立川直樹の内省日記

2010年10月6日(水)

9月30日(木)朝の10時半から打合せ3件。途中“Va-tout”でのランチ・ミーティングで食べたポークピカタが絶品。一緒に同じものを頼んだS氏も絶賛していたが、思わず帰りしなに「ランチの定番にしてくれ…」と頼んでしまった。そして打合せの後は東京都現代美術館で開催中の「こどものにわ」とMOT Collection「入口はこちら…なにがみえる?」、シンワアートミュージアムで開催中の「小島剛夕、上村一夫、矢口高雄、漫画絵師三人原画展」を見てから、パルコ・ファクトリーで明日から始まる「フィリックス・ザ・ラッキー・キャット展」のレセプションパーティーに顔を出す。雨の中のギャラリーツアーだったが「入口はこちら…なにがみえる?」と「フィリックス・ザ・ラッキー・キャット展」は大収穫。楽しむと同時にいろいろなアイデアももらえた。そして、“JOURNAL STANDARD”でのタイアップ企画“FELIX CAFE”でビールとフィリックス・バーガーをごちそうになった後は三島クンと連れ立って代官山の“さんかい”に向かう。以前“Va-tout”でマネージャーをしていた三宮さんがオープンした馬肉中心の居酒屋。馬のタンの刺身が絶品だった。赤ワインとの相性も申し分なし…。パルコファクトリーのパーティーで企画者である岩根さんにも言われたが、確かに毎日おいしいものを食べてはいる。仕事も好きなものをやっていられるし、まあ幸せな人生だと言えるかも知れない。


10月1日(金)朝刊にトニー・カーティスの死亡記事。昨日の夕刊には監督のアーサー・ペンの死亡記事。記憶に残る俳優や監督が次々と天国へと旅立っていく。“HIBARI 10DAYS”の打合せの後、ギリギリで飛び込んで見た※45「リミット」のような映画と彼等が出演したり監督した映画とはどこかで完全に境界線があるように思う。でも、「リミット」は凄い映画だった。“究極のシチュエーション・スリラー”という宣伝文句には全く偽りなし。土の重さがのしかかる箱の中に閉じ込められた男が充電切れ間近の携帯電話とオイルの尽きかけたライターを使って脱出を試みる90分間の濃密な恐怖をロドリゴ・コルテスという名のスペイン人は見事なまでに構築している。そして、きょうはもう1本、ドリュー・バリモア主演のコメディ※46「遠距離恋愛 彼女の決断」も見たが、これもノー天気に楽しめた。ドキュメンタリー作家として知られ、監督/プロデューサーとして高い評価を得ているナネット・バースタインの長編映画監督デビュー作ということだが、きわどい台詞もポップに消化し、テンポよく進んでいく展開は中々のものだった。この映画2本立てに加え、夜は東京グローブ座で、※47「ACT泉鏡花」。今週は映画に展覧会、それに舞台もあわせると、かなりの時間を費したが、しっかりと栄養になっている感じがする。そして、締めは“アダン”の河内一作さんが元自由劇場の跡にオープンしたライヴハウス※48“新世界”でこだま和文のライヴ。ローリング・ストーンズの「黒くぬれ」のダブ・バージョンが抜群にかっこよく、店内の雰囲気も70年代のニューヨークみたいで、とてもいい気分になれた。TOKYOでは何か新しいムーブメントが始まる予感もあった。

※45 タイム誌が「サスペンス映画の最高峰」と評したのも納得。主演のポール・コンロイを演じるのはライアン・レイノルズ。製作・監督・編集をこなし、音楽制作にも関与しているロドリゴ・コルテスはこの作品をきっかけにハリウッドでも注目を浴び、シガニー・ウィーバー出演「レッド・ライツ」の制作も決定した。11月6日公開。(ギャガ)
※46 ニューヨークとサンフランシスコの2ヶ所を結んで繰り広げられるロマンティック・コメディ。日本のTVドラマの題材にすぐなりそうなものなのに、仕上がりのおもしろさは俳優陣の魅力と監督のセンスの良さか…既成曲の盛り込み方も目新しくはないが、うまくポイントをついている。10月23日公開。(ワーナー・ブラザーズ映画)
※47 泉鏡花を題材に作られた音楽劇。近藤正臣に木の実ナナ、それにAKB48のメンバーも加わるというキャスティングで、実に摩訶不思議な演し物ができあがった。10月10日まで東京グローブ座で上演中。以後、全国数ヶ所を回り、10月23日、24日に鏡花生誕の地・金沢で幕を閉じる。(アトリエ・ダンカン)
※48 “音楽実験室”と銘打ってオープン。10月のカレンダーを見ると、中々おもしろい、ひねりのきいたプログラムが組まれている。事務所と目と鼻の先なのがうれしい。(03-5772-6767)


10月4日(月)大学の後期の授業が始まる。2CVの中で流れるのはレナード・コーエンの「TEN NEW SONGS」。彼の声には不思議な沈静効果と妙な覚醒感がある、授業は時間がタイムスリップしてしまったかのように何事も変わりなく進み、午後は“ROCK AROUND THE CLOCK”で※49“BAR NOWHERE BOY”の仕込み。ジョン・レノンが青春時代に愛聴したアーティストたちのアナログ盤と、映画の場面をパネルにしたものが両側の壁に並ぶと、またたく間に雰囲気のあるBAR空間が出来上がる。スクリーミン・ジェイ・ホーキンスの「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」やワンダ・ジャクソンの「冷たい女」などが収録された映画のサントラ盤もどこで聞くよりずっといい。ゲストの人達も楽しんでくれたようだ。途中、打合せをかねての“mus mus”での小宴会もいい感じだったし、エレベーターの中の写真で見て食べたくなった牡蠣のせいろ御飯は思っていた通り抜群のおいしさだった。そしてシャンパンや十四代などを気の向くままに飲んだBAR“NOWHERE BOY”の後は、東京に遊びにきた三宅氏と“PB”へ。久しぶりにギタリストの佐橋クンとも出会って、音楽話で大いに盛り上がり、25日の“新世界”のライヴを見に行く約束をして、“PB”を後にした。最後に飲んだウインドスウェプトで酔いのバロメーターは一気に上がり、街の灯りはサイケデリック模様に見えた。

※49 ジョン・レノンの生誕70周年と同名映画の公開に合わせて新丸ビル7FのROCK AROUND THE CLOCKが“変身”。11月7日までの開催。(03-3211-6999)


10月5日(火)秋葉原のドン・キホーテの8階にあるAKB48劇場で見たチームBの公演“シアターの女神”を見ている僕は完全にANOTHER PLANETに迷い込んだような気分だった。ステージで16人の少女たちが展開するパフォーマンスは間違いなく地球人によるものだったが、建物自体もそこから発せられている様々な音も、観客のノリも何もかもが驚きだった。それと秋葉原の街自体の無機質感。道路に立っているメイド姿の少女は午後オムニバス・ジャパンで見た日本初の全編フルデジタル3D映画「牙狼<GARO>~RED REQUIEM~」の世界とつながっていた。午後1番と夕方の2つの打ち合わせは、秋葉原を離れる時には前の時代の出来事のように感じられたほどだった。


10月6日(水)10月に入ったというのにまだ夏の暑さが残っている感じがする。オープンにした2CVで流れるウイリー・コロンがぴったりとくるなんて、まるで初夏のようだ。だから、大学や打合せの場所に移動するドライヴがとても気持がいい。それに合わせて物事も流れるように運び、身体も軽くなった気がする。夜は赤坂ACTシアターで「坂東玉三郎・特別公演『牡丹亭』~中国・昆劇合同公演~」。初日の舞台だったが、中国語の中で最も難しいといわれる蘇州語の台詞と歌を見事に駆使する玉三郎の美しさは夢の世界から舞い降りてきたようだった。そのたおやかさは劇場の外の景色やテンポ感、世の中の出来事とは全く無縁のもの。帰宅してからどこの局でも報じていたノーベル賞を受賞した日本人化学者が妙に俗っぽく、生々しく見えたのも、劇場で過ごした時間のせいかも知れない。

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