立川直樹の内省日記

2010年10月24日(日)

10月21日(木)11時の開店と同時に“Va-tout”でひとつ打合せをした後、新幹線で大阪に向かう。“Va-tout”で食べた目玉焼をのせたクロックムッシュは軽めの食事としては申し分なし。新幹線の中では半分以上寝てしまったが、自分のがんばりと判断だけではそう簡単に進まないプロジェクトがいくつか進行中なので、その疲れが蓄積しているのだろうか。だから、12月の金沢大歌舞伎との絡みもあって出かけた大阪城、西の丸庭園での<大阪平成中村座>観劇は仕事の流れの一環とはいえ、最高の気分転換になった。中村勘三郎のお家芸のひとつである「俊寛」に、今回の大阪城公演のために創作されたという長唄の新作舞踊劇「太閣桜」、それに「弁天娘女男白浪」という魅力的な演目が休憩をはさみながら3時間40分。西の丸庭園の中に甦った江戸時代の芝居小屋の中で僕は幸福なトリップ感を味わったが、ライトアップされた大阪城に向かって中村橋之助演じる豊臣秀吉と中村獅童演じる明智光秀が歩いているエンディングが圧巻だった「太閣桜」は絶対にここでしか見ることが出来ないもので、完全に夢の景色として記憶されることになった。観劇後はもう20年以上のつきあいになる松井クンの招きで北新地の“KOTATSU”へ。松井クンの趣味の良さとアイデアが生かされた鉄板焼きの店だが、食事もサービスも申し分なかった。そして食後はキリンプラザ大阪の仕事をしていた頃によく通っていた“ロンギーズ”へ。西村さんとは「もう10年ぶりかなあ…」という感じの再会で、昔話に花が咲いた。南港にあった名物ママのいた船員バー“パセノン”などで大騒ぎしていた日々……本当にいい時代だったとタイムスリップする気分と美空ひばりの歌うJAZZが完璧にシンクロしていた。


10月22日(金)金沢に向かう前に京都に寄り、何必館で<ウイリー・ロニス展>、美術館「えき」で<ブリューゲル版画の世界>を見て、里中さんの案内で“Grill French”で昼食。11時半過ぎに京都に着き、2時過ぎにはサンダーバードに乗っているから短い京都滞在だったが、ロニス展は瞬間をとらえた写真が掛け値なしに素晴しかったし、クモコのオリーブオイル煮込みのおいしさに唸られたランチも申し分なく、実に有意義な時間になった、ちょっとでも気になるものは、絶対に出かけていくべきだということを再認識もした。そして金沢に着いてからはホテルの部屋で明日の“創造学”のために劇団☆新感線の本や資料をチェックして簡単な予習。7時半には何と新幹線と在来線を使って金沢入りしたいのうえひでのりさんと細川さんとおちあい、金沢の定番“太平寿し”に御案内し、会話も食べ物もお酒も最高においしい時間を過ごした。いいものとおいしいものは絶対に理屈抜きだ。


10月23日(土)劇団☆新感線のいのうえひでのりさんを迎えての公開講座“創造学”の本番日。「五右衛門ロック」や「METAL MACBETH」といった新感線のDVDの他にいのうえさんが影響を受けたジュダス・プリーストのライヴDVDなども上映しながらのトークはとてもおもしろく、かつ興味深く、価値のある1時間半だった。昼食をすませて金沢工業大学をあとにしたのは1時過ぎ。午後はホテルの部屋でタランティーノの「イングロリアス・バスターズ」を観たりしてゆっくりと過ごし、夜はN氏と“雅乃”で会食。金沢ならではの小体な割烹でいつ行ってもおいしいものが供される。その後は“吾赤紅”なる団体向けの店で行われた<ACT泉鏡花>の打上げに参加し、夜の仕上げに片町の“横笛”に流れる。JAZZをBGMに心なごんだ小1時間。ホテルに帰ってテレビをつけると、クーポンやインターネットの話題がとりあげられていたが、顔が見える“お得意さま”というノリは誰でも参加できるクーポンやネットの波にのみこまれてしまうのだろうか。ボブ・ディランの名曲「時代は変わる」以上に時代は急速度に変わっている。余り好きではない方向に……


10月24日(日)ホテルの朝食が身体に妙になじみ始めている。3日ほどのホテル暮らしだが以前より長く感じるのは何故だろう。今朝もコーンフレークからフルーツまでしっかりと朝食をとり、昼は西坂さん、成之坊クンと待ち合わせて“全開口笑”なる中国料理店でランチ。餃子から上海やきそばまで何を食べても実においしかった。街の中のこういう店は本当に貴重だ。その後は赤羽ホールで「ACT泉鏡花」の最終公演を見てから、金沢工業大学の体育館で大学祭に合わせて開催された伊能忠敬の伊能大図の全国巡回フロア展へ。タタミ255枚の大きさの伊能大図は復元とはいえ、“これは来てよかった”と思える素晴しいもので、地図の上を歩いていくのも楽しかった。そして、7時過ぎには帰宅したが、4日間の旅だったのにその倍は家を離れていたように感じられ、朝食の時の感じがフラッシュバックしてきた。その思いと何故かシンクロするキグレサーカス倒産やカセットウォークマンの国内向けの生産が終了したという記事。留守中の新聞を整理しながら、旅の間に思った“世界はますます不自由で醜くなっている”ことをさらにリアルに感じたが、池部良さんの追悼記事で映画評論家の山根貞男さんが「…色気と知性と影。この絶妙な融合ほど、映画俳優の魅力とは何かを示すものがあろうか。…」と書かれた文章は美しい光を放っているように見えた。

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