TIME WAITS FOR NOR ONE~立川直樹同世代トーク~

第7回 前編

自分が今、やりたいこと、行きたい場所、見たい映画・・・をいつもくっきりとイメージしていよう─ 彼がそうしているように ─。
立川直樹とつきあい始めてからずいぶん経ったある日、ぼくは唐突にそう思った。

想えばかなう。
街に出ればそこからまた何かが始まる。

でもなかなかそうもいかなくて・・・とこぼすぼくに、あのとてつもなくワガママで、しかしcuteな彼は、今日も、笑ってこう言うのだ。

時は誰も待ってくれない・・・。

「Time Waits For No One~立川直樹同時代トーク~」第7回は西麻布のバー、“オールド・レイラ”での立川さんとの対話をまとめた。
随所から立川直樹の“人生の達人ぶり”の片鱗を垣間見ていただければ、とてもうれしい。

T=立川直樹 M=三島太郎)


M: このところ、どんどん(tachikawanaoki.comの)アクセス数が伸びてますよ。
T: あ、そう。
M: これまでもちょっとずつは伸びていたんだけど。
見てくれている人も若い人から立川さんと同年輩ぐらいの人までいろいろなんだけど、手放しで誉めてくださる方が多くて・・・。
(“オールド・レイラ”のスタッフ。以下、S 何にいたしましょう?
T: 何か甘めのものを飲もうかな。
S: フレッシュ・フルーツを使ったフローズン・カクテルでも・・・。
T: いいね、それにしましょ。
M: ぼくはジン・ソーダを。


中村勘九郎 VS ミック・ロック

M: 平成中村座N.Y.公演、すごく評判が良かったみたいですね。N.Y.タイムスでも絶賛されたり・・・。
で、また、その公演を立川さんが「翼の王国」誌で取り上げるために撮影:ミック・ロックで取材しに行った。毎度のことながら、すごいタイミングだなぁと思うんですが。
T: 昔からそうなんだけど、タイミングとか間とか、まあタイミングと間って同じかもしれないんだけど、すごくそういうのが良いなって自分でも思うね。
今度も、結果的にランナーためてスリーラン打ったみたいな感じになったんだけど、最初は「翼の王国」で歌舞伎の特集をやりたいっていう話を、(編集長の) 粕谷さんがぼくにしたの。で、ぼくは歌舞伎のことだったらっていうことで、いつも親しくしてもらってる大沼さんのとこに相談に行った。そしたら大沼さん が、「いや、実は夏に平成中村座をニューヨークでやるんですよ。立川さんが翼の王国でやるんだったら・・・」「それ、いただきです!」っていうことになっ て。
M: 大沼さんって?
T: 歌舞伎座の総支配人ですよ。松竹の演劇部のトップで。
M: そうなんですか。
T: まあ、伏線としては金毘羅歌舞伎(を)やったり、前にぴあの矢内さんと一緒に、歌舞伎がちょっと低迷してた時期に「歌舞伎計画」なんてプロジェクトをやってたこともあったりして、そこにはある信頼関係とかがあったことが前提なんだけど。まあ、そういう風に言ってくれて。
で、去年ちょうどあの写真美術館の展覧会でミック・ロックが来た時に、ぼくも会いたかったし、彼も会いたいって言って会ったときにいろんな話をしてて、「何かやりたいね、一緒に」って言ったら、ミック・ロックが「俺は、歌舞伎を撮ってみたい」って言ったの。
ぼくは自分の頭の中で、また何かのタイミングの時に大沼さんに頼んで撮れればいいなって思ってたのね。で、ちょうどニューヨークだし、勘九郎さんだしって言って、ミッ  
ク・ロックが空いてたら、ミック・ロックに撮らせたいってパッとひらめいて、粕谷さんもそれはすごい面白いって言うんで、連絡を取ったんだよ。連絡したらそしたらちょうどタイミングがピッタリで(スケジュールが)空いてて、1も2もなくやるって言ってくれて。
M: そのはまり方って、すごいですね。
T: それで、ギャラについてもこちらが提示する範囲内で、彼はagreeしてくれたのね。
それで、ぼくらが行く前の小屋の建て込みのとこも撮っといてくれとかって言っておいたら、彼は撮っといてくれてて。
で、(ぼくらが)着いた日にゲネプロがあって、撮りに行ったの。
そしたら、ミック・ロックは舞台の上の勘九郎さんに向かって、もう、獣のように(撮りに)行くんだよ。何度も他のカメラマンに注意されて、「OK、OK」とか一応言うんだけど、もうその時だけなの。結局もう、撮りたいように撮るんだ、っていうノリなわけ。
そうこうするうちに、周りも彼がミック・ロックだっていうのがわかったから、文句言わなくなっちゃって・・・。
M: なるほど・・・。
T: で、(ゲネプロが)終わって、ミックは、「俺は虎と一緒だ」とか言ってるわけさ。それで、歌舞伎、初めて見てどうだったの?って聞いたら、「ストーリーなんて全然わかんないけど、「セックス・ドラッグ&バイオレンス!」って言って感動しちゃってるわけよ(笑)。
それでその日はそのまま帰ったんだ。そしたら大沼さんが、勘九郎さんに写真をちょっと見せたい、と。
それは本番の17日、19日の昼間にバックステージを全部撮りたいって言ったらそれもOKが出て、わざわざ撮影スペースも作らせてくれたっていうのもあったんで、大沼さんとしては(勘九郎さんに)見せたいっていうことだったんだね。
それで10枚ぐらいプリントしてきて見たら、まだ全然その時は、デジカメから出して自分でカラー調整とかする前の段階だったんだけど、すごいわけ、アングルが。
勘九郎さんはそれ見て、(ステージの上から見て)最後の見得切るところはあんたに向かってやったんだよ、みたいな感じで、もう(ミック・ロックと)気が合っちゃってるわけよ。
これはもう絶対上手くいくな、と思ってたら、その日、バックステージに居た若い役者も(ミック・ロックの作品が使われた)クイーンのなんとかを持ってて、 「ミック・ロックだ! 撮ってください」って感じで、むちゃくちゃ盛り上がっちゃったりしてる。ミック・ロックは今度そのバックステージの様子を見て、最 近のロックって言うのはもうみんな普通になっちゃったけど、(この公演には)デビッド・ボウイのジギー・スターダストのツアーの頃の熱気を感じる、みたい になっちゃってさ(笑)。
ぼく自身ももう、楽しくなっちゃって。
それでその後、撮影も終わって、勘九郎さんがほんとに自分から、襲名の時に日本に来て撮ってほしいとかいう話になったり、ミックは、以前、デビッド・ボウ イの変身した過程も撮っていて、「変身」ていうことにはやっぱりすごく興味を持ってるんだ。それで、早いうちにデビッド・ボウイと勘九郎の2ショットを自 分で撮って、「メタモルフォーゼ」みたいなタイトルで、写真展のワールド・ツアーをやりたいみたいなことを言い始めて、勘九郎さんも、「俺、何でもやる よ」みたいになって盛り上がってる状況だし。とにかくすごくいい感じだった。
芝居もすごく良くてさ。さすがだなと思ったね。ツボの心得方とか、うまい。そういう意味では、6泊8日だったけど、充実してて楽しかった。
M: へえ。そのミック・ロックが撮った写真が翼の王国に載るんですか?
T: うん。11月号ね。
M: それは楽しみですね。じゃ、ニューヨークは今回は6泊8日で、それに尽きたって感じですか。
T: そうだね。あと、だから空いてる時にイサム・ノグチ・ミュージアムに行ったら、思ってた以上に良かったね。2回行ったんだけど(笑)。展示の仕方もぼく好みで。
それから全然知らなかったんだけど、1947年とか50年ぐらいに、マーサ・グラハムのダンスの舞台美術とか衣装とか、イサム・ノグチがやってるんだよ。
その舞台美術も残ってて、その時のビデオ・・・まあその時はもちろんビデオはないから、8ミリか16ミリに残したのが、ビデオになってて、インスタレーションになってるんだけど、そのインスタレーションをやってるのがロバート・ウィルソンがやってるんだよ。
今、ニューヨークの街自体は昔に比べて毒がなくなって全然つまんなくなっちゃったんだけど、やっぱりなんかそういう美術館とかそういうところに行くと、底力を感じるよね。
M: じゃあ、良かったですね。
T: うん、良かった。それで行きはもう飛行機に乗ってご飯食べて、ニューヨークに着くまで爆睡してたんだけど、ニューヨークでは、夜もそんなにすごく は遅くならない日が多かったから、帰りは飛行機の中で映画3本、見て。見れてなかった犬童一心の「死に花」見て、あと、メグ・ライアンの「アゲインスト・ ザ・ロープス」っていうのがすごく面白かった。ボクシングの女性プロモーターの話なの。あと、「ミラクル」ってさ、カート・ラッセルがアメリカのホッ ケー・チームの監督になって、オリンピックでロシアを破るって言う、「スポ根もん」なんだけど、結構いい。

最近の映画

M: 映画と言えば、こないだの永遠の質問で、是非これは見て欲しいとおっしゃった「69」についてなんですが、その見どころというか、監督のこんなところが素晴らしいと思ったみたいなお話を。
T: あの、久しぶりに映画にリズム感がある。だから、誰もそんな比較はしないだろうけど、ぼくはまあ、一緒に仕事をしてたからそう思うっていうのもあ るんだろうけど、(李相日監督は)ちょっと伊丹さんっぽいんだよね。演出のくどさとかディテールのこだわり方とか。普通だったらこだわって真面目になっ ちゃうところが意外とアバウトな感じが良いなって感じがすごくする。
M: 映画としても良くまとまってる?
T: あの世代の人がああいう原作もので撮って、縛られてなくて、自分のキャラクターがちゃんと出せてるって、なかなか珍しいんじゃないかな。
M: ほかに、まあ、今月ここしばらく見た中でこんなのは良かった、これはちょっとどうかなあっていうのは?
T: いろいろ見てはいるんだけど、自分の関わった「The BLUES Movie Project」の中のマイク・フィギスの撮った「レッド・ホワイト&ブルース」が、字幕が入って改めてもう1回見直すと、やっぱりすごくいいわけさ。
それで最近のCGショーみたいな映画を見ると、一体なんなのかなぁとか思ったりするんだよね。最近の映画は、なんかつまんないなぁと思ってたら、2週間ぐ らい前の新聞に、双葉十三郎さんの取材記事が結構大きく出ていて、で、双葉先生が、倒れて、何かちょっと病気しちゃったんで3年くらい試写に行ってないん だけど、でもそれを車で偉そうに行くのは厭だって言ってる感じもすごく好きで。
でも、(双葉先生は)ビデオとかDVDとかで見ると、20世紀で映画は終わっちゃったんじゃないかと思う、と(言ってる)。最近の映画はもう、CGショー で、「CGショー」っていうのは双葉先生が言ったんだけど、そういう映画と自分が考えている映画とは一線を画しているっていう風に話してるのね。
それはなんかすごくその通りだなとぼくは思って。
それは良い悪いとか、それが映画として正しいとか正しくないとかじゃなくて、テレビで予告編が流れてるのを見ても、例えば「スパイダーマン」って、映画じゃなくてぼくからするとゲームみたいなんだよね。
M: 確かに。良くも悪くも非常にテレビゲームっぽいですよね。
T: そうすると、キャメロンが前回言ってた、「今聞いてるもんが新譜なんだ」っていうのと同じようなことが映画にも言えて、良いものは時間とか関係なくて・・・っていう気がすごくする。
ロックも、っていうか音楽も、やっぱりラップものとか、今、チャートで流行っているものって、決してぼくは否定する気はないし、なんかこの、昔が良かったって言う変なノスタルジー爺いにはなりたくないんだけど、なんか、ね・・・。
曲の良さとか、そこにあるピュアなものとか考えていくと、R・ケリーがいいって言っても、じゃあオーティスのほうが良いだろうって言いたくなっちゃうみたいな。決して後退ではなくてね? そういうものがあるんだよ。
M: それはそうですよね。
T: 確かに、たとえばちょっと前で言えば「トーク・トゥ・ハー」は良かったとか、「耳に残るは君の歌声」が良かったとかいうことで言うと、最近、あのクラスのものはない。
まあ(新作を)一時ほどは見れてないんだけど、ある程度は見てて「ヴェロニカ・ゲリン」も見たし、「珈琲時光」っていう候孝賢の新作も見たんだ。
(「珈琲時光」は)期待はしてたんだけど、あまりおもしろくなかったし、こういうことじゃないんだよなって思っちゃったんだよね。それがなんかベネツィアに出るって言われても、ああ、そうなのっていう感じしかなかったりするわけよ。
で、そういう時に、「レッド・ホワイト&ブルース」に、字幕が入りましたっていうんで、チェックがてら見た時に、ドキュメンタリーなんだけど、ドラマがすごくそこにあるんだよね。それで、ちょっとわかんなくなっちゃってさ。新作とか、メジャーの作品とか。
やっぱり、「シュレック2」とか少なくともぼくは見たくないんだよな。
M: うーん。
T: なんかアニメと人間が合体したとかって、そんなことばっかり言われてもなぁって(笑)。

「弾ける」とか「歌える」ってことは素晴らしい

M: ピナ・バウシュって、結局ご覧になったんでしたっけ?
T: ぼくは見てないけど、まあ、ちょっと今週月、火で(夏木)マリさんと会う機会があって、マリさんが「行った?」っていうから「行ってない。あんまり行く気しなかった」って言ったら「ひどかった」って(笑)。
M: どっちをご覧になったんですか?
T: わかんない。
M: ぼくは新作の方を見たんですけど、ラストのところ以外、あんまり良いと思えなかった・・・。そういえば、“ロック・オデッセイ”のザ・フーがすごい良かったんですよ。
T: それはなんか、皆、良かったって言ってるね。
M: ぼく知らなかったんだけど、ドラマーがザック・スターキー。で、キーボードがラビットっていう、元、フリーでキーボード弾いてた人で。
T: ああ。フーって一時、サイモン・カーク、入れてたもんね。
でも、良かったっていうのはわかるし、(ぼくは)写真でしか見てないんだけど、なんか、あんなダンガリーのシャツ着たロジャー・ダルトリーなんか見たくない(笑)。
M: それはね・・・。最初に、結構、「えっ?」と思いましたよ。変な、なんかおっちゃんみたいなシャツと眼鏡で。
T: そうでしょ? 厭なんだよそういうの。
M: それは思った。
T: それだけで行かなくて良かったなって思うくらい、やっぱりぼくはロックの人が意図的になんかよれた雰囲気を演出するのは好きなんだけど、ダンガリー、七三になっちゃうのは好きじゃなくて。
だから、クラプトンもジャージもどきで舞台に出てきて、すごく頭っからいい人で、「ハロー」とかって始めちゃってブルースやってるよりは、1回目か2回目 に来た時の、ちょっとロング・ヘアーで白いスーツ着てひげ生やして、それで何か客に向かって「ヘイ・ジャップ!」とかって言ってる時の方が好きだったの、 毒があって。
結局、フーが良かったっていうのも、それは演者としての良さであって、決して、(昔の)毒を放ってるフーではないと思うんだよ。
たしかにそりゃあさ、ピート・タウンゼントとロジャー・ダルトリーが揃って、歌ってギター弾いたら、そりゃあ、そのへんのちゃらいモンを見たり聞いたりしてた人からしたらすごいと思うよ。
そういう意味で言えば、ぼくさ、最近「歌え、ジャニス・ジョップリンのように」っていう、映画は見てないんだけどサントラが出たんだね、で、テン・イヤーズ・アフターとか入ってるんだけど、車の中で聞いてたらすごかった(笑)。
M: ああ、そうですか。
T: やっぱり(ちゃんと)「弾ける」とか、「歌える」ってことは素晴らしいんだよ。だって、「レッド・ホワイト&ブルース」の中で、トム・ジョーンズが歌って、ジェフ・ベックがギター弾いてる「ラブレター」なんて最高だもん。
M: そんなのあるんだ。それでね、その、ロック・オデッセイの時、フーがトリ前で、エアロ(スミス)がトリだったんですよ。で、エアロ、やっぱ見てら んなかったんですよね。すごくそれっぽい格好でアクションも決めてて、音だって別に何が悪いっていうわけじゃないんだけど、フーと比べるとテンションが違 いすぎた・・・。
T: だからさ、前も話したけど、(エアロスミスは)いいバンドだと思うんだけど、結局はストーンズが休んでいる間に上手く地位を獲得したバンドだから、そこで、フーっていう、ストーンズと並ぶバンドと一緒に出たりすると、ばれちゃうんだよ。
M: すごくそういう感じがした。
T: だからホントに、エアロっていうのはストーンズだからさ。「擬似ストーンズ」だから。そこで、フーっていうのは、日本ではどういうわけか評価低い けど、「ビートルズ」「ローリング・ストーンズ」「ザ・フー」だからさ、イギリスの3大バンドは。その本物が出てきちゃった時に、やっぱりそりゃ(エアロ は)、勿論、きっちりとレベルはいってるバンドなんだけど、すごいしょぼく見えるはずですよ。
M: そうなんですよねぇ。
T: でもやっぱりそのぐらいのことがクリティックとして出てこないじゃない? それが今の日本のロック・ジャーナリズムとか、そういうのの現状なのかな。
M: 半分笑い話で、どこかのテレビの情報番組で“ロック・オデッセイ”を取り上げて、「稲葉浩志の登場で会場は一気に盛り上がりました」って言ってそれで終わっちゃったっていうすごい話があって(笑)。
T: そんな程度でしょ。
M: 今、現役のバンドで他にあるんですかね? そういう、ビートルズ、ストーンズ、フーみたいな意味で。
T: ストーンズは、この前の武道館見たときに、今だにすごいなと思ったし、デビッド・ボウイもすごかったし、この前のね。ちょっと前のロキシー・ミュージックもすごかったし、その1年前のブライアン・フェリーのソロ・ツアーもすごかったし・・・。
ブライアン・フェリーとクリス・スペディングの「イッツ・オンリー・ラブ」なんかすごく良かったよね。
M: なるほど。
じゃあ、そこまではいかないとしても、近いところでこのライブはきっといいぞ!みたいなのがあったら教えてください
T: 9月だとカサンドラ・ウィルソンだね。ブルーノート(東京)でやるんだけど、CDも最高だったし。
あと、フェルナンド・ソーンダース。
M: ルー・リードのバンドの?
T: そう、クアトロだったかな。行けたら一緒に行こうよ。

大人たちが遊ぶ・・・夜

M: そう、七夕前夜の「The BLUES Movie Project」、ホントに朝まで飲んじゃいましたね。
T: あれは、今回のプロジェクトに絡めて、東京の夜の大人のエンターテイメントっていうのを、作りたいなぁと思ったんだ。だから、(映画が)8/28 からヴァージンシネマで始まりますって、なんか地味にひょろひょろってやるんじゃなくて、東京の夜って捨てたもんじゃないよ?なっていうのをやろうと思っ たのよ。
それで映画が7本あるから、7軒のバーに「皆、ブルース好きだよね?」って言った時に、ミックがやってくれるんだったらやるよっていって、皆がなんかお金 抜きでやったのが、すごく、ずっと自分が遊んできた東京っぽかったし、そこに(渡邊)美佐さんとか、木滑さんとか、ユーミンとかが来てくれて、その人たち が夜中の2時ぐらいまで“0603”とか“アムリタ”とかをハシゴして、“レッドシューズ”まで行って飲んでるって、すごくいいじゃない?
若いやつに、「コンピュータの画面なんか見てないで外に出て遊べよ」って言いたいのはそういう時なんだよな。
M: 立川さん、すごい楽しそうでしたもんね、あの時。
T: 楽しかったもん、だって。
M: ぼくも1時頃に「今日は帰りますよ」って(立川さんに)言ったら、「おまえ! 今日は朝まで居ろ。いいな?」で、結局、ずっと居たし、朝方には飯田さんが逃げようとするんだけど逃げられないもんで、「立川さん、そろそろ帰りましょ う!」って言っても、「まだいいじゃないか」とか、「あと、15分!」とか(笑)、ほとんど、日が暮れてお母さんが呼びに来てるのに家に帰ろうとしない子 供のようなあの姿・・・。
T: 結局やっぱ、夜が好きなんだね。
M: ねぇ(笑)。
T: 昼間が嫌いなわけじゃないんだけど、夜、遊んでるのは性に合ってるの、とことん。
M: まだまだ続きますかね、夜が好きなのは?
T: 我ながら強いよなぁ。それに、いろんな意味で今の東京は面白いかもしれないよ。
M: ああいうお店が?
T: お店だけじゃなくて、若い子達とかも含めて、なんか、探してる感じがするんだよ。現状に満足してないっていうか。そういう人たちが出てきているのがすごくいい。正しい気がする。
M: へぇ~。じゃあ、あんまりネガティブな感じは持っていない?
T: うん。だから、外に出ない人たちのほうが危険だと思う。そういう人たちに対しては、非常にぼくはネガティブっていうか、なんか文面とかそういうものを見ててもしょうがないだろうってすごく思う。
だからぼく、“PB”なんかに溜まって、あそこでアル・クーパーが流れてきたりなんかした時に、「やっぱ音楽っていいよね」って当り前のこと言ってる人たち、好きだもん。
M: なるほど。
T: だって同じぐらいの世代で、銀座のクラブで、─別に銀座のクラブに恨みはないけど─多分、“PB”にいるのの、20倍ぐ らいの金払って、ね? だって“PB”って2人ぐらいでちょっと飲んで1万円ぐらいだとしたら、銀座だと20万ぐらい払っちゃう日ってあるわけじゃない?それで、話もろくにわか んない、どっかのアーパーな女のヘルプみたいなの何人かつけて飲んで、別にそこになんか色事があるわけでもないのに、そんなことしてる人もいるわけ。
それだったら、正しいロックをきいたほうが─ジャズとか、な─よっぽどいいと思うんだよ。そういうのも飽きたから女に行くかって いうんだったらまだいいんだけど、それもなくて、銀座に行って夜遊びしてるつもりになってる大人にはなりたくないなと思う。なりっこないんだけど。
M: あれって擬似恋愛っていうか、ままごとっぽいですよね。
T: ままごとにもなってないだろ。ままごとだったら風俗でしょ?
M: ・・・ああ。
T: むしろね。
M: わかんないんですよね。だから、銀座とかでも、ものすごくたくさんお金を使えば楽しいのかなぁって思ったりもするんだけど。
立川さんはそうじゃなくても周りにはそういう方、いらっしゃるでしょう?
T: いるけどね。でも今は少なくなったよ、そういう人も。
 前に1人、豪快な社長が居て、もう夜になるととりあえず、飯倉の“キャンティ”で飯、食ってるわけ。それで銀座に行って・・・。で、一度、その人に “キャンティ”でご馳走になった時にぼくがワインを選んだんだけど、そういう時にあんまりバカ高いワインを頼むのも下品だなと思ったから1万8,000円 ぐらいのワインを頼んだの。そしたらその社長が気に入っちゃって、しばらく後の深夜に、今度は銀座の女の子やなんかたくさん連れて“キャンティ”に行った ら「立川さん、この前のワイン、あれうまかったよな?」って言って(そのワインを)ガンガン頼むわけよ。あーあと思ってたんだけど、言っても聞かないから さ。
そしたら翌日電話がかかってきて、「立川さん、ぼく、昨日、“キャンティ”で何かしたかな?」って言うわけ。
M: へえ(笑)。
T: どうしたんですか?って聞いたら、「勘定が48万円だっていうんだよ」って(笑)。
M: アフターで48万円ですか(笑)。
T: それとか、もうしょっちゅう銀座のクラブに行ってたんだけど、50歳前ぐらいで、ある日突然、スキーに目覚めちゃった人とかね。あれは、年とってから何かに凝りだすと怖いなぁと思ったね。
その人が行ってた店、潰れちゃったからね。
M: ほんとに?
T: だって、その人はもうスキーにはまっちゃって、店には一切行かないし、グループの幹部とかにも「おまえらもあんなとこ行くもんじゃない」とか言っちゃうからさ。
M: (笑)なるほど。
しかし、そのお店にしてみれば悪夢というか、何が起こったかわかんなかったでしょうね・・・。
今、特に好きなお店とかってあります? 今すごい楽しいなぁとか新鮮だなぁ、好きだなぁとか。
T: 別にないよ。だからほんとに一ヶ月の中で東京にいる日にちが限られていて、自分の意志で店が選べる日はもっと限られてるから、そうなるとやっぱり “PB”とか“アムリタ”とか、食事をするんだったら、近いのもあるし、言ったものが食べれるっていう意味では“オステリア”は好きだし、みたいな所に帰 結してるよね、ますます。
M: ますます。
T: それは決して自分で広げたくないとかっていうんじゃなくて、なんかこう、レコードなんかと一緒なんだけど、忙しい時にちょっとなんか聞くかなって 思う時に、まずレナード・コーエンは聞いとくかみたいな安心感って自分の中にあるとすると、店を自分で選べるとなると、イタリアンも他に美味しいとこある んだろうけど、ぼくにとっては、“オステリア”に行って中尾さんと話して、シェフがぼくが来てるってわかってて作ってくれるものがすごく美味しいわけよ。
ぼくがどういうものが好きかっていうのがわかってて、たとえば「前菜はこういうふうに考えときました」とかって言われるのがハッピーな関係だと思うんだよね、店と客の。それが作れちゃったのに、それを使わない手はないなと(笑)。
M: ふーん。
T: でも誰かが違う店に連れてってくれるのは、すごくスキだよ。
M: なるほど(笑)。
T: でもさ、おととい、たまたま(“オステリア”に)丸木(※1)の パーティ(を)頼んだんだけど、その時もシェフと話して、来るお客のこと考えると、量より質で行きたいと(シェフに言った)。もちろん、予算はあるけど な。そしたらシェフも面白がって、例えば桜肉のカルパッチョとか、いろんなそういうのをやってくれたの。で、今日、丸木と話したら、皆がすごく料理(がお いしいと)喜んでた、と。
それで、そのパーティーの時、飯田もあいつにしちゃ珍しく、ぼくの目を盗んで食ってたの。それですごい美味しかったって言ってて、それが昨日、たまたま友達と一緒に、渋谷に新しくできたカフェ・イタリアンみたいな所に行ったらしいんだよ。
「ふざけてんじゃない!って思いましたよ」って言ってたよ。
M: 比べちゃいけない(笑)。
T: 比べちゃいけないんだけど、でも、その渋谷の店だってイタリアンって言ってるわけさ。比べちゃいけないんだけど、でもそこで、値段は10倍も違わないんだよ? そうしたらなんかやっぱり、音楽でも映画でもおんなじなんだけど、いいものを食べたり聞いたり見たりした方がいいじゃないの?って思うんだよ。
M: それはそうだよな・・・。
(※1) 講談社の丸木さんは立川さんと中学、高校時代の同級生で、ある偶然の邂逅以来、親しい関係が続いているとのこと。
その邂逅と“仕事の打ち合わせでもいつも互いの名前を呼び捨てにしている”経緯については、「何気ないことを大切にする仕事術」で紹介されている。

本文に戻る
次ページ

Page Top▲

  • TOP
  • PROFILE
  • 立川直樹の内省日記
  • TIME WAITS FOR NOR ONE
  • WORKS
  • ARCHIVE
  • ABOUT THIS SITE