立川直樹の内省日記

2009年11月27日(金 )

11月21日(土)池澤夏樹の最新刊「カデナ」が素晴しくおもしろい。ちょっと不謹慎かも知れないが、TVのニュースで普天間基地の移設問題で沖縄がクローズアップされているのでタイミングのいい読み出しだった。登場人物の設定と、時代と人間が絡み合いながら進んでいくドラマ。沖縄にはよく行っていたので、街の景色も浮かんでくる。小説の魅力とはこういうものなのだと実感しながら、快調に読み進んでいった。これも偶然だったが、CDを整理していて出てきたビーチ・ボーイズのアンソロジー「ホーソーン、カリフォルニア―伝説が生まれた場所(レア・トラックス)」もBGMとしてぴったりとはまった。夜はBS日テレで放映された「レイジング・インフェルノ」が思わぬ拾いもの。2008年のカナダ映画で、森林降下消防隊が山火事と戦う物語だったが、人間関係もうまく描かれていて最後まで楽しめた。こういうタイプの映画は本当に日本では劇場公開されなくなった。時代は変わっているんだろうなと思って、10時からの“ニュースキャスター”にチャンネルを合わせたが、今夜もたけしさん大爆発。今や土曜の夜の楽しみになり始めている。

11月22日(日)朝6時からの“時事放談”。渡部恒三とジェラルド・カーティスが“普天間”問題を語っていたが、カーティスの理路整然とした意見・分析と、情緒的な渡部の差異にちょっとあきれてしまう。日曜の朝はその後には、“報道2001”“サンデーモーニング”と続けて見るのがやや習慣化しているが、いつも思うのは司会の進行とコメンテーターなる人達のコメントで同じ話でも随分と違ってしまうということ。だから、ある程度見ていると堂々巡りをしているように感じてしまう。まあ、これがTVなんだろうと思いながら、「カデナ」に戻り、読書の楽しみに浸る。ベトナム戦争末期を基地の中と外で懸命に生きた人々の物語。最後はアレサ・フランクリンの歌をBGMに読み終え、はさんでおいた池澤夏樹の取材記事を読む。東京と朝日、2つの新聞記事でとても興味深い話をしているが、「形の定まらない考えを作品にするのに、ずいぶん時間がかかったなと思う。でも、文学とはそういうものです」という言葉がとても印象に残ったし、この本の魅力を言い当てている。

11月23日(月)天気が回復する。太陽の光はいい。改めてそれを思う。午後、お台場オトナPARKのイベント会場で“御柱祭”のブースの下見をして、少し打合せをした後、夕方は布袋寅泰のライヴを見るために品川のステラボールに向かう。beat crazy主催のファンクラブ向けスペシャル・イベントで布袋クンはドラムスの中村達也とベースのトキエと3人だけでステージに立ったが、その素晴しさ、強力さには思わず唸らされた。照明も何の仕掛けもなく、3ピース・バンドで展開されたソリッドなライヴ。ギタリストとしての凄さは間違いなく世界でも10本の指に入るだろうし、新作“MODERN TIMES ROCK'N'ROLL”からいち早く披露された「ハートブレイク・ホテル」の格好良さは、ロック・アーティストとして彼がトップクラスのレベルに達していることを示していた。これでしっかりテンションが上がり、帰宅して7時のニュースをつけると、日航の企業年金問題のニュース。およそテンションの下がる話だが、この日航問題って今の日本の状態そのものであるような気もする。だから、なおのこと、1枚のCDにリアリティが感じられるのかも知れない。

11月24日(火)朝刊に千原しのぶの死亡記事。記事中に「お姫様女優と呼ばれた」とあるが子供の頃、いつも観ていた東映の時代劇映画で本当にきれいな人だったという記憶がしっかり残っている。だから78歳という年令がちょっと意外。もっとずっと歳が上だったと思っていたのである。人間の記憶とか印象なんてけっこういい加減なものなんだと思いながら、六本木の“篁(たかむら)”が60年の歴史に幕を下ろすという閉店案内の封書を見て、また歴史がひとつ終わるのを感じた。そして、朝食後は事務所でピーター・ガブリエルのライブを聞きながら大々的なかたづけもの。20年近い時の流れと闘いながら、まるでアンコールワットの遺跡を発掘しているような気分になる。でも、風が通っていく感じで気持がいい。午後はTAKE NINAGAWAの“大竹伸朗・貼貼貼貼”からスタートして、久々のTOKYO ART RUNNING。JCII PHOTO SALONの細江英公&マリオ・ディアス作品展「キューバと日本」、東京国立博物館・平成館の「皇室の名宝―日本美の華」の2期「正倉院宝物と書・絵巻の名品」・SCAIのチョン・ジュンホ展、江戸東京博物館の「いけばな~歴史を彩る日本の美」特別鑑賞会、NANZUKA UNDERGROUNDの「壷中天」…田名綱敬一と6つの展覧会を見て回る。どれも出かけただけの収穫があったが、特にびっくりさせられたのが“時代へのシャープな眼差しと辛辣なユーモアで注目を集める韓国の若手アーティスト、チョン・ジュンホの4つの作品。立体作品も映像作品も形容し難い魅力を持っていたが、その余韻が室町時代の花伝書や代表的な立花図を並べた屏風や江戸の浮世絵につながっていったのもおもしろかった。夜は綱町三井倶楽部で中学・高校時代の同級生で講談社の生活文化局長にまでなった丸木明博クンの定年“講談社卒業”を祝うパーティーに出席。清水寺貫主の森清範さんをはじめ、旧知の間柄の人もたくさんそろった楽しい会だった。森貫主の挨拶の中の“社会的お葬式”という表現はさすがの名言。その後“月光庵”の二次会にもつきあい、さらに“PB”にまで流れて、店を出たのは2時。久しぶりに丸7時間も飲んでいたことになる。痛風の方はありがたいことにじっとしてくれている。

11月25日(水)久しぶりに2CVに乗って大学に向かう。甲州街道に舞う落葉がとてもロマンティック。北参道のいちょうも素晴しくいい色になっている。午後は全世界で1500万部を売り上げ社会現象となったミステリー小説を映画化した「ミレニアム」の試写。153分いう長尺だが文句なしに楽しめた。製作したのはスウェーデン。タランティーノがブラッド・ピット主演でハリウッド・リメイクを熱望しているとのことだが、この知的さとダークさはまず小説が生まれた国でもあったスウェーデンでまず映画化というのは正解だったと思う。夜は神楽坂の“空”で旧知の友人たちと小宴会。ロックから食べ物の話まで大いに盛り上がり、前夜に続いて“PB”に流れることになった。ブルース・プロジェクトあたりから始まって、“PB”に入った時に流れていたのはマーヴィン・ゲイ。音楽が音楽として愛され、またきちんと仕事になっていた時代をともに生きた思い出が次から次へとフラッシュバックしてきて、時のたつのも忘れ、また遅い帰宅になった。明日は部屋のかたづけができるだろうか。

Page Top▲

  • TOP
  • PROFILE
  • 立川直樹の内省日記
  • TIME WAITS FOR NOR ONE
  • WORKS
  • ARCHIVE
  • ABOUT THIS SITE