立川直樹の内省日記

2009年12月27日(日)

12月25日(金)戦中から現代美術を中心に紹介してきた村松画廊が経済や美術市場の冷え込みなどもあって、年末で展示空間を閉じるという。経済だけでなく、政治の情況もひどくよくない。世の中もクリスマスの華やかさはないが、静かに過ごすには悪くないかも知れない。午後観たジェニファー・リンチ監督の「サベイランス」もおよそクリスマスにふさわしいものではなかった。ミーティングも年が終わる前なので、余りテンションが上がらない。でも、かたづけものは順調。CDの整理をしていたら出てきた未開封のボーイ・ミーツ・ガールとゲイリー・ニューマンが妙にノー天気だった80年代に連れていってくれた。

12月26日(土)伊豆・北川温泉の“望水”で恒例の“プラザ会”。80年代の末に立ち上げたキリンプラザ大阪の仕事を一緒にしたコアなメンバーで毎年暮れに集まろうという会合でもう20年近く続いている。気分的には“戦友会”のような感じになるが、ヤノベケンジや犬童一心、束芋…といったアーティストを多く輩出した“キリン・アート・アワード”の話になり、一区切りに何かしようかなという話にもなる。自分が一番年下なので、無邪気にしていられるのもいい。そして今年一度来たことがあったが、“望水”が中々いい。修善寺の新井旅館や菊屋のように歴史を売りにしても、部屋や風呂が美しさを欠き、食事もパッとしないのと較べると、大健闘といってもいいだろう。酒は磯自慢に、きんめのひれ酒。料理も地のものをうまくつかってあり、最後のさざえ釜飯は絶品だった。夜はみんなで“波まくら”という貸切の露天風呂でしめ。「ここまで風呂に入ったのは久しぶり…」と笑いながら、幸福な眠りについた。

12月27日(日)昨日の夕方、旅館の部屋で夕暮れの海を眺めながら、B・トライヴを聴き、浮遊気分を味わったのが何日も前のように感じられる。往き帰りの車の中で80年代後半のCDばかりを聴いていたのも関係しているかも知れない。ポール・ケリー&ザ・メッセンジャーズ、スタンリー・クラーク、テリー・ホール、パット・メセニー・グループetc…もう消息が知れなくなったアーティストもいる。帰宅して新聞を見ると、太宰治の代表作「斜陽」の舞台になった小田原の“雄山荘”が全焼したという記事。娘で作家の太田治子さんの「さびしく、何かが終わった気持だ。…」というコメントがとても痛い。あとは人口25万人のテキサス州ラレド市で市内唯一の書店が閉店し、そうするとアメリカ最大の“本屋のない街”になるという記事。SF小説を読んだような気分で、いよいよかという感じがしたが、本屋には絶対にネットなどにはない偶然の出会いがある。“週刊朝日”の最新号に中学高校時代の同級生でもある亀和田武が最高のエピソードを紹介していた文豪・谷崎潤一郎はこんな時代をどう思うだろうか。77際になった谷崎が若い頃に気に入った女形を座敷に呼び、舞台で見た通りの女装をさせ、一緒に寝てみた、という話には本当に脱帽。ニーナ・シモンの歌を聴いていたら、10代の頃の思い出がいくつもフラッシュバックしてきた。

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