立川直樹の内省日記

2010年8月20日(金)

8月18日(水)昨日も朝から2本映画を観たが、今日も朝から試写。本谷有希子・原作の※23「乱暴と待機」。しばらく前に青山円形劇場で“劇団、本谷有希子第15回公演:甘え”を見た時に、その独特の感覚に一発ではまってしまったが、「甘え」にも出ていた小池栄子や浅野忠信、美波、山田孝之の4人が奇妙なアンサンブルをくりひろげる映画も大いに笑わせてくれた。午後はTOKYO FMのスタジオでいよいよ来週末に迫った“MUSIC MEETS ART”のリハーサル。山中千尋トリオに稲垣潤一がゲストで入るためのリハーサルだったが、「ロング・バージョン」や「ドラマティック・レイン」といった稲垣潤一のヒット曲が見事にジャズ化していくプロセスは立ち会っていても楽しく、ふと口にしたアイデアがすぐに具体化していくのもうれしかった。そしてリハーサルの合い間に他のプロジェクトの打ち合わせも3つこなすという、我ながら感心する働きぶり。そうすると、自分では意識しなくても疲労は身体をむしばむもので、夜の9時過ぎには睡魔に襲われ、ベッドに入ってしまった。テレビのニュースでは、もう随分前に三枝成彰さんたちと訪れたことがある瀬戸内海にある香川県籍の佐柳島沖に海上保安庁のヘリコプターが墜落し、4人が死亡したという報道。映像を見ている時に、島の防波堤に数え切れないほどの猫が並んでいるシュールな情景がフラッシュバックしてきた。海岸のお墓とともに…

※23 本谷有希子自身の作・演出で2005年に上演され、その後小説として刊行された男女4人の淫靡で滑稽な物語を、「パビリオン山椒魚」「パンドラの匣」などで、独特で多彩な映画技巧が評判を呼んだ富永昌敬が映画化。ちょっと普通じゃないテイストの作品になっている。公開は10月9日。(メディア・ファクトリー)


8月19日(木)午前中と午後一番で2つ打合せをすませ、3時半から新橋のTCCで※24「ANPO」の試写を観る。今週はよく映画が観られていて、今日で試写も3日連続ということになるが、安保から50年、日本で生まれ育ったアメリカ人リンダ・ホーグランドが“安保条約と日米関係”を問い直すドキュメンタリーとなると、客席を埋めている人たちも通常の娯楽映画の客層とはぐっと異なる。阪本順治監督の現場で会話したこともあるリンダが撮った映画は中々の出来映え。日本の熱かった時代をヒリヒリと感じることができたが、視点は勿論編集も音楽も素晴しかった。夜は浅草の“米久”で石坂さんと“MUSIC LIFE”の編集長だった東郷かおる子さんたちと会食。洋楽の黄金時代の話で大いに盛り上がり、様々なアーティストの顔やライヴの場面がフラッシュバックしてきた。“米久”の後は“アンヂェラス”に寄り、定番のフルーツポンチ。六本木から1時間と離れていないのにやっぱりこの町は別世界だと思いながら、地下鉄に乗って浅草をあとにした。昨日から読み始めた「新説・東京地下要塞~隠された巨大地下ネットワークの真実」にはまっていることもあって階段を歩いている時から、もう冒険旅行の気分になってしまった。

※24 中村宏や横尾忠則、石内都から会田誠まで戦後日本を代表する現代アーティストのインタビューや作品、沖縄などの映像で構成された秀逸なドキュメンタリー。公開は9月18日。(アップリンク)


8月20日(金)昼間は“ライナーノーツ”をまとめるための作業。夜はBSフジの「プライムニュース」に生出演。シーナ&ロケッツの鮎川誠さんや武蔵大学の南田勝也さん、フジテレビ解説委員の小林泰一郎さんと“ロックンロールは死なない”というテーマで語り合う。全員がロック好きで、司会の八木亜希子さんの進行も手際がよく、2時間自分でも楽しめた。視聴者からのメイルも熱っぽく、また的を得たものが多く、昨夜の会食の話がそのままシンクロしていたのも偶然とはいえおもしろかった。南田さんが高校生の時、僕が書いた「ジョンの魂」のライナーノーツにうなづかされたという話もうれしかった。だから、スコーンのダブ・アルバムを聴きながら、東京の夜景の中を気持良く走り、どんなものかと覗いてみた“ageHa salon”のオープニング・パーティーはロックのリアルの対極にあるような世界。80年代のイケイケのノリもなく、地味な印象で店内を1周しただけで外に出てしまった。そして帰宅して夕刊を開くと、<さよなら…HMV渋谷>の小さな記事。明後日に20年の歴史に幕を下ろすHMVだが、現物主義の僕としては本当に切ない。ラストには何が店内に流れるのだろう。

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