立川直樹の内省日記

2010年12月19日(日)

12月10日(金)午後2時過ぎからニッポン放送の生番組“ごごばん~フライデースペシャル”にゲスト出演して“ロック話”をした後、3時半からは京橋テアトルでAV界の巨匠・代々木忠が送った激動の人生を描き切ったドキュメンタリー映画※69「YOYOchu~sexと代々木忠の世界」の試写を観て、夜は7時からすみだトリフォニーホールでフォープレイが新日本フィルハーモニー交響楽団と共演する“フォープレイ・シンフォニック・スペシャル・ナイト”を聴きに行く。何だか3つの違う世界を旅した感じ。余力があったら“サラヴァ東京”のオープニングに顔を出そうとも思っていたが、映画もコンサートもその世界観は全く異っているものの非常に濃い内容でお腹はいっぱい、全英No1ラッパー、タイニー・テンパーのデビュー・アルバム「ディスカバリー」を聴きながら帰宅し、ワインを飲む。いつもより早い時間の“家飲み”は妙にペースが上がり、“報道ステーション”が終わる頃には部屋の中で千鳥足という状態になったが、妙に享楽的で悪くない。ちょっと癖になりそうだ。

※69 販売本数累計7百万本、監督作品数536本を現在も更新中の代々木忠のエネルギーと独創的な発想に驚嘆。愛染恭子から笑福亭鶴瓶まで、代々木忠と関係し、また評価している人たちまでの幅広い証言と監督自身の奥深い発言、それと数々の作品で構成されたドキュメンタリーは壮絶だ。ナレーションは田口トモロヲ。第5回ローマ国際映画祭EXTRA部門のコンペティション部門に正式出品されている。2011年1月22日公開。(スターサンズ)


12月12日(日)還暦を迎えた年に仕事のやり方と枠組をそれまでと変えて一区切りつけようと考えてから2年余り、ようやく“余白の時間”が少しづつ手に入り、楽しめるようになってききた。世間で言う“60歳定年”というのも自分の精神状態と、世の中の動きや仕事での出来事に対する反応を見ていると、なるほどなと思えてくる。この2日間も、きょう日本橋三井ホールにjammin・Zebのコンサートを見に行った以外、テレビと読書、CD三昧の時間を過ごした。非常にドラマティックだった昨日のK1グランプリ・ファイナル、きょうはイスラエルとフランス・イタリア合作の2000年の映画「キプールの記憶」と、“ジョン・レノン生誕70年、愛と平和への旅路”のサブタイトルでBS朝日の開局10周年特別番組として放映された<木村佳乃のイマジンロード>が中々よく出来ていて、最後にはWOWOWでちょっとオバカなノリの「イントゥ・ザ・ブルー2」まで観てしまった。本は楽しみながら、ゆっくりと読み進んできた田名網敬一×森永博志の「幻覚より奇なり」を読み終えたが、今年一番おもしろい本だと改めて思った。盟友・森永博志のテイストは十分に知っているが、田名網さんとは年令こそ一回り以上違うとはいうものの映画、アートから夢記述に至るまでいろいろなものに共通項があることがうれしくかつ不思議で、以前からずっと考え話してきた“種族”という言葉をリアルに感じた。いいウィークエンドだった。


12月13日(月)一気に気温が下がる。おまけに朝から冷たい雨。でも気になるものは見ておこうという気持ちは全く衰えず、大学の授業の前にキリンコンテンポラリー・アワードの入選者だった田中清隆さんの展覧会「複眼感覚」を覗く。場所は仙川のプラザギャラリー。大学からほど近いところで、10時のオープン早々にと狙いをつけたが、10時にはまだ無人状態で文字通り外から覗いてみることになってしまった。ちょっと残念。そして午後は事務所で少し仕事した後は、TOHOシネマズシャンテでゴダールの「ウィークエンド」、オーチャードホールで「武満徹トリビュート~映画音楽を中心に~」と題されたコンサートの豪華2本立て。最後に“FIN”の文字と“映画の終わり、おとぎ話の終わり”という字幕テロップがスクリーンに映し出され、長々とクレジットが流されることもなく終わるのが妙に新鮮だった「ウィークエンド」は何十年ぶりかに観ると、また違ったインパクトがあったし、第1部を大友良英、第2部を菊地成孔が仕切って、バラエティに富んだゲストが次々と登場する「武満徹トリビュート」はライヴながらではの魅力を堪能した。休憩と短いトークがあったもののたっぷりと3時間余り。改めて武満徹という巨人の凄さを痛感させられたが、大友・菊地両氏のアプローチも文句なしに素晴しかった。終了後は浅田氏たちと連れ立って神泉のビストロ“dame Jeanne”へ。パリのサン・ルイ島あたりにいるような気分になってシャンパンから赤ワインを飲みながら、ウサギのリエットから自家製のスモークサーモン、内臓まで美食を楽しみ、当然の如く会話も弾んだ。始まりが遅かったので、食事が終わったのは深夜の1時過ぎ。80年代のパリの夜がフラッシュバックしてきた。


12月14日(火)昼間はかたづけものと“HIBARI7DAYS”の打合せ。夜は荒木氏のセッティングで新宿の割烹“宍倉”で軽い忘年会。歌舞伎町の奥にある小さな店だったが、心のこもった気がきいた料理がとてもいい。日本酒と、早くも出てきた新竹の子の焼き物の相性も絶品だった。帰りは歌舞伎町を散歩したが、まるで安物のコミックの体栽のような看板のホストクラブが乱立していたのにはびっくり。街はもう完全に破壊されていて、近未来映画のスラムのような感じになっていた。店の前に立っている人たちはまるでアンドロイドのように見えた。大久保に抜けるあたりはどんなふうに変貌したのだろうか。今夜は探訪だ。


12月15日(水)大学で今年最後のTG。午後はセルリアンタワー東急ホテルでもう随分と長いおつきあいになる河野洋平さんが会長を務めている御縁で“日本陸連アスレティックアワード2010”のイベントの仕込みと本番。定番になっているソプラノの林正子と弦楽四重奏のステージはうまくまとまっていたし、本番の前に2つのミーティングもこなせた。何だかよく仕事をしている。そして夜は代官山の“米花”でTOKYO FMの延江さんたちと第成功裡のうちに終了した“JET STREAM 40th CONCERT”を中心に今年を振り返り、また今後のヴィジョンを語り合いながら楽しい会合。食べ物も気がきいていたし、勝沼産の白ワイン、ボジョレーヌーヴォーとお酒もおいしかったが、料理が席に運ばれてきた時に熱さや暖かさが弱くなってしまっているのが残念。でも、お洒落な内装とそれらしいメニューで商いをしている店には比較的にこの傾向がある。“米花”の後は“PB”に移動。少し遅れてやってきたフクちゃんと一緒に店に入ったが、30分もしないうちに常連客で店はいっぱい。「お客が店を育てる」という言葉を思い起こしながら帰路についた。昨日の帰りしなに気になった体調の悪さは大分よくなっている。これは飲み疲れか……?


12月16日(木)9時発ののぞみ215号で京都に向かう。ホリプロのパーディーでおみやげに頂いた村松友視が書いた「ギターとたくあん ・堀威夫流 不良の粋脈」を車中で読み始めるがとてもおもしろい。以前の「雷蔵好み」もよかったが、本当に村松さんには評伝ものの名手だと思う。京都に到着後は里中氏と連れ立って琵琶湖ホテルに向かう。湖を一望できるレストラン“菜”でのランチ・ミーティングではイベントに関するアイデアが次から次へと飛び出す。その後はMAYA MAXXのアトリエに向かう予定だったが、工事の遅れがあって場所をブライトン・ホテルに変更、午後のお茶を飲みながらMAYA MAXXと“何必館”の梶川さんと1時間半近くおしゃべりをする。同じ種族の人々と過ごす時間は本当に楽しく、リラックスできる。夜は里中氏の案内で先斗町の“いふき”で酒飯。ミシュランで星をもらった人気店だというが、料理も御主人もとてもナチュラルで満足感十分だった。偶然にも同じカウンダーでFM802の栗花落光さん、ユニバーサルミュージックの小池さんと出会ったのはびっくり。京都ならではのノリだったが、その後は“ルセロ井雪”から宮川町の“本城”、最後はロックとブルースを売りにするBAR“GEAR”と文字通りの京都ナイトクルージング。“ルセロ井雪”ではローズマリー・クルーニーを聴きながら、照明の当たり具合を直したのも楽しく、“本城”では若女将に「七夕さんにならんようにね」と実に気がきいた言葉で送り出され“GEAR”ではローリング・ストーンズの「BLACK&BLUE」やドアーズの話で店主の楠見さんと意気投合。京都ならではの夜を満喫した。それにしても“七夕さん”のフレーズは夜の名言。さり気ないふりは絶対的な玄人芸だ。


12月17日(金)昼前にひとつ打合せをした後、“台湾家庭料理”の看板を掲げる“青葉”へ。恐ろしく元気のいい台湾のおばちゃんはメニューの相談をしてもラップのノリで超強力。台湾ビールを飲みながら、台湾セロリとイカ炒め、メンマと豚肉炒め、五目アゲソバ、魚丸を食べる。台湾メンマのおいしさは最高で、台湾で食べた豚足との炒めの話をしたら、「よく知っているね」とうれしそうに笑い、「夜だったら作ってあげるよ」と言ってくれた。1時間ほどの間に里中さんに「今度、宴会やってよ」と数え切れないくらい声をかけていたエネルギーも凄い。昼間からすっかりテンションが上がってしまったが、大阪に移動してホテルにチェックインしてからはdddギャラリーが歩いてすぐのところにあるので、<田中一光ポスター1953-1979>を見に行く。小規模な展示だったが、クリエイティブなパワーがダイレクトに伝わってきて、見応えがあった。夜は松井クンの案内で北新地の鮨処、“多田”から“TSUBAKI”、そして、“nadja”と昨日の京都に続いて大阪の夜を思いっきり楽しむ。“nadja”では“カハラ”の森さんともばったり出会って“多田”の小肌のおいしさに始まり、いろいろな話で盛り上がる。ボブ・ディランやストーンズ、レナード・コーエンといった定番のアーティストの歌に加えて、久しぶりにスピーカーから流れたピンク・フロイドの「シャイン・オン・ユー・クレイジー・ダイヤモンド」が気分にぴったりとはまった。


12月18日(土)8時半過ぎののぞみで東京に戻る。睡眠不足だったが、「ギターとたくあん」がおもしろく、最後まで一気に読んでしまった。帰宅後は留守中の新聞や郵便物の整理。昨日付の朝刊に“ウィキリークス”のジュリアン・アサンジ容疑者保釈とラリー・キング・ライヴ終了の記事が上下の形で載っていたのがとても印象的で、映画監督ブレイク・エドワーズの死亡記事も20世紀がどんどん遠ざかっていくのを感じた。CDはマイケル・ジャクソンの9年ぶりになる最新オリジナル・アルバム※70「MICHAEL」とカニエ・ウエストの5枚目のスタジオ・アルバム※71「マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー」が、“いい鳴り方”をしていた。旅行に出ると、音楽だけは趣味の合う店にいこうが、いい曲が流れていようが、やっぱり自由がきかない。でも、今回の関西小旅行は昨夜の“TSUBAKI”と初日の琵琶湖ホテルでのランチを除いては個人経営の店ばかりだったので居心地はとてもよかった。2泊3日の旅だったが、時間が倍近くに感じられたのもよかった。

※70 エイコンとのデュエット曲「ホールド・マイ・ハンド」から「マッチ・トゥー・スーン」まで全10曲からなる最新作。今は亡きマイケルが近年まで制作/レコーディングしていたヴォーカル・トラックが最終的な制作過程を経て仕上げられたが、珠玉の名曲がそろっている。YMOの「ビハインド・ザ・マスク」のマイケル版が遂に陽の目を見たのもうれしい。10曲という収録曲がアナログ時代を彷沸とさせる。(ソニー・ミュージックジャパン・インターナショナル)
※71 キング・クリムゾンの名曲「21世紀の精神異常者」を大胆にサンプリングしたアルバムからの第1弾シングル「パワー」を飛行機の機内チャンネルで聴いた時は、その強力さにグッときた。<最先端でありながら普遍的な“音のアート”完成。>というキャッチコピーには偽りなし。赤を基調にしたパッセージも素晴しく魅力的だ。(ユニバーサル・インターナショナル)


12月19日(日)恵比寿ガーデンシネマが来年の1月29日から休館するそうだ。ミニシアター向けの洋画の購入価格が高騰し、配給会社が資金回収のため、シネコンにも供給するようになり、ミニシアターの独自性がなくなったことで、客離れしたのが大きな原因。西武有楽町店は今月の25日に26年間の歴史に幕を下ろし、海の向こうではアメリカ車マーキュリーが年内で製造中止になり、72年の歴史を閉じるというが、時代は価値感とともに急速度に変わっていく。頭には「ユニクロ栄えて国滅びる」という本のタイトルが思い浮かぶ。そして、昨日に続いてきょうも昼間はCD三昧。ソウル・アサイラムのダン・マーフィーがウィルコのジェフ・トゥイーディ等と作ったプロジェクト・バンド、ゴールデン・スモッグの魅力に10数年ぶりに気づき、70年代最後の年に出たヒカシューのアルバムをとてもおもしろく聴いた。オリジナリティは歳をとらない。CD三昧の後はWOWOWで「マッハ!弐」。2008年のタイ映画で、どんなものだかと思ってチャンネルを合わせたが、ダークなストーリー展開と超絶なアクションに撮影の見事さもあって妙にはまってしまった。夜は明日ロサンジェルスに戻るEIICHIと会食。すっかり様変りした音楽業界の話から喜多郎の今後のプロジェクトまで話が弾んだ。久しぶりのムール貝が中々の美味。スモーク・サーモンのタルタルも含めてオーソドックスなブラッセリーのメニューは何だかホッとできる。

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