立川直樹の内省日記

2009年12月24日(木)

12月19日(土)朝一番で久しぶりに関歯科の椅子に座る。定期的に歯石をとりに通っていたのに1年ぐらいさぼっていたので、椅子に固定されると、何だか奇妙な拘束感が全身を包み込んだ。古今東西、歯科が舞台になった小説や映画は何本かあったが、確かに幻想が拡がる。そして午後は金沢での打合せのため、羽田から小松に向かったが、到着すると雪景色で、朝とはまた違うトリップ感を味わう。改修中の金沢歌劇座についた頃は強いあられも降り、足元もおぼつかなく、東京から1時間の移動でパニック映画の中に迷い込んでしまったような気分にすらなる。でも打合せは快調。そのノリで夜は“むら井”で小宴会。鰊といかのへしこというのは初めて口にする珍味で、手取川との相性も抜群だったし、頼んでおいた香箱ガニもずわいガニも期待通りのおいしさで、甲羅酒も最高だった。他に口にしたのはカニ汁にじねんじょ、〆さば、寒鰤のポン酢仕立て、のど黒に鰤のカマの塩焼きetc・・・本当に冬の金沢は喰いしん坊にはたまらない。“むら井”の後に行った“照葉”の赤ワインとチーズ、“夜間飛行”のフローズン・ストロベリー・ダイキリも申し分なし。ホテルの部屋に入ったら、なんだが急に酔いが回り、倒れ込むように眠ってしまった。

12月20日(日)眼が醒めると、雪が激しく舞っていた。眼下にひろがる雪景色を見ながら朝食をとっていると、とても遠い所に来てしまった感じがした。雪の高速道路を80Kmから100Kmのスピードで空港に向けて走るタクシーも、慣れない僕には実にスリリング。空港には予定通り到着したが、滑走路の除雪作業のため、1時間以上飛行機の出発が遅れるという事態が発生する。乗ろうと思った飛行機は先月も大きく遅れたJAL1272便。またしてもという感じだが、奇妙な因縁としてあきらめるしかない。何とか昼過ぎには帰宅できたが、疲労感と損した感じがする。予定がなかったからいいが、その後はずっとかたづけものをし、8時からはWOWOWで「アイアンマン」を観る。日曜日らしいといえば、日曜日だなと思うと、自嘲的な気分になった。

12月21日(月)午前中は年内最後の大学の授業。気分は何だか一段落する。午後は“御柱祭meets喜多郎”とKIRIN LAGER CLUB presents BELLOWS LOVERS NIGHTの打合せ。3Dで御柱祭を撮影するというアイデアはかなりワクワクする。夕方からはSPIRAL GARDENで開催中の、オランダを拠点に活動を展開するデザインスタジオThonik(トーニック)の初個展を見てから写真美術館で「日本の新進作家展Vol.8出発―6人のアーティストによる旅」と「映像をめぐる冒険Vol.2 躍動するイメージ。石田尚志とアブストラクト・アニメーションの源流」展の特別鑑賞会に出かける。明快なグラフィックとヴィヴィッドな色彩が魅力のThonikの仕事は素晴しく魅力的で、15日から29日までの2週間という会期はちょっと短い感じがする。写真美術館の後は恵比寿の“福皆来”なる店で“東京カレンダー”の安武さんと星野さんと小宴会。磯自慢から始まったお酒もタコと見事なアスパラガスから始まった料理も申し分なかったが、アン肝とカラスミ、白子の3点盛りは痛風持ちにはうれしさと辛さが混じった一品だった。そして、“PB”に寄って帰宅すると、ブリタニー・マーフィーの死亡記事にびっくり。今年公開された「ラーメンガール」のキュートな笑顔が印象に残っていたので、本当に人の一生なんてわからないと思った。享年32歳。若過ぎる死だ。あとはボウリング場が1000ヶ所を割った、という記事。少子化やグループ遊びを敬遠する若者などが苦戦の理由だそうだが、星野さんと恵比寿の街を歩きながら口にした“コンビニの無慈悲な螢光灯の明るさ”という言葉もふと頭の中に甦ってきた。便利さと画一化が世の中をどんどんつまらなくしている。

12月22日(火)師走らしい忙しいスケジュールの中で試写2本。辻仁成の原作を韓国人監督が映画化した「サヨナライツカ」とテリー・ギリアム監督の最新作「Dr.パルナサスの鏡」。2時間14分と2時間4分の映画だったが、2本とも程度の差こそあれ、時空の超え方が映画ならではの表現でうまく出来ていたので十分に楽しめた。とりわけ「Dr.パルナサスの鏡」は映像表現も含めて期待を遥かに上回るブッ飛び方。そのテンションはそのまま7時に“ROCK AROUND THE CLOCK/MODERN TIMES ROCK'N'ROLL”っでスタートしたフクちゃんのDJパーティにつながっていって、ロックの名曲群がダイナモの役割を果たしてくれた。新丸ビルの後は、久々に青山の“howl”へ。デニーの作る絶品のジントニックとフローズン・オーガズムでさらにハイになる。帰宅後、TVで見た「カラーでよみがえる第二次世界大戦」の映像が作りもののように見えたのは、単にモノクロ映画に色がついたからというだけのことではなかったかも知れない。

12月23日(水)かたづけものというのは遺跡の発掘作業にどこか似ている。そしてふと目にとまったものが激しく郷愁をかきたてたりするので、中々計画通りには進まない。でも、それもまた楽しさかも知れない。シャモやフルーツパプリカとビールのランチをはさんで約5時間近くの作業はそれなりの成果が上がり、いくつかのアイデアもひらめいたりしたが、夕方5時半から東京国際フォーラムCで見たTAOのライヴは、頭の中でまだ方向がはっきりと定まっていなかった春のイベントに明確なアイデアを与えてくれた。“祝祭の演出”。何かまた新しい関わりが出き、何かが生まれそうな予感がうれしい。帰宅後の白ワインもとてもおいしかった。ベッドに入る前、足の指にややムズムズ感が漂ってきたのは自業自得か…。

12月24日(木)免許更新のため府中試験場に行く。違反があったので2時間の講習。相変わらずのビデオとパターン化した講習。そこは完全に異次元の世界だ。午後はミーティング2件。スケジュールはタイトではないが、やることはたくさんある。そして、夕方6時30分からの「パラノーマル・アクティビティ」の試写を観るため出かけると、日比谷線が小伝馬町でのトラブルのため全面運休。これは伝説の“越常”ムービーの呪いか、と苦笑いしながら帰宅する。クリスマス・イヴは家でおとなしくいているという神のいましめか…

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