立川直樹の内省日記

2010年10月28日(木)

10月25日(月)朝刊にヨシダミノルさんの死亡記事。現代美術作家。60年代末の東京のいくつかの情景がフラッシュバックしてきた。そして午前中大学で授業をした後は2時から青山劇場で安蘭けい主演の「ワンダフル・タウン」、8時から新世界で佐橋佳幸クンとDr.kyOnのユニット・ダージリンのライヴ、9時半からはTOHOシネマズ六本木ヒルズでスコリモフスキの新作「エッセンシャル・キリング」と、芝居と音楽、映画の3本立て。レナード・バーンスタインの作品の日本初演という「ワンダフル・タウン」は安蘭けいが黒のドレスで歌う「スウィング」が見ものだったし、ダージリンは軽妙な喋りと洒落っ気のある演奏が楽しめたが、最後の「エッセンシャル・キルズ」は脳天に一撃をくらったような強烈な作品で、ロバート・デ・ニーロが演じた「トラブル・イン・ハリウッド」のプロデューサーのような気分で過ごした1日を、軽々と吹きとばしてしまった。主演はヴィンセント・ギャロ。そのドーンとした重さが身体に残り、ブランデーを飲みながらの深夜作業を続けても眠気が中々やってこなかった。


10月26日(火)曇り空の中、カサンドラ・ウィルソンの最新作※55「シルヴァー・ポニー」を聴きながら横浜に向かう。目的地はBank ART Studio NYK。新聞で目にした朝倉摂さんの展覧会を見ようと思っての横浜行きだったが、カサンドラ・ウィルソンの表現力豊かなヴォーカルは景色とぴったりとシンクロしたし、「アバンギャルド少女」というファンキーなタイトルがつけられた展覧会は予想以上に素晴しいものだった。舞台セットの模型や膨大な量のスケッチや写真……元倉庫だった建物も展示スペースとしては実に魅力的で、そこで行われたパフォーマンスを見逃してしまったのは残念だった。昼は以前、青島先生に連れていってもらった“陳麻婆豆腐”で全く日本人向きにアレンジしていない麻婆豆腐を食べて大汗をかき、その後はランドマークホールで打合せ。夕方は代々木上原のギャラリー“hako”で開催中の<堀清英×WISH…original写真展「いぬまるけ」>を覗いてから、外苑キャンパスでジョン・レノン・プロジェクトの打合せ。時間的な問題などもあり、うまく進むだろうか。そして夜は久しぶりに学友でもある講談社エディトリアルの丸木氏と新しいスタッフと紹介された品田氏と“MAURSQUE”で会食。シャンパンと赤ワインを飲みながら会話が弾んだ。天然舞茸のフリット、自家製ロースハムとマッシュルームのサラダ、ブイヤベース……おいしいものを少しづつ食べるのはうれしい贅沢だ。食後は広尾の“THE PLACE”なる気持のいいBARに流れてジントニック。夜になると急に冷えこんだが、ハッピーな気分で夜は更けていった。会話の中で出たアイデアもすぐに実現しそうな感じがする。

※55 スペインでのスペシャルなライヴ録音に、そこからインスパイアされたスタジオ録音を加えたという冒険的最新作。選曲も含めて申し分のない傑作。(EMIミュージック・ジャパン)


10月27日(水)午前中、大学で授業を終えてから三鷹天命反転住宅に向かう。奇想天外な作品群と発言で世界中に大きな波紋を投げかけてきた荒川修作と、「ここに住むと身体の潜在能力が引き出され、人間は死ななくなる」と荒川が語った集合住宅に住んだ人々のドキュメンタリー映画※56「死なない子供、荒川修作」の試写がその現場で行われると聞いて、これは絶対に外せないと思ったが、建物も映画も何とも摩訶不思議でまっ昼間から完全にナチュラル・トリップしてしまった。調布飛行場や天文台などがある道を走っていったドライヴも秋の平和な1日という感じで楽しかったし、随分と遠くへ旅した気分も味わえた。そして、その後はジョン・コルトレーンを聴きながら高速道路を走って東京に戻り、7時からはAKB48劇場でAKB48のチームK公演、9時30分からはコットンクラブでビージー・アデール・トリオのライヴと、エンタテインメントのはしごをする。ビージー・アデールは以前のソロよりトリオの演奏の方がさらに素晴しく、エレガントなピアノ・ジャズを赤ワインとともに楽しめた。終演後は行方氏、早乙女クンと“ZEST”に流れ、また赤ワイン。夜中だというのに、オニオンリングとステーキなどもつまんでしまい、自分でも何故こんなに元気なんだろうと思わず心の中で笑ってしまった。明日もまた……

※56 自身が4年に及ぶ三鷹天命反転住宅の住人でもあり、特異な映像世界で海外映画祭の評価も高いという山岡信貴が監督したドキュメンタリー。浅野忠信のナレーションと、先鋭的な電子音響で音の概念そのものに変革を与え続けている渋谷慶一郎も悪くない。12月18日からシアターイメージフォーラムでモーニング&レイトショー。(アルゴピクチャーズ)


10月28日(木)連日のお出かけ三昧で机の上にいくつも山が出来てしまった。午前中、ある程度はかたづいたが、午後“HIBARI 10DAYS”の打合せをした後、3時から新宿FACEで川村毅作・演出の「新宿八犬伝 第五巻―犬街の夜―」を見てから、末広町の3331 Arts Chiyodaに珍しいキノコ舞踊団の公演を見るために移動。残念ながら、雨のため、キノコの公演は中止になったが、一昨日の横浜のBANKART STUDIO同様、とてもクリエイティブな気を放っている建物を見ただけでもよしとしようと自分をはげます。その後、8時半からはスパイラルカフェでエマージング・ディレクターズ・アートフェア「ULTRA003」のオープニング・レセプションに出席、30人のアーティストの作品を見てから、久しぶりに“開化亭”に出かけたが、寺山修司的空間の中で紹興酒を飲みながらカキやアヒルを食べていたら、川村毅の作り出した不思議な物語と言葉が時折フラッシュバックしてきて、妙な酩酊感に包まれた。帰宅後は本気でかたづけもの。現実世界と異空間を行ったりきたりしていたせいか、ニュースも含めてテレビに映っているものが全くリンクしてこない……その結果、真夜中の部屋にはタンジェリン・ドリームが流れることになってしまった。

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