立川直樹の内省日記

2011年2月6日(日)

1月31日(月)2週続けて土日の休みがなかったので、空白の1日を作る。それがちょうど月の最後の日だったというのもいいタイミングだ。ヤン・ヨンヒ監督のドキュメンタリー「ディア・ピョンヤン」に始まり、青山真治監督の「サッド・ヴァケイション」とDVDを2本見て、最後の1本はセルジュ・ゲンスブールが監督した「赤道」。昼はワイン、夜は日本酒で、気持には余裕も出てきて、セルジュの原稿にも手がつけられた。人には休息が絶対に必要だと思いつつ、きょうも携帯電話に少しだけ感謝する。


2月1日(火)朝刊にジョン・バリーの死亡記事。「007/ジェームズ・ボンド」のあの有名なテーマ曲をはじめとして、本当にたくさんの映画の音楽を担当した人だった。合掌!午後はAKB48のコンサートの打合せの後はジェームズ・L・ブルックス監督の最新作※90「幸せの始まりは」の試写。ジャック・ニコルソンに惹かれて出かけたが、笑いのツボとビート感に今ひとつのれなかった。でも、その軽い欲求不満を吹き飛ばしてくれたのが布袋寅泰のコンサート。武道館では数え切れないほどライヴを見ているが、ベスト10に入るくらい素晴しいロック・ショウだった。ギター・プレイもバックのミュージシャンもレベルは完全に世界クラス。2時間半すっかり堪能したが、こういうライヴを見た後は、アフター・パーティーにも喜んで顔を出したくなる。会場はミッドタウンイーストの“オランジェ”。気心の知れた人たちが顔をそろえたいい感じのパーティーで、10時半から1時半過ぎまでずっとシャンパンを飲んでいた。5月には代々木競技場第一体育館でまたコンサートをやると布袋クンがステージで話し、満員の観客から喚声があがっていたが、これは絶対に見逃せない。しっかりと手帳に予定を書き込んだ。

※90 「恋愛小説家」でアカデミー賞7部門にノミネートされ、ジャック・ニコルソンとヘレン・ハントにそれぞれ主演男優賞と女優賞を獲得させたジェームス・L・ブルックスがロマコメの女王と呼ばれているリース・ウィザースプーンの主演映画を作りたいというところから企画がスタートし、出来上がった作品。2月11日公開。(ソニー・ピクチャーズ)


2月2日(水)いつもと違う目醒めの感覚。身体の中に霧がたちこめているような感じがするのは昨夜のシャンパンの量が過ぎたせいか……ボトルがあって飲むのだと分量の見当がつくが、テーブルに坐って話をしていて、グラスが半分ほどになると笑顔で注いでくれるのでどのくらい飲んだか見当がつかない。でも、午前中は胸が少し痛く、3時半の試写に出かける時も不思議な浮遊感は残っていた。それとシンクロするジェフ・ベックのギター。「アパッチ」から「ウォーキング・イン・ザ・サンド」まで懐しい曲がたっぷりと収録された最新CD※91「ライヴ・アット・イリディウム~レス・ポール・トリビュート」の中の「スリープウォーク」はきょうのテーマ曲だった。4世紀のエジプト・アレクサンドリアを舞台にした映画※92「アレクサンドリア」も偶然そこにシンクロし、歴史の旅を楽しんだ。そして、夜は事務所でゼミの生徒たちのリクエストで飲み会。きょうもまた深酒をしてしまった。

※91 2010年の6月8日と9日にNYのイリディウム・クラブで行われたプレミアム・ライヴのCD化。日本盤にはボーナス・トラックが2曲入って、全22曲といううれしい1枚。(ワーナーミュージック・ジャパン)

※92 2005年に「海を飛ぶ夢」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞後、世界中から次回作が期待されていたアレハンドロ・アメナーバル待望の最新作。ローマ帝国末期に伝説を残した実在の女性天文学者ヒュパティアの物語をヨーロッパ史上最大級と言われる製作費を投じて映画化した。主演はレイチェル・ワイズ。CGに頼ることなく、リアルな演技と演出で魅せる本物のドラマは見応えがある。3月5日公開。(ギャガGAGA)


2月3日(木)とてもゆっくりと時間が流れた1日。事務所で仕事をして、午後3時半からは※93「ランナウェイズ」の試写。懐しい70年代にトリップし、夕方は事務所でゲンスブール・プロジェクトの打合せで80年代初頭に記憶の旅をし、夜は“Rice Terrace”でタイ料理。榎田クンとは“東風”以来のつきあいだから、80年代の夜の思い出がフラッシュバックしてきた。大好物のソフトシェルクラブなどを食べながらスパークリングワインと赤ワイン。気持良く酔いが回り、10代の終わりに住んだアパートの前を通りながら“PB”に流れたら、高校の後輩であるLFの節丸クンと偶然出会い、大いに盛り上がる。夜は長い。まだ明日も夜の予定が入っている。

※93 1975年にロサンジェルスでキャリアをスタートさせた平均年令16歳のガールズバンド、ランナウェイズの軌跡を描いた映画。バンドのギタリストだったジョーン・ジェットがエクゼクティブ・プロデューサーを務め、クリスティン・スチュワートとダコタ・ファニングが共演し、中々のロック映画に仕上がっている。デヴィッド・ボウイの名曲「薄笑いソウルの淑女」をはじめ、鳴り続けるロックがとてもリアルでいい。3月12日公開。(クロックワークス)


2月4日(金)エジプトが凄いことになっている。“追放の金曜日”として映し出される映像は強力だ、それに新燃岳の噴火と大雪の被害……“Va-tout”でのランチ・ミーティングでもエジプトの話になり、中東はどうなるんだろうという話になった。何だか世界中が凄いことになっている。仕事のシステムや様々な情況も劇的に変化しているが、それは午後の3つのミーティングと、夜の“かんだ”でのTGVの内藤さんとの会食でも多かれ少なかれそういう話につながっていった。“かんだ”の食事は絶品。熱燗をおいしく飲んだが、帰宅して夕刊を開くと、マリア・シュナイダーの死亡記事が載っていた。マーロン・ブラントと彼女が共演した1972年の映画「ラストタンゴ・イン・パリ」の鮮烈な記憶。ガトー・バルビエリのむせび泣くようなサックスも最高だったが、昨日の夕方、2CVの中でガトーのテープを聴いたのは単なる偶然だったのだろうか。ジャック・ニコルソンと彼女が共演した、大好きな映画「さすらいの二人」の場面もフラッシュバックしてきて、時間がぐるぐると回り始める。石原慎太郎を除くほとんどの人が無難で、善人ぶったコメントをしている大相撲の八百長問題などは僕にとって近くて遠い世界の出来事だ。


2月5日(土)休日。読書とテレビ。マルセル・プルーストの「楽しみと日々」の続きを読み始めるが、波長が合わず本棚に戻して、ジェームズ・クラムリーの「明日なき二人」を読み始めるが、これも途中で放棄してしまった。このハードボイルド本は映画だったらおもしろいかも知れない。テレビは10時からのNHK衛星第1のクラウス・フォアマンにスポットを当てたドイツ製作のドキュメンタリー「サイドマン~ビートルズに愛された男」がいきなりの二塁打という感じで、“週刊ニュース新書”、シーシェパードの現状を追跡した“ドキュメンタリー宣言”、エジプト情勢と新燃岳噴火を「怒りのマグマが噴出している…」と前置きしてレポートした“報道特集”、レディ・ガガの「ロンドン・スペシャル・ライヴ」とどれもおもしろく見られたが、夜8時のBS・TBSの“八千代座100年物語”は中々良く出来たドキュメンタリーだった。山鹿にある八千代座の再生物語と、それに関わった土地の人と玉三郎の努力と交遊。灯籠祭りなどのエピソードの盛り込み方もよかったし、BSだとやりたいことが出来そうだと思って、いろいろとアイデアが浮かんできた。本は3冊目の開高健の“六つの短篇小説”「ロマネ・コンティ・一九三五年」が見事にはまった。朝日新聞の「卓抜な比喩やイメージ、魅力的な作品空間」という朝日新聞の評がぴったりの作品群が時のたつのを忘れさせてくれた。


2月6日(日)朝のテレビを見てから、セザリア・エヴォラのCDをBGMに開高健の短篇小説集の中の「渚にて」を読む。悦楽の時間。午前中はウィークエンドの非日常感を楽しみ、午後は青山円形劇場でコンテンポラリーダンサーで振付家の鈴木ユキオがアニメーションや音楽とコラボレーションしたダンス「HEAR 聴くということ」を見てから、ポスターハリスギャラリーの「天妖花戰/東學墨画展」を覗き、夜は赤坂ACTシアターで※94「テンペスト」を見る。“琉球ロマネスク”と銘打たれたスペクタクル作品で、初日の舞台だったが、よくまとまっていた。キャストもスタッフも粒ぞろいだったが、僕の好きな輝きを放っていたのが生瀬勝久。名前で見たくなる役者が1人増えた。帰宅後はWOWOWでUFCの中継を見ながらワイン三昧。アルゼンチンの伝統あるワイナリーのひとつ、TOSOのカベルネ・ソーヴィニヨン2008とサンタンドレの相性が申し分なく、唐墨や鰤ぬか漬燻製をつまみに飲んだチリのフロンテラがオープニング・アクトという感じで、格闘技を見ながらワインというのは家ならではの楽しみかも知れない。昨日は白ワインと日本酒。今日は夕方にビールを飲み、帰宅後はワイン三昧で、「休肝日が必要…」と医者に言われたことはあるが、これではもう馬の耳に念仏だ。大相撲の春場所が中止というニュースはそうだろうなという印象。そしてエジプト騒乱のニュースで神保さんとかいうビデオジャーナリストの方がインターネットは情報を交換したり、壊したりはできるがものを作ったりはできないというようなことを言っていたのがとても印象に残った。朝刊の一面に載ったほどの元連合赤軍の永田洋子病死のニュースをテレビで見ることがなかったのは何故だろう……

※94 池上永一の大ヒット長編小説「テンペスト」が映画監督・演出家として活躍している堤幸彦の演出により初の舞台化。仲間由紀恵が運命のいたずらに人生を翻弄された“男女1人2役”という難役をこなしている。2月28日まで上演中。(チケットスペース)

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