立川直樹の内省日記

2009年12月18日(金)

12月12日(土)前日とはうってかわった気持の良い日。温度は8度も高い。ロッド・スチュワートの歌を聴きながら池袋に向かう時は完全に休日気分になれた。そして2時30分にあうるすぽっとで幕が開いた小池博史&パパ・タラフマラ新作公演「パンク・ドンキホーテ」は見事なまでは摩訶不思議なパフォーマンス。本当に小池さんというのは“おもしろいもの”を作る人だが、その後、渋滞の首都高速を苛々しながら走りたどり着いたすみだトリフォニーホールでは不思議な空間から今度は美しい夢の空間で心を遊ばせることができた。既に開演中のコンサートの扉を開けて客席に入った途端に始まったハープのカトリオーナとフィドルのクリスからなるデュオが奏でた美しい織物のような音楽。2番目のアヌーナは、CDやDVDで聴いたり見たりしていたより、ライヴの方がオーバーではなく10倍は素晴しく、「中世のアイルランド音楽を現代に蘇らせる」というコンセプトのもとに結成された混声合唱団の魅力に僕は完全にKOされた。だから、逆にトリのアルタンの観客を巻き込んだノリのいいパフォーマンスにはひとつノリきれず、アヌーナの余韻を反芻しながら会場を後にした。プランクトンの井内さんが「大音量で聴かないと…」と言っていたが、近々アヌーナを大音量で聴いてみることにしよう。時間と場所を選びながら…

12月14日(月)ロッド・スチュワートの歌は日中に聴く方がいい。そして部屋でより走る車の中での方がずっと魅力的に感じられる。大学へ向かう車の中で、音楽は本当にTPOが大事だなと改めて思ったが、午後仕込みをして、夜は前祝も兼ねてレセプションパーティーが行われた“ROCK AROUND THE CLOCK/MODERN TIMES ROCK'N'ROLL”の空間で流れるロックの名曲にひたりながら、その思いをいっそう強くした日だった。パーティーが始まる前のプレス取材で布袋クンが口にしていた「頑丈に出来ている」ロックの名曲が放つ、形容し難いバイブレーション。布袋寅泰の新作「MODERN TIMES ROCK'N'ROLL」に合わせて思いついたBARイベントだが、アルバムの共同プロデューサーでプログラミングも担当した福富幸宏クンや鮎貝健チャンなども顔を出してくれたパーティーはとても楽しかった。布袋クンとのロック談義も盛り上がったこともあって、シャンパンの量もややオーバー気味。とてもどこかに流れる気力もなく、意外なほど早い帰宅になった。

12月15日(火)午前中は原稿書き。午後は2時半からセルリアンタワー東急ホテルに日本陸連主催のイベント“アスレティック・アワード2009”につめる。パーティーの演し物に林正子と弦楽四重奏を仕込んだので、その立ち会いだが、いい意味で緊張感もなく、順番にリハーサルをすませ、本番だけを待つという情況だったので、こんなことは1年に1度あるかないかというくらいのまったりとした時間を過ごす。何だか別世界にいる感じにもなった。そして夜は原宿の“ル・プレヴェール”なる店でBETTER DAYSの忘年会。これまたゆるやかに時間が流れていったが、店内の黒板に書かれたメニューがとても気になったのは喰いしん坊の面目躍如といったところか…ウズラのジビエ仕立てに、仔猪のリエット…etc…実にそそると、三島クンと意気投合したが、帰りにはイルミネーションきらめく通りの向かいのビルの地下にある“Chardonnay”なるシガー・バーに案内され、またまたまったりとした時を過ごす。モヒートにシガー、それにフローズン・オーガズム……たまにはこんな日もあるのだと納得しながら帰宅したが、TV画面に映し出されるニュースは別世界の出来事のように感じられた。

12月16日(水)昼前に大学を出て、ストゥージスやMC5を大音量で聴きながら中央高速をひた走り諏訪へ向かう。大学に行く前は締切の原稿書きや何やらでバタバタだったので、快調なドライブが気分をリフレッシュさせてくれる。ノリとしては、ミッションのないフランク・マーティン。2時間少しで諏訪に到着し、打合せをすませた後、夕食まで思いがけなくゆったりとした時間を過ごす。神様からのプレゼントという感じだ。夕食は諏訪モニターツアーをお願いした鈴木さんや福田さんたち、地元のスタッフも加わって大人数のとても楽しい時間。食後は、正月前の点検で休館している浜の湯を特別に開けてもらって“桃源郷”で御一行に5.1chのピンク・フロイドを体験してもらう。ピンク・フロイドの「狂気」の前にはジェームズ・ブラウンとジェファーソン・エアプレイン。久々の“桃源郷”だったが、本当にここは日本で最高のロック・ラウンジだ。頭が気持良くクラクラする中で、またいろいろなアイデアが湧き上がってきた。

12月17日(木)朝一番で諏訪大社の村上宮司と来年の御柱祭とコラボレーションする喜多郎のイベントの打合せをすませ、諏訪大社上社前宮の下見をした後、東京に戻る。中央高速道路の上りはかなり長い間、富士山を正面に見て走っていく感じなのでとても気持がいい。2時間と少しで事務所に到着し、3時半からは松竹で「シャネル&ストラヴィンスキー」の試写。ココ・シャネル役のアナ・ムグラリスが姿形だけでなく、低目のトーンの声も含めてとても魅力的で、おおざっぱな話と展開なのだが、服や調度品も見応えがあり、個人的にはかなり楽しめた。30年代のパリ、好きな時代の空気に浸って酔うことができた。夜はイメージフォーラムで「倫敦から来た男」のトークショー。写真家の若木信吾さんとの対話形式だったが、15分という時間ではとても足りないくらいにおもしろかった。そして10時からはパリから帰国中の三宅純さんを囲んで渋谷の“Li:po”で軽い飲み会。来年6月のピナ・バウシュの舞踊団の来日公演に合わせて、何かイベントをやろうという話で盛り上がる。ここ2日間ほどのゆったりとした時の流れとは対極にあるような忙しく、かつ濃密な1日だった。でも、疲れは全くない。帰宅して新聞をチェックしたら、マイルス・デイヴィスの名盤「カインド・オブ・ブルー」が録音から50周年を迎えたのを記念し、米下院がその功績をたたえる決議を全会一致で可決したという記事があって、これもまた軽くテンションを上げてくれた。来年3月にストゥージスがジェネシスやジミー・クリフ、ホリーズ、それにABBAとともに“ロックの殿堂”入りという記事も、一昨日諏訪に向かう時にストゥージスを大音量で聴いていたことを考えると、自分の中で何かが呼びあっている感じでおもしろい。

12月18日(金)今年最後の“TOKYO ART RUNNING”。東京都現代美術館でレベッカ・ホルンの映像作品に午前中たっぷり2時間浸った後(ドナルド・サザーランドとのユニークな対話がフィーチャーされた「過去をつきぬけて」は見ものだった)、日本橋の“玉い”で穴子を食べて力をつけ、日本橋高島屋の8階ギャラリーの“日本の色・万華の彩り~染織家・吉岡幸雄の仕事”展から東京タワーできょうから20日まで開催されるイベント“美しの里”のオープニングまで合計10ヶ所を回るスケジュールをこなす。オリジナルの額に入った1000枚の絵が壁を埋めつくしていた京橋ASK?のしりあがり寿展『ワシはもう寝る。』、松屋銀座8階大催場の“キューピー展”、資生堂ギャラリーのツァオ・フェイ“Live in RMB City”、新宿歴史博物館の林忠彦・写真展“新宿・時代の貌―カストリ時代・文士の時代―”、東京オペラシティアートギャラリーのヴェルナー・パントン展、原宿のPATER'Sの宇野亜喜良展”AQUIRAX WORKS'09+”、GALLERY・MAの隈研吾展“Studies in Organic”というラインナップ。明日で終わってしまう展覧会などもあり、こんな強行軍になってしまったが、林忠彦展は絶対に行ってよかったと思えたし、キューピー誕生100年を記念して開催された“キューピー展”は思わぬ拾いものだった。その逆に中国の若手女性アーティスト、ツァオ・フェイ展はちょっと期待外れ、バーバレラ的SF空間に迷い込んだような感じのパントン展や、宇野亜喜良展は時間があれば、もっとゆっくりと空間に浸り、ディテールを細かく見たい展覧会だった。移動中のBGMはニーナ・シモンが一等賞。東京タワーからYASUDA ART LINKに向かう車の中で流れる彼女の歌とシンクロする夕暮れの景色は、そのまま切り取って展示したくなるくらいに魅力的だった・そして“TOKYOチャンス・ミーティングVol.2”が開催されたYASUDA ART LINKでは改めてタカハシカオリの作品のおもしろさを確認。何かおもしろいことが始まる予感がする。パーティー終了後は“Va-tout”で三島夫妻と軽い打上げ。定番の田舎風パテと赤ワインとシガーが1日の疲れを少しだけ癒してくれた。

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