立川直樹の内省日記

2010年9月14日(火)

9月10日(金)3週続けて“週刊文春”と“週刊新潮”を購入。メインの記事は小沢vs菅の民主党代表選だが、両誌とも映画評のページがおもしろかった。おすぎはやたらと評判がいい、というかよすぎる感もある「悪人」に星2ツ、“新潮”の方はイニシャルがSの人が「トラブル・イン・ハリウッド」に何と27点。どこか覗き見感覚で開く週刊誌はこういうところがおもしろいと思う。そして日中はWARなどの懐かしい音楽を聞きながらかたづけものをし、気分転換も出来たが、夕方、渋谷の“たばこと塩の博物館”で催された<特別展・和田誠の仕事>の内覧会とレセプションで、和田誠さん本人はもとより、宇野亜喜良さん、篠山紀信さん、安西水丸さん…といった人達と一堂に会せたのも楽しかった。夜は何と応募したら当選してしまったハイネケン5L缶を2つそろえて事務所で、三島夫妻、星野クン、鈴木さんという気心の知れたメンバーとビール・パーティー。酒宴は4時間を超えたが、数日前の金沢の夜同様“遠くの親戚より近くの他人”という言葉がとてもリアルに感じられた。1955年から69年までのヒット曲が網羅された“リズム&ブルース・セレクション”もぴったりとはまり、話もブルース・スプリングスティーンからプロレスまで縦横無尽に飛び回り、本当に楽しい夜になった。


9月11日(土)ほぼ丸1日、オーチャードホールで“JET STREAM”コンサートのためのリハーサル。プロデュースだけでなく、構成・演出も含めて全て自分でというのは久しぶりの気がするが、一切MCはなし、書き台本と生の音楽だけで作り込んだコンサートは中々の仕上がりだと自負できる。cobaやTOKU、溝口肇…といった旧知のミュージシャンたちもコンセプトをよく理解してくれているので、リハーサルも順調。全編を通したことで出演者もスタッフも全体像が把握できたようだが、進行台本は通常の本の形式にはならず、1枚の大きな表になってしまった。あとはスコアとナレーションの台本だ。時間的には予定通り7時にはほぼ終了、明日の本番のための打合せをして帰路に着いたが、夜の景色と80年代の後半、ロンドンのサイケデリック/ガレージ・シーンで人気を誇っていたジー・ピプノテックスの音楽がぴったりとシンクロした車内で、僕はこの数日で耳と目の感覚がシャープになっているのを感じた。理由はわからない。いい音楽のエナジーが身体から余分なものを取り除いてくれているような気もするが…


9月12日(日)“JET STREAM”の本番日。昼夜2回公演。観客も出演者も音楽と言葉の最良の化学反応を体感できたと思えるいいコンサートができた。昼公演が終わった時から既に再演の話が出たのもうれしかったし、公演後の簡単な打ち上げパーティーでできていた“正しい人の輪”も成功を裏付けていた。ただ“夕鶴”ではないが、こういうショーを作ると、満足感はありながら、それに正比例して疲労感は確実にある。昨日同様、きょうも帰宅してテレビを見ながら(ETV特集の「安保とその時代(4)安保に賛成した男たち」は素晴しくよく出来たドキュメンタリーだった)日本酒を飲んでいたら、いつもよりずっと少ない量で酔いが回ってしまった。


9月13日(月)“JET STREAM”コンサートが無事終了して気分は一段落。午前中は新聞の整理をしたが、横尾忠則さんが書評を書いていた「フェリーニ 映画と人生」、消える書店の問題点を書いた「傷だらけの店長」、三島由紀夫の謎に迫った「三島あるいは優雅なる復讐」などを切り抜いてファイルに入れ、ゆっくりと本屋に行きたいなと思いをめぐらす。午後は“ROCK AROUND THE CLOCK”で10月4日にopenさせるBAR“NOWHERE BOY”のフライヤーや仕込みの打合せをした後、スパンアートギャラリーで<オマージュ種村季弘展>の後期「種村季弘の漫遊記」、阿曽美術で佐村憲一さんの<竹々展>を見てから、命日に合わせて邸内を一般公開している“旧乃木邸”を見に出かける。以前から行ってみたくて、小さな切り抜きが何年間か申し送られていたが、念願かなって入ることができた邸内は妙に生々しくて何かにつかまった感じになった。夜は代官山の“花壇”で来年の2月に予定されているイベント“ひばり10DAYS”の打合せを兼ねた会食。いろいろなアイデアが飛び交い、確実におもしろいイベントになることが実感できた。そして帰宅後、夕刊を開くと、ヌーヴェルバーグの初期を担ったクロード・シャブロル監督の死亡記事。新聞やテレビは数日前の谷啓さん死去のニュースをまだ報道し続けているが、60年代にヌーヴェルバーグにどっぷりつかっていた僕にはシャブロル死去の方が重い。中学生の頃からそうであったように、やっぱり僕は絶対的少数派なのかも知れない。


9月14日(火)今週も土日続けてスケジュールが入っているので余白の1日を作る。仕事は電話だけにして、トッド・ラングレン・コンプリート・ベアズヴィル・ボックスに挑み、午後3時前からは民主党代表選の生中継を見ながら、かたづけものをしていたら出てきた1998年と99年の「噂の真相」のバックナンバーに目を通す。残念ながら今はもうない雑誌につめこまれたドロドロの人間関係と通常のメディアが扱わなかった暗部が代表選はもとより、その周辺にある政治情況とリンクして、不思議な化学反応が起きる。また、演説や政治家のコメントに漂うどうにもならない古臭さ。どこかで時計の針が止まっている感じもする。

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