もう合う針がないのでレコードプレイヤーだけを買って接続、配線に苦労しながら完成した後、クロスビー・スティルス&ナッシュのデビュー・アルバムをかけて陶然とした気分を味わう。やはりアナログの音は格別だ。夜は久しぶりに“季楽”でシャブリを飲みながら“春”を食べ、満月と重なり合う桜を眺めながら、“PB”へ。フクちゃんがかけてくれたアル・クーパーの「アズ・ザ・イヤー・ゴー・パッシング・バイ」が最高だった。いい春の夜……


3月31日(水)ミーティングを2つ済ませてから、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノ競演の映画「ボーダー」の試写に出かける。2007年製作で、この顔合わせなのに何故こんな時間のロスが出たんだろうとか、時代の流れなのかなあと思って見たが、何だか食い足らない映画で、デ・ニーロが珍しく精彩を欠いていた。2人がNY市警のベテラン刑事という設定も悪くないのに妙に気持が入らないのは、脚本のせいなのか、演出のせいなのか……夜の円山町での“ぽつらぽつら”なる店での酒宴の席ではデニス・ホッパーの話で盛り上がったが、俳優というのは本当に大変な商売だ。そして、国産のワインを大いに見直した“ぽつらぽつら”は中々魅力的な店で、やっぱり個人営業の小体な店はいい。回りにも、そそられる店が並んでいて、円山町探訪をしてみたくなった。円山町の後はPARCOの柴田氏の案内で“油そば”を食べ、“Li-po”に流れる。今夜はポルトガルの発泡性の白ワイン。帰りしなには店中が知り合いで埋まり、昨夜の“PB”がそうであったように、夜遊びをしている人はきちんとしている。ただみんな最低でも30代半ばを超えているのはちょっと残念……


4月1日(木)3日も続けて夜中の1時過ぎまで飲んでいると、さすがに朝10時からの試写は少々辛い。ただリュック・ベッソン原案で、ピエール・モレル監督のヨーロッパ・コープ製作の作品となると、眠気など軽く吹き飛ばしてくれる。「パリより愛をこめて」というタイトルも納得の内容の1時間35分。ジョン・トラボルタの怪優ぶりは絶対に拍手ものだ。でも残念ながらベッソン=モレルのコンビなのに「トランスポーター」や「96時間」ほどの切れ味に欠けていたのはちょっと残念。そして、その微妙な不完全燃焼感は、東京国際フォーラムできょうから始まった“アートフェア東京2010”で大きく広がってしまった。何だか全体的に活気がないし、目をひくのは四谷シモンや北斎などの既に認知されている大家たちの作品。久しぶりに出かけた“酒蔵・三”での楽しい酒宴の後、ワタリウム美術館で行われたイベント“トカゲラウンジの3人の住人たち”を覗き、スパイラルガーデンで明日から始まる“巧術”のレセプションに出かけた時に、やっぱりアートは総花的にやるよりも趣味性が強くうち出されている方が正解なんじゃないかと思った。朝刊には現役最高齢のチンドン屋だという菊乃家〆丸さんの死亡記事。92歳の大往生だが、子供の頃チンドン屋の後を追いかけていた情景がモノクローム画面で甦ってきた。

Page Top▲

  • TOP
  • PROFILE
  • 立川直樹の内省日記
  • TIME WAITS FOR NOR ONE
  • WORKS
  • ARCHIVE
  • ABOUT THIS SITE