立川直樹の内省日記

2011年3月5日(土)

2月24日(木)久々にライナーノーツを書いたビーディ・アイのデビューアルバム※105「ディファレント・ギア、スティル・スピーディング」の本盤が届いたので、5曲入りのDVDを見る。歌うポーズまでジョン・レノンとシンクロするリアム・ギャラガー。リスペクトの気持が本当にストレートに現われている。音楽も強力だが、映像からもビートルズは勿論ザ・フーやキンクスなど60年代のイギリスのロック・バンドに対する愛情と憧れが伝わってくる。「音楽が好きだからやってるんだ」というストレートなコメントもいい。体調も昨夜でまずまず回復したが、さらにビーディ・アイに元気をもらえた。そして1時から谷村新司さんのリハーサルもあるので昼過ぎには世田谷パブリックシアター入り。いよいよ“HIBARI 7DAYS”も5日目を迎えたが、谷村さんや日野皓正さんのリハーサルの間には諏訪優さんの名著「ビート・ジェネレーション」を読んで、自分のルーツを再確認できる余裕も出てきた。こういう不自由の中の自由というのもたまには悪くない。小椋桂さんの心暖まるトークと歌で幕が開いた夜の公演もK氏がふと口にした「新日本プロレスのワールドリーグ戦」的な充実した濃い内容。原信夫さんの昔話も素敵だったが、人間が人間同士でつきあってものが生まれ作られていた“昭和”の時代を僕は今とても愛おしく感じている。

※105 イギリスの国民的ロック・バンドだったオアシスのフロントマン、リアム・ギャラガーが結成した新バンドのロック・スピリットあふれるアルバム。CDの方はボーナストラックを含めて15曲収録。5月には早くも来日公演が実現する。(ソニーミュージック・ジャパン)


2月25日(金)“現代アートシーンの最前線を疾走する15のトップギャラリーが、特別なギャラリーショウを展開する”というふれこみで森アーツセンターギャラリーで開催されている“G-tokyo”を見に行く。それなりの作品はそろってはいたが、何かぐっとくるものがなかった。逆に午後、根津美術館で見た※106「ひなかざり」に心ひかれたのはアートに対する興味・関心の変化だろうか。“G-tokyo”で一番魅力を感じたのは細江英公が撮った三島由紀夫の写真だったが、明治45年、1912年に明治天皇・昭憲皇太后より竹田家に嫁いだ皇女昌子内親王が拝領した約90件におよぶ雛道具の数々は三島の名作「春の雪」の世界に僕を連れていってくれた。“雛まつりの茶”の展示と“酒呑童子物語絵巻”も魅力的だった。そして夜は東京文化会館・大ホールでペーター・コンヴィチュニー演出のオペラ「サロメ」を見る。演出もシュテファン・ゾルテスの指揮も申し分なく、サロメ役の林正子も素晴しかった。終演後は浅田氏や安珠たちと“ピーヴィー”で酒宴。途中から林正子も合流して金曜の夜は大いに盛り上がった。打合せは2件。半分は休日のような1日だった。

※106 4月6日まで『「古鏡」と「ひなかざり」-村上英二氏寄贈銅鏡・竹田恆正氏寄贈雛道具』として、初公開されている新収蔵コレクション展。卓抜した技術と豊富な意匠を誇る古の鏡の世界と、気品漂う内裏雛や精緻な雛道具は一見の価値がある。


2月26日(土)カエターノ・ヴェローゾの歌を聴きながら開高健の短篇「黄昏の力」読む。フェリーニに捧げたリミニでのライヴ録音。CDは90年代、短篇は70年代の作品だが、その魅力は全く色褪せていない。かけがえのない至福の時間。でも、資料用にと送ってもらった若松孝二監督の映画「実録・連合赤軍」に何とも暗い気分にさせられる。その影響力の大きさ……何だか変てこな日になってしまった。


2月27日(日)“HIBARI 7DAYS”最終日。TOKUと山中千尋のデュオで「バラ色の人生」と「スターダスト」が歌い演奏された幕明けにcobaの「川の流れのように」も魅力たっぷりで、初日同様、由紀さおりさんの「哀愁波止場」は絶品だった。休憩をはさんで3時間余りのライヴ。美空ひばりを題称にしたパフォーマンスのアイデアは次から次へと浮かんできたが、半月ぐらいはクールダウンしたい気分だ。終了後はK氏と渋谷の“吉成”で軽い酒宴。久保田の生原酒とかきの竜田揚や炙りしめさば、アボガドと紀州梅の和え物などの相性が抜群だった。明日で2月は終わり。3月もスケジュールが埋まっていて、ひどく忙しい1ヶ月になりそうだ。


2月28日(月)朝から冷たい雨。昨日とは10度以上も温度差がある。午前中は大学で入試の面接。午後は3時30分から試写状を見て気になっていた※107「四つのいのち」の試写と、夕方に事務所でひとつ打合せ。夜は“DAINIS TABLE”でMと“HIBARI 7DAYS”のお疲れ会のノリで食事。料理もおいしく、気分も良かったので2人でペロッとワインを2本あけてしまった。帰宅してからのニュースはニュージランド地震の続報とリビア情勢が中心。アカデミー賞の結果は思っていた通り「英国王のスピーチ」が作品賞、監督賞、主演男優賞(コリン・ファース)、脚本賞の4冠を獲得、主演女優賞は「ブラック・スワン」のナタリー・ポートマン、助演男優賞は「ザ・ファイター」のクリスチャン・ベールともし賭けでもしていたら全く外れなしの勝利だった。

※107 一切のセリフを廃し、美しい映像で綴られていく、自然界の4つの生命を通して語られる魂の物語。監督のミケランジェロ・フランマルティーノはこれが長編2作目ということだが、ドキュメンタリーとフィクションの垣根を越えた独特の作風が力量を感じさせる。カンヌ国際映画祭・監督週間で上映されるや絶賛され、回を追うごとに会場に観客が殺到したというのも納得の作品だ。GWに公開。(ザジフィルムズ)


3月1日(火)“Va-tout”でランチ・ミーティング。今日のメニューはターキーのステーキとマッシュルームのポタージュ。本当にここのランチはリーズナブルでおいしい。夏の“地球ライヴ”はまだどうなるかわからないが、またゲームが始まる。午後はTokyo FMでやはりイベント関係のミーティング。その後は1本※108「ビー・デビル」という韓国映画の試写を見て、渋谷のプレジャープレジャーに向かい、斉藤ノヴさんとミーティング。来週に迫った“KIRIN LAGER CLUB”の200回記念ライヴの話がメインだが、他にもいくつか案件があり、今年はコンサート・イベントの仕事にかなり時間がとられそうな感じがする。プレジャープレジャーのMt.RAINIER HALLでは7時過ぎから<夏木マリVS土屋アンナLIVE~春になったら~>を見たが、アンコールに2人で演ったピンク・レディの「UFO」のロックのりのカバーも含めて、実に楽しいライヴだった。帰宅後、夕刊を開くと、フランスの女優アニー・ジラルドの訃報。テレビのニュースの終わりにはプロ野球の戦後初の外国人選手として、巨人と中日でプレーし、中日では監督も務めた与那嶺要さん死去の報。また2人、好きだった人がこの世を去った。

※108 人口9人の孤島で繰り広げられる戦慄の物語。カンヌ映画祭が注目した新人チャン・チョルスは初監督作品で世界に衝撃を与えた。3月26日公開。(キングレコード)


3月2日(水)午前中は事務所で“LIVE SONGS KOBE”のミーティング。午後はザ・プリンスパークタワー東京で開催された“渡辺晋賞”の受賞式と記念パーティに出席し、夕方は6時からソフィア・コッポラ監督の最新作※109「SOMEWHERE」の試写を見てから、“ゲンズブール・ナイト2011”でサエキけんぞうクンとトークをするため、渋谷の“SECO"ラウンジに向かった。何だか淡々と時間が過ぎていった1日。スティーヴン・ドーフ演じる映画スター、ジョニー・マルコがフェラーリを捨て、歩き始めたラスト・シーンが最高に印象的だった「SOMEWHERE」の静か、かつ切なさがワインの酔いに軽くふらつきながら帰宅した後、フラッシュバックしてきたのは妙に暗示的な感じ……

※109 第67回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞受賞も納得の秀作。すさんだセレブ生活を送る俳優の父と、ティーンエイジャーになる一歩手前の娘が過ごす、かけがえのない日々を描いたハートフルなヒューマンドラマだが、撮影も音楽の使い方も含めてエレガントな仕上がりがソフィア・コッポラらしい。4月2日公開。(東北新社)


3月3日(木)午前中に2つのミーティング。午後は3時半からコーエン兄弟の新作※110「トゥルー・グリット」の試写。期待して出かけたが、やっぱり僕はウエスタンものが苦手なようだ。そして夜は“Va-tout”で久本雅美さんとカメラマンの鯨井さんたちと、本の企画の話をしながらの会食。パンクでポップな本が出来そうな予感で大いに話が盛り上がり、気がついたら3時間を過ぎていた。今夜もワインの量多し。

※110 ジョン・ウェインにオスカーをもたらした「勇気ある追跡」のオリジナル脚本をコーエン兄弟が美しい映像とドラマティックな演出で映画化。ジェフ・ブリッジス、マット・デイモン、ジョシュ・ブローリンと芸達者がそろい、14歳にして存在感たっぷりの新人女優ヘイリー・スタインフェルドも強力だ。3月18日公開。(パラマウントピクチャーズ)


3月4日(金)昼は“Va-tout”でランチミーティング。豚バラ肉とキャベツの煮込みを食べたが、味は抜群、本当に“My食堂”として重宝している。午後は事務所で“KIRIN LAGER CLUB”の取材を受けた後、ミーティングをひとつ。夕方過ぎにはトーキョーワンダーサイト渋谷で明日から始まる<ワンダーシード2011>の内覧会を覗いてから、ポスターハリスギャラリーの<湾曲した記憶~ねこぢるy個展>のオープニング・パーティに顔を出して、ワインを飲みながら三島クンや恒松正敏さんたちと懇談したが、花粉症のせいか、どうも身体も気持もピシッとしない。ポスターハリスギャラリーの後は、西麻布の“kitchen5”で石田えりさんと佐藤さんと映画の企画をしながら酒飯し、“PB”に流れたが、妙な疲労感が全身をすっぽりと包み込んでいる。春は遠い……


3月5日(土)くしゃみ、鼻水、眼は腫れぼったい感じがするし、花粉症に完全にやられている。1週間ほど前に、“春一番”が吹いた日に今年は発症したが、2ヶ月ほど前から血圧を下げる薬も飲んでいるので、自分の身体がうまく機能していない感じがする。思考能力も闘争心も明らかに減退。Tボーン・バーネットをプロデューサーに迎えたグレッグ・オールマンの14年ぶりのソロ・ブルース・アルバム※111「ロウ・カントリーブルース」を聞いていたら、花粉症のない沖縄に逃避したくなった。

※111 サザン・ロックを代表するスター健在。ドクター・ジョンやドイル・ブラムホール2世達のバックアップも的確な名アルバムだ。(ユニバーサルミュージック)

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