立川直樹の内省日記

2010年3月18日(木)

3月15日(月)10時間以上眠って眼がさめる。いつもの倍の睡眠時間だ。午前中に事務所で喜多郎の3D映画プロジェクトの打合せをひとつしただけで、あとは計画通り現実逃避に近い時間を過ごす。音楽と書きもの、それに読書。船戸与一が独自の史観で戌辰戦争を描いた「新・雨月」が現実逃避に拍車をかけてくれた。


3月16日(火)新聞もテレビも鳩山邦夫の自民党離党のニュース一色だが、何だかヴィジョンもないし、周囲の人たちのコメントも含めて何の展開もないような気がする。でも、これが今の日本の政治情況そのものかも知れない。夜はすみだトリフォニーホールで今年85歳になるピアニスト、アルド・チッコリーニが新日本フィルハーモニー交響楽団をバックに弾くベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第3番」を聴いたが、かなり年令層の高い客層も含めてそこは別世界。帰りに東京の夜景とシンクロするパトリシア・カースの歌声も、車が20年以上も前の2CVということもあって浮世離れしていて、様々なことを夢想させてくれた。


3月17日(水)遅ればせながら「アバター」を観た。TOHOシネマズ六本木ヒルズの午後2時30分の回はほぼ満員。一体この人たちは何を職業としているのだろうと思いながら3Dの眼鏡をかけて観たが、正直なところ凡調な大作という印象しか持てなかった。アカデミー賞で作品賞と監督賞を獲れなかったのも仕方がないだろう。そして空中に浮かぶ岩や翼を持った竜などは週刊誌で報じられていた通り、イエスやユーライア・ヒープなどのレコード・ジャケットのデザインを手がけていたロジャー・ディーンの描く世界にそっくり。ストーリー展開もいろいろな映画を混ぜ合わせた感もあるし、これが興収記録を塗り変えたとなると価値基準というものが本当にわからなくなる。朝の8時過ぎからWOWOWでやっていた新藤兼人監督の1970年の映画「裸の十九才」のような作品との途方もない距離感。一応、仕事も打合せを3つと連絡業務はしたが、夜の8時から新宿Pit Innで演じられた梅津和洋と山下洋輔と田中泯のコラボレーション“舞う音、音の舞”でたっぷりと2時間感動させてもらって帳尻があい、その後の飲み会も含めて何とも起伏に富んだ長い1日が終わった。


3月18日(木)劇団☆新感線の30周年記念舞台「薔薇とサムライ~Goemon Rock Over Drive」を赤坂ACTシアターで見る。休憩をはさんで3時間半の舞台だが、そのおもしろさ、完成度は超強力だ。新感線の古田新太と客演の天海祐希以下キャストのなりきりぶりも生バンドの奏でるロックも、振付も映像も何もかもが一体となって、これはもう新感線の独壇場だ。60公演が全て完売というのも納得できる。そして、6時前に赤坂ACTシアターに到着する前は小平にあるガスミュージアムで開かれている開花期の東京を駆け抜けた夭折の画家、井上安治の没後120年記念展と、吉祥寺シアターでは川村毅の作・演出による群集劇「大市民」を見ていたから、きょうは丸1日エンタテインメントの中に身をおいていたことになる。酔狂だと笑われるかも知れないが、携帯電話があるので仕事の方もしっかりできる。でも、新感線の舞台の終了後の初日打上げにお呼ばれされて、しっかりと飲み、その後は古田さんや見事な作詞をした森雪之丞たちと一緒に“ぶんぶん”なる居酒屋に流れて、また飲むとなると、前日の夜が長かったこともあって、身体と精神は確実に分離し始める。ただ新幹線の舞台と、劇団の持つ勢いからもらったパワーは絶対的なもので、2時間近い帰宅からひと仕事できてしまった。飲みながら、オジー・オズボーンから始まったロック話で盛り上がったのも十分に助けになった感じがする。

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