立川直樹の内省日記

2010年9月20日(月)

9月15日(水)ようやく例年並みの気温になった。PARCOでの打合せからBUNKAMURA CAFE、そしてPARCO劇場と午後から夜にかけて渋谷を移動しても汗もかかず、時間に余裕もあったので、ちょっとした“東京散歩”が楽しめた。神泉から渋谷に抜ける道に“奈る美”や“ひで”といった懐しい店がかろうじて残っていたのもうれしかった。あとはPARCO劇場で7時に幕が開いたサイモン・スティーヴンスの戯曲を長塚圭史が演出した「ハーパー・リーガン」がとてもよく出来た芝居だった。演出のうまさと俳優陣も魅力的だったが、松井るみの舞台美術が圧倒的に素晴しく、舞台鑑賞の楽しみを堪能した2時間半だった。洒落た体裁のプログラムも読み応えがあり、ちょっとサイモン・スティーヴンスにはまったしまった。その知的レベルの高さに較べたら、夜のニュースに映し出される政治家たちのレベルの低さはもうブラック・コメディの域に達している感さえする。


9月16日(木)強い雨の音で目が醒める。朝一番で、この夏の暑さのため、ほとんど乗ることが出来なかった2CVのエンジンがかからなくなってしまったので、修理に出し、10時からはAUDI豊洲でイベントの打合せ。午後は横尾忠則さんのアトリエに伺って、“ひばり10DAYS”のポスターの打合せをし、東京都写真美術館で<オノデラユキ 写真の迷宮へ>と<私を見て!ヌードのポートレイト>という2つの展覧会を見た。六本木から横尾さんのアトリエのある成城学園までは片道1時間のドライヴ。朝は豊洲まで出かけたし、随分と長く車に乗っていたことになる。でも、ハービー・ハンコックが世界各地のミュージシャンたちとコラボレートして創り上げたCD※32「イマジン・プロジェクト」が最高のBGMになり、ちょっとした渋滞も全く苦にはならなかった。そして、横尾さんのアトリエの大きな窓の外に広がっていた森のような景色と、150点の作品が展示された<私を見て!>の中のヘルムート・ニュートンの1973年の作品「ノール・ピニュス・ホテルのシャーロット・ランプリング・アルル」の魅惑的な美しさは今日の収穫だ。軽い彷徨感を楽しんだ1日……

※32 今年の4月12日に70歳の誕生日を迎えたジャズ界の巨匠ハービー・ハンコックが「平和と地球規模の責任」をアルバム・コンセプトとして、音楽ジャンルにとらわれない視点から人選したミュージシャンたちと、ポップ/ロックの名曲に正面から挑んだアルバム。ピンク、シール、インディア・アリー、ジェフ・ベックをフィーチャーした名曲「イマジン」から、「ドント・ギブ・アップ」「時代は変る」…など全10曲。極上の“音楽による旅”を満喫できる名盤だ。(ソニーミュージック・ジャパン・インターナショナル)


9月17日(金)朝の10時に尾山台にあるAUDI世田谷で始まり、11時には千駄ヶ谷のドリーミュージック、12時半には飯倉片町の“Va-tout”と打合せ3連発。そして午後には東京オペラシティアートギャラリーに<アントワープ王立美術館コレクション展>を見に出かけ、その後は東京都庭園美術館で明日から始まる<香水瓶の世界>の特別鑑賞会にも出かけたら、昨日に続いてきょうも車で走り回った。何だか不思議なトリップ感を感じるのは、マグリットやポール・デルヴォーの絵や、妖しい美しさのある香水瓶との出会いのせいかも知れない。僕の好きなデカダン風味もあったし、その気分は神泉のビストロ“ダム・ジャンヌ”へとまるで映画のようにきれいにつながっていった。浅田クンの案内で出かけた“ダム・ジャンヌ”はシテ島の中にあった方がおかしくないと思えるような雰囲気のあるビストロ。豚足と砂肝の自家製ソーセージをはじめとする食べ物はどれも申し分なくおいしかったし、食前酒にシャンパンを2杯づつ飲んだ後、2人で赤ワインを2本あけてしまった。そして帰りには“PB”でジンソニックとジェットソーダ。散歩しながら通った六本木の街は、まだ邪悪な雰囲気が十分に漂っていたニューヨークのタイムズ・スクエアやロンドンのソーホーを思い出させた。いくつもの顔を持っている東京は本当に変な魅力がある。


9月18日(土)参加者が侍になったり動物になったりして諏訪湖を走ろうというイベント<諏訪湖ジョイジョグフェスタ>の準備のために諏訪に向かう。外苑で高速道路に乗ると、いきなり“調布~相撲湖渋滞35km、2時間以上”の表示。大月までだと“3時間以上”となっている。少し遅めに出発すれば大丈夫だろうという予想は外れ、UFOを流しながら中央高速をブッ飛ばそうというアイデアも実現できず、いきなり気が滅入ってしまった。でも、1時間ほどすると、車は流れ始め、マイケル・シェンカーがギターを弾きまくるUFOが気分をハイにしてくれた。東京を12時15分に出発して、浜の湯到着が3時20分だから、時間的にもまあまあというところか。到着後は、明日の本番前にスタート地点やライヴ・イベントの現場をチェック。無事に打合せもすんで、6時からの小宴会も盛り上がった。場所は上諏訪駅に近い“四季”。2年ぶりぐらいだったが、感じのいい夫婦が本当においしいものを作ってくれる。“四季”の後は定番の“桃源郷”。入っていった時にかかっていたボブ・マーリイ&ウェイラーズのライヴがぴったりとはまり、その後はジェームス・ブラウンの名盤「ソウル・バラッド」をかけた。「トライ・ミー」と「マンズ・マンズ・ワールド」はいつ聞いてもぐっとくる永遠の名曲。気持はハイになっていったが、流石に前日の飲み過ぎがたたり、遊体離脱のように身体はカウンターに坐っていながら、魂は抜けていってしまった。


9月19日(日)飲んだ。本当によく飲んだ。4時過ぎに猫ひろしとポカスカジャンのミニ・ライヴを最後に無事<諏訪湖ジョイジョグフェスタ>が終了してから、まずは“桃源郷”をオープンして猫ひろしさんとポカスカジャンのメンバーとハートランドをかなりのスピードで飲み、5時半からの打上げ宴会では真澄の“浮城”をたっぷりと飲み、また“桃源郷”に場所を移し、12時過ぎまでかなりの量の赤ワインを飲んだ。観客が大爆笑していたライヴの延長といったノリのおもしろい会話と、ロックの名曲・名盤のオンパレードがピッチを上げたことは間違いないし、イベントの成功がスタッフたちをハイにしていた。そして11時過ぎ頃から「テン・リトル・インディアン」の歌詞のように1人抜け、2人抜けしていったが、最後には5人でピンク・フロイドの「狂気」を5.1サラウンドで大音響で聞いて盛り上がった。部屋に戻ってからはCDラジカセでルネッサンスのライヴ。深夜の諏訪湖は昼とは全く違うミステリアスな雰囲気で、アニー・バズラムの声とぴったりと合っていた。


9月20日(月)中央高速の上りが早くから渋滞するらしいと聞いて、朝食をすませてすぐに東京に向かう。途中、2、3キロの渋滞が2ヶ所ほどあったが、3時間かからずに自宅に到着、昼のニュースを見たらもう小仏トンネルで19キロの渋滞と報じられていた。そして午後は不在中の新聞をチェックし、少しかたづけものをしてからNHKハイビジョンで「新夫婦善哉」を観る。豊田四郎監督、森繁久弥主演の昭和38年の映画。その年の芸術祭参加作品と画面に映し出されたが、今だとその内容があれこれ言われて“芸術祭参加”とはならないかも知れない。昭和12年の大阪が舞台の大人の人情喜劇。久しぶりに画面で見た浪花千栄子は相変わらず魅力的だった。

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