立川直樹の内省日記

2010年3月14日(日)

3月8日(月)朝の9時半から“Va-tout”での約1時間のランチ・ミーティングをはさんで午後の2時半近くまでWOWOWで第82回アカデミー賞受賞式の生中継を見続ける。結果は「ハート・ロッカー」の圧勝だったが、生中継だけに特に女優たちの顔は笑っていても眼はシビア的な表情のやりとりなど見どころがたくさんある。9部門にノミネートされながら、視覚効果賞など3冠に終わった「アバター」のジェームズ・キャメロン監督の、「ハート・ロッカー」が作品賞に輝いた時の表情は最高の見ものだったかも知れない。午後はミーティングを2つこなして、夜は“Amore”で食事。2週間前にも食べたホワイトアスパラガスをリクエストして、あとは魚貝サラダとトリッパを食べ、さらにほたるいかと菜の花のパスタをたっぷりと食べたが、澤口さんに「よく食べたね。作る方もうれしい」とあきれながらほめられた。帰りに“PB”に寄ると、森永クンとバッタリ。少し後に桑原茂一クンもやってきたし、何だか懐しい西麻布の夜にオールマン・ブラザース・バンドの音がぴったりとはまっていた。


3月9日(火)冷たい雨の中、新宿歴史博物館で企画展<林芙美子と落合の文化人たち>、東京オペラシティアートギャラリーで<「エレメント」構造デザイナー、セシル・バルモンドの世界>、ザ・スズナリで小池博史&パパ・タラフマラ新作公演「Nobody,NO BODY」を立て続けに見る。それぞれがそれなりにおもしろく、とりわけ4人の出演者が繰り広げる“爆裂ダンス演劇”「Nobody,NO BODY」は昼間であることを忘れさせてくれたが、一拍おいて7時から渋谷C.C.Lemonホールで見たベリーダンサー、アマーニの<オルジュワン>もまずまずの演し物だった。もしかなうことならもっと小さな舞台でと思いながら、会場をあとにすると、外は雪国。冷たい雪が舞う中をガトー・バルビエリを聞きながら家に戻ったが、“報道ステーション”の“密約”問題のニュースはまるでよくできたドキュメンタリー映画を見るような迫力とおもしろさがあった。そして、きょうショックだったのは、この“内省日記”が1月18日を最後にアップされていなかったという事実。名古屋の三宅クンが共通の友人に「立川さん、元気なのかな…日記が更新されてないから…」ともらしたことがきっかけでわかったのだが、原因はどうも簡単な操作ミスだったらしい。でも、ボタンの操作ミスひとつで核戦争だって起きてしまうのだと思いながら、メイルだけのやりとりで起きてしまう感情的いさかいによく巻き込まれてしまうことも頭に浮かび、改めて技術の進歩って何なのだろうと考えこんでしまった。林芙美子が生きていた時代には想像もつかなかった現実の中で、僕は少しづつ途方に暮れ始めている。


3月10日(水)アスミックエースで「シェルター」と「ソラニン」の試写2本立て。ジュリアン・ムーア主演の「シェルター」はスウェーデン出身の新鋭マンス・マーリンド&ビョルン・ステインが演出したパズルのピースを組み合わせていくような予想のつかないスリラーで中々強力な映画だったが、試写室は驚くほど空いていた。それに対して「ソラニン」は入り切れない人もいる混雑ぶりで、試写にくる人の興味の程度も一般の人と変わらなくなったなと思ったが、「ソラニン」に主演している宮崎あおいの“うまさ”には掛け値なしで舌を巻かされた。映画全体の出来もまずまずだ。その後は東京都写真美術館で<森村泰昌*なにものかへのレクイエム・戦場の頂上の芸術>の特別鑑賞会とレセプションに出かけ、“Rice Terrace”で会食をしてから、ビルボードライブ東京のピンク・マティーニのライヴに出かけるという、何とも盛り沢山な1日。由紀さおりさんもゲストで登場したピンク・マティーニのライヴは予想通り本当にエレガントで魅力的なものだったが、気持がいいとどうしてもお酒が進んでしまう。写真美術館でのベルギービールに始まり、“Rice Terrace”では2人でスプマンテと赤ワイン1本づつ、ビルボードライヴ東京では2人で赤ワイン1本、そして最後は“PB”でジェットソーダというのはやはり飲み過ぎだろう。でも、これ、山本リンダの歌ではないが“どうにもとまらない”。


3月11日(木)朝刊の“本音のコラム”で金原ひとみさんが「何でツイッターやらないんですか?」という言葉には、ただただ「興味も時間も必要もない」としか答えられない――と「インターネット」についてしめくくっていた。中味の文章も大いに共感できた。ほぼ半日近く資料整理に時間を費したが、膨大な切り抜きやパンフレット類はネットとは無縁のところに存在している。夕方、清澄白河にあるSHUGOARTSできょうからスタートした<森村泰昌 なにものかへのレクイエム:外伝>のオープニングパーティーに出かけ、夜は麻布十番のスペイン料理屋“MIYAKAWA”での会食という、ゆったりしたスケジュールだったが、こういう日には音楽がとてもよく聞こえる。しかし、資料や雑誌の整理にはあとどれくらい時間がかかるのだろうか。ただもうやるしかないし、欲張りと笑われるだろうが、1日が48時あればいいのにとも思う。


3月12日(金)東京ミッドタウン・デザインハブ特別展<第9回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2009選抜東京展>から西村画廊の<舟越桂 新作展>まで、本当によく美術館やギャラリーを回った1日だった。“Va-tout”のお定まりの席でランチ・ミーティングとミーティングで3時間、夜は“よしおか”で内藤さんと酒飯した以外は、東京を走り回っていた。とりわけ素晴しかったのが根津美術館の新創記念特別展・第4部の“山水画の名品と禅林の墨蹟”<胸中の山水・魂の書>。RAT HOLE GALLERYのやなぎみわ展「Lullaby」もインパクトのある映像作品が楽しめたし、ポスターハリスギャラリーの甲秀樹展「秘すれば花Ⅱ」もギャルリー美蕾樹とポスターハリス・カンパニーの共同企画らしいデカダンな匂いを放っていた。こんなふうに時間が使えるのはうれしい。そして、食通の内藤さんも心から喜んでいたが、“よしおか”の日本酒の充実ぶりと、酒にあう肴のそろい方はいつもながら申し分ない。しめの岩のりと貝の磯鍋は、酒を飲むための鍋という感じだったが、帰りに内藤さんに案内されていって飲んだ銀座のBAR“カーネル”のマスクメロンのカクテルとオールドマンハッタンも絶品だった。ロマンティシズムが堆積したような店内も浮世離れしていて店心地がよかった。酩酊度100%で帰宅し、11時前には眠りにおちた。


3月13日(土)大学で入試の立ち会いを済ませてから諏訪に向かう。疾走する車の中で聴いたのは、つい数日前に発売になったジミ・ヘンドリックスの未発表作品集「ヴァリーズ・オブ・ネプチューン」とみうらじゅんが選曲した「DYLANがROCK」。両方ともドライヴとぴったりとフィットする。そして、夕方には喜多郎たちと合流し、明朝の棚小場での奉納演奏の打合せをしながら会食。食後、“桃源郷”ではヴァニラ・ファッジの「ユー・キープ・ミー・ハンギン・オン」に始まり、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」、アニマルズの「朝日のあたる家」、ローリング・ストーンズの「タイム・ウェイツ・フォー・ノー・ワン」…ピンク・フロイドの「シャイン・オン・ユー・クレイジー・ダイヤモンド」という流れのロックの名曲のシャワーを浴びる。以前「父から子へと伝える名ロック」を出版した際に開いたパーティーの時にコンピレーションしたCDで、自分の選曲ながらどっしりとしたカッコ良さに理屈抜きで酔った。でも、飲んだのはジェットソーダ2杯だけ。食事の時にたっぷりと大好きな“浮城”を飲んだ酔いもあったが、3時半起きの明日に備えての冷静な判断でもある。これはかなり真面目な幕引きだ。


3月14日(日)予定通り3時半に起床。4時半に“浜の湯”を出発して棚小場に向かう。太鼓に照明、カメラをセットす、空の色を見ながら開始のタイミングを決め、8本並んだ御柱に向かい、喜多郎が奉納演奏をする。気温は零下5度。約7分の演奏だったが、聖なる場所でのスピリチュアルな演奏は思っていた通りのものになり、あとで3Dの映像を見るのが楽しみだ。そして、朝食後には4月11日の木落とし板の前での演奏の打合せ。2時間近くかかったが、これもおもしろくなりそうで、今回の諏訪滞在は実り多いものとなった。帰りのドライヴも至極快調。帰宅後はマニー・パッキャオとジョシュア・クロッティのウェルター級タイトルマッチを見たが、パッキャオは本当に強い。その後は少しかたづけものと書きものをしたが、夕方日本酒を飲み始めたらもう7時前には睡魔に捕まってしまった。

Page Top▲

  • TOP
  • PROFILE
  • 立川直樹の内省日記
  • TIME WAITS FOR NOR ONE
  • WORKS
  • ARCHIVE
  • ABOUT THIS SITE