立川直樹の内省日記

2011年1月13日(木)

1月11日(火)待ちに待っていた“HIBARI 7 DAYS”のポスターが出来上がった。成城学園にある横尾忠則さんのアトリエで目にした時、僕も一緒に行った加藤和也さんも思わず「ワォー!」と声をあげた。素晴しい!と同時にカッコいい!イベントも一気に加速する感じがする。横尾さんとの会話も楽しく、時間さえあればもっと浮世離れした時を過ごしたかったが、ラース・フォン・トリアー監督の話題作※78「アンチクライスト」の試写があるので後ろ髪を引かれながらアトリエをあとにし、車と地下鉄をうまく使い京橋に向かう。映画は想像以上の問題作。2009年のカンヌ映画祭で、ジャーナリストと観客の間で賛否両論が巻き起こったのも当然だと思うが、文句なしに“凄い映画”だ。夜は神楽坂の“弥生”で以前はKPOキリンプラザ大阪の仕事を御一緒し、今はキリンビールから新日本フィルに職場を移したY氏と会食。アートから食に至るまで話が弾み、あっという間に3時間、絶品のすっぽんなべをはじめに食べ物も申し分なく、熱燗もすすんだ。

※78 ウィレム・デフォーとシャルロット・ゲンズブール共演、シャルロットはその超絶な演技でカンヌ国際映画祭の主演女優賞を受賞した。「子供を失くした夫婦の悲しみと苦悩を、美しく、かつ残酷に描いたエロティック・サイコ・スリラー…」とチラシには説明されているが、その凄まじさはもう形容不能な映画だ。2月26日公開。(キングレコード)


1月12日(水)今年最初の大学。甲州街道から仙川に入る交叉点の正面に見える冠雪した富士山が美しい。冬ならではの景色だ。午後は4月に延期になった神戸のイベントと、JICAのチャリティCD、それにHIBARI 7 DAYSと3つの打合せ。移動時間も含めて正確に物事が進行していくのは実に気持がいい。夜は考えてみるともう25年くらいのつきあいになるPARCOの山崎さんと柴田さんと旧交を暖めつつの新年会。久しぶりに行った円山寺のおでん屋“ひで”の座敷で熱燗を飲みながら刺身や菜の花の昆布じめをつまみ、おでんでしめたが、襖越しに芸者さんの歌う“金毘羅舟々…”が聞こえてきたのは、何ともいい感じだった。“ひで”の後に柴田さんの案内で行ったBAR“すぎはら”も古い民家を改造した気持のいい空間で、ベルギー産の青リンゴビールが雰囲気と和食の後のデザートを欲しがっていた口にもよく合っていた。勿論、会話も昔話からこれからの話まで含めて大盛り上がり。何かおもしろいことが始まりそうな予感がする。


1月13日(木)1時からはシャロン・マグアイア監督の※79「ブローン・アパート」3時半からは園子温監督の※80「冷たい熱帯魚」と試写2本立、6時半からは新国立劇場・中劇場で宮田慶子演出の※81「わが町」と、時間を計算してみると、約7時間近く試写室と劇場の椅子に坐っていたことになる。昨日の“HIBARI 7 DAYS”の打合せで挨拶を交わしたデザイナーの下山さんに「ブログおもしろいですね。でも、本当に凄く見たり食べたりしてますよね」とお言葉を頂いたが、気になるものを追いかけていくと、どうしてもこういうことになる。ミシェル・ウィリアムズとユアン・マクレガー共演の「ブローン・アパート」はまずまずの出来、「冷たい熱帯魚」はヴェネチア国際映画祭を沸かせたのも納得の強烈な映画、そして現代劇の原型ともなった名作のひとつと言われている劇作家ソーントン・ワイルダーの新翻訳による上演「わが町」は細部までよく練られた知的でとても静かな魅力を持った舞台だった。その後は浅田氏の案内で新宿二丁目の韓国家庭料理“オンマ・キッチン”へ。“Moppo”という韓国焼酎をとうもろこし茶で割った飲物を飲みながら、チャンジャ、センマイ、イカ野菜炒めなどを次々と平らげていったが、もう28年も商売しているという韓国のオバちゃんのノリと、最後のコムタンスープは最高、「また、おいでね」と見送ってくれたが、また1軒好きな店が増えた。そして12時少し前に帰宅すると、WOWOWで気になりながら見逃していた「クヒオ大佐」がオンエアされるのに気づき、深夜の映画鑑賞。堺雅人が見事に実在の結婚詐欺師になりきり、中々おもしろい映画になっていた。それにしても何という1日。自分でもその酔狂さに笑いながら眠りについた。

※79 情事の間に爆破テロで息子と夫を失った若い母親がたどる、愛と裏切りの物語。原作はオサマ・ビン=ラディンへの手紙という斬新な語り口で綴られた世界的ベストセラー「息子を奪ったあなたへ」(原題:INCENDIARY)。公開は1月29日(日活/ハピネット)

※80 監督の実体験と、1993年の埼玉の愛犬家殺人事件や他の猟奇的殺人事件からインスパイアされて生み出された物語。共演の吹越満を完全に食ってしまっているでんでんはプレスにもあるように「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクター、「ノー・カントリー」のアントン・シガーなどの数多ある鮮烈な殺人鬼と引けをとらない“ジャパニーズ・モンスター”を怪演、観る者を恐怖と笑いの世界にひきづりこんでしまう。公開は1月29日。(日活)

※81 小堺一機、鷲尾真知子、相島一之など実力派の出演者たちが稲本響の奏でるピアノとともに作り上げた濃密な劇空間。1938年に発表され、その年のピュリッツァー賞を受賞した作品で、現在もなお世界中で上演され続けているのも納得できる。1月29日まで上演中。

Page Top▲

  • TOP
  • PROFILE
  • 立川直樹の内省日記
  • TIME WAITS FOR NOR ONE
  • WORKS
  • ARCHIVE
  • ABOUT THIS SITE