TIME WAITS FOR NOR ONE~立川直樹同世代トーク~

第6回 前編

文中にもあるようなハード・スケジュールのせいか、ちょっとお疲れ気味のこの日の立川さんであったが、爐談のご夫婦の心尽くしの月下美人の花のスープに心も和んだ様子で、松葉ガニ、子持ち昆布、床伏し・・・といったメニューと気持ちよく冷えた白ワインを口にしつつ、音楽、映画、そして死、とさまざまなテーマについて語ってくれた。
途中ではかなり重い話も出てきたが、そこは立川直樹流。
その発想と視点の独特の「乾き」に成熟した大人だけが持つ匂いを感じることができた。
最初は、最近、加山雄三さんや夏木マリさんの書籍のプロデュース、ディレクションにも忙しい立川さんにインタビューについて聞くところから始めた。

T=立川直樹 M=三島太郎)


T: インタビューとか対談ってさ、たとえば雑誌で1ページだったら、30分やったら充分なんだよ。でも、それ1時間半やって美味しいとこ使おうってほうが、むしろ無駄で。
M: なるほど。
T: 当意即妙っていうかさ、話を聞いて答えてるところが面白いわけだから。だから、6ページって言われたら2時間くらいはやるよ、それは。でも、(せいぜい)そのくらいじゃないと、対談とかインタビューのおもしろさってないと思うの。
それであとは、長くなっちゃった時にどうするかっていうのが、今度は編集者とか編集長の判断だと思うんだよね。
それですごく覚えてるのは、前にも話した、東郷かおる子さんが編集長の時のミュージック・ライフ」で、デヴィッド・シルヴィアンにぼくがインタビューした時のことなんだ。
※「立川直樹全仕事」1990年の「JAPANが残したもの」の項参照

会った時はちょっと気取ってたデヴィッドが、話してるうちに乗り出してきちゃって、1時間半しか時間がないって言ってたのに、結局4時間半ぐらいしゃべってたんだ。
ぼくが言ったことに対して彼が「えっ?それって何?」って反応する、そのいろんなことを知りたいアート少年みたいな感じがぼくもおもしろくて。
それで結果的にすごく長くなったのを(東郷さんが)「これ、切らないで上巻下巻で2号続けてやるわ」って言ってくれたのね。
なんか、そういうほうが面白いと思うんだよ。
自分がインタビューされる側の時に、時々思うんだけど、1時間しゃべって、なんだこれは、みたいなのって結構多くて。
それはやっぱりまとめ方が上手か下手か、なんだよね。紙数が少ないんだったら、最初から20分でやりますとかにしたほうがいい。
M: うん。
T: 昔ね、森永と泉谷しげるの本を作ってた時にやった方式で、結構これはいまだに正しかったなと思ってるんだけど、泉谷って、話すと取り止めがないんだよ。話があっちこっち行っちゃって。
それでぼくとマッケンが考えたのは、ボクシングみたいにインタビューしよう、と。 「アメリカ」!とか「セックス」!とかって短く質問して、(泉谷さんが)「アメリカはよぉ」って話し始めるのを録っていくっていうスタイル。
それを3分だか5分だか忘れたけどやって、3分ぐらい休んで、また次に行くっていうふうに決めてやったんだ。もちろん多少は贅肉を取ったりするけど、基本的には5分(のしゃべり)だから、それで結構(文字にすると)、何ページ分かにポコッとはまったりするのよ。
M: おもしろいですね。
T: マッケンもぼくも、プロレスに例えれば、この試合内でおさめるにはどうすれば良いかっていうのを考えるからね。
M: インタビューの方法って、相手によっても、また全然違うんでしょうね。
T: そうだね。たとえば、話してて収拾がつかなくなるタイプの人ってやっぱりいるんだよ。
でも、今、ぼくが本を作るためにインタビューしてる加山雄三さんは、収拾がつくタイプの人なの。
そうなんだけど、やっぱり長く(話が)欲しいからっていって、ひたすらずるずる話してても人間のテンションってダメだから、例えば食事をしながら話を聞きますっていう時でも、まず食事をする前に1時間くらいやりましょうって言うわけ。
その1時間が1時間15分になっても1時間20分になってもそれは良いんだけど、やってて、自分でもテンションが落ちてきたな(と思ったり)とか、相手(のテンション)が落ちてきたなっていうのって、わかるじゃん?そうしたらそこが止めどきだったりするの。
で、「じゃぁ、ここでご飯食べましょうか」って、今度はご飯を食べながら、ちょっと違うノリの話をして、段々、形ができていくわけ。
M: 良い状態で話を聞く状況作りも大事だっていうことですね。


<インタビューは格闘技だ>
T: 昔、佐山一郎が「スタジオボイス」の編集長だった時、ぼくとトノバンと2人で、まあシャングリラっぽい対談をやってたことがあって。
で、佐山が1回インタビュー論みたいのをやった時に、ぼくは「インタビューは格闘技だ。プロレスに近い」って(言った)。今だにその考えは変わってない。
格闘技だから、相手が突っ込んでこない人だったら、客がいるわけだからある程度ドラマを作らなきゃなんない。(でも)相手がどんどんやってくれる人だったら、ちょっと振るだけでいいんだよ。
M: ふーん。2年ぐらい前に「Men’s EX」で佐山さんと立川さんが東京の遊び方みたいな話をしてたのもおもしろかったですね。
T: あぁ。佐山は相手のものを引き出す力がすごくあるんだよ。だから彼は、サッカー の方にいっても、サッカー選手とか監督にインタビューした時にすごく引き出し方が 上手い。ドラマが作れる人なんだよね。
ぼくはよく例に出すんだけど、格闘技でもさ、最近はちょっとギャグみたいになっちゃってるから問題はあると思うんだけど、アントニオ猪木っていう人がすごかったのは、格下の人とでもドラマが作れたんだよ。たとえ3分で終わっちゃうようなすっごい弱いやつとでも。
そこへいくと、長州力っていうのはドラマが作れないレスラーなんだよな。自分と同格の人とやると燃えるんだけど、強い外人だと単にぼこぼこにされるだけで終わっちゃったり、弱い奴とやるとなめちゃったり。
今は高山が良いんじゃないの? 勝つだろうなと思う時に、もしかしてこいつわざと負けたのかと思うような負け方をしちゃったりとか・・・中村に負けちゃったりとかさ。
あと、最近自分で新しいキャラクターを作ったのはやっぱり小川直也だな。
あの、ちょっとギャグっぽい「ハッスル・ハッスル」っていうのはぼくは好きじゃないけど、1年くらいで、あの「ハッスル」をキーワードに、ああいうキャラができたじゃない?その辺の(プロレスに興味の無い)女の子だって「ハッスル」は知ってるからね。
M: うん、ぼくも知ってる(笑)。
T: でも強いから良いんだよ? あれ。
弱くてあんなことやってたら魔界クラブになっちゃうもん。そこが面白いよね。
M: もともと柔道出身でなんかすごく堅いキャラですもんね。
T: 彼は、ハッスル作ったことによって、自分と戦わなくなきゃなんなくなったところがおもしろい。
M: あれはやっぱり自分を追い込んでるようなところがあるんですかね?
T: わかんないんだけどねぇ。それがあるのかもしれないんだよね。
M: 格闘技もインタビューもやっぱり性格が出るんですかね。佐山さんのインタビューってすごくこう、論理的じゃないですか?
T: 彼は要するに、プロレスじゃないんだよね。どっちかっていうとちょっとアマレスみたいな、あんまり反則がない。
でも森永とかぼくのとかになってくると、“飛ぶ”からね
M: なるほど(笑)。
T: 昨日もパーティーで会った人と「アイランド・トリップ・ノート」のこととか話してたんだけど、森永はもしかしたら天才じゃないかと(笑)。
最初のシャングリラが出た時に、今、ユニバーサルの会長の石坂さんが、(ぼくらのことを)“サイケデリックなサイモンとガーファンクル”って言った名言が あるんだけど、ぼくは割と誰とでも(対談を)できるっていうところでポール・サイモン(タイプ)なんだろうね。森永はソロか、ぼくとしかできない。(だか ら)アート・ガーファンクル。
M: シャングリラでの森永さんって、立川さんの世界の中に入って行ってお二人が混然一体となってる感じがする。
それが立川さんと森永さんのハーモニーなのかもしれないなと思うんです。
さっきの「Men’s EX」での佐山さんのケースとか、あと、今こうやってぼくがWebでやらせてもらってるものもそうだと思うんだけど、やっぱりシャングリラと比べるとかなり引いた視点なんですよね。
T: うん。キャメがまとめてるものとシャングリラとで、ぼくは別にあんまり変わらないと思うんだけど、それは音楽で言うとオスカー・ピーターソンwith 誰々みたいなものだと思うんだね。
例えばぼくがピアノ弾きだとすると、べーシストが変わって相手の出してくるフレーズが変わってくれば、当然ぼくのフレーズも変わるじゃない?同じ「Once Upon A Summertime」をやったとしても。
それと、どちらも映画で言えば、撮ってないシーンは入ってない。つまりぼくが話してないことがシャングリラなり、ここ(tachikawanaoki.com)なりに入るってことはないわけじゃない?
でも森永も、キャメロンが今やってるのと同じぐらいに、まとめる段階である程度の作為は入れてるし、話の順番を入れ替えたり随所で足りないところを書き込んだりもしている。
まあ、そういうことなんじゃないかとは思うね。
<山師 マルコム>
M: 今までインタビューした中で、この人はなんかすごかったなっていう人って誰ですか?
T: マルコム・マクラーレンだね。
M: どんなふうなんですか?
T: 15秒聞くと、5分しゃべるんだよ(笑)。
M: (笑)。
T: これはもう、インタビューとは言えない(笑)。探せばあるよ。どこかで載せよう、それ。
M: ふーん。マルコム・マクラーレンって、世間のイメージ通りのいわゆる山師的な人なんですか?
T: 山師ですよ、完全な。ホントの確信犯だよね。だから、2年位前に出たクラシック・ロックのシリーズの中にピストルズの昔のアルバムがどうできた かっていうのがあったんだけど、他のスティーブ・ジョーンズとか皆に言わせると、やっぱりもう、めちゃくちゃなんだよ、マルコムがやってることって。
M: そうなんですか
T: A&Mと契約して、とかいう顛末にしても、もう犯罪性すれすれのところでやってるわけ。
でも、彼の中では、あの時代のロックン・ロールっていうものに対する明確なビジョンがあったんだよね。そうじゃなかったら、その後のバッファローなんとかとか、パリで3枚ぐらい作った自分のアルバムみたいなものは出てこないよ。
だって最後なんか、カトリーヌ・ドヌーブとデュエットしちゃうんだから・・・。
M: へぇ~。ぼく、あの列車強盗と一緒にやったあたりのイメージが強くて、なんか、バッタ屋のおやじみたいな人だと思ってた。
T: それが、カッコいいんだよ。スーツの着方とかしゃべり方とか。
すごいエレガントで、なんだこいつはと思ったもん。あきれるぐらい・・・。

今も「テン・ニュー・ソングス」が好き

M: じゃあ、さっきお聞きした泉谷さんへのインタビューのしかたをちょっと真似して、音楽について少し聞いてもいいですか?
T: どうぞ(笑)。
M: エリス・レジーナ。
T: エリス・レジーナ? 良いんだよねぇ。すごく良い。
M: 娘さんのマリア・ヒタも最近、売れてきてますが?
T: うーん、まだちょっと格が違うんじゃないかなぁ。
M: カエターノ・ヴェローゾの新しいカヴァー・アルバム(「異国の香り~アメリカン・ソングス」)
T: 良いよね。ただ、1曲目の「カリオカ」がベスト・トラックなんだよ、これはもう、まぎれもなく。で、そこでピークに達しちゃってあとはなんとなく最後までいっちゃうところがちょっと・・・とは思った。
M: エアロスミスの「ホンキン・オン・ホーボゥ」
T: 1曲ずつは別に文句は無いよ。ただ、アルバムとしてのまとまり感みたいのに欠けて、すごく良いとかっていう感じはしなかったな。
M: 最近、プライベートでよく聞くのは?
T: 最近というか、この数年っていうことになるんだけど、やっぱり好きで聞くのがレナード・コーエンの「テン・ニュー・ソングス」なんだよね。
M: それは・・・。本当にレナード・コーエンが好きなんですね?
T: うん。やっぱり、あの声・・・。
それと、レナード・コーエンって旧作から新作に向かってどんどん良くなってる。(今のところの最新作である)「テン・ニュー・ソングス」がベストなアルバムだっていうところがすごいと思うんだよな。
それと最近では、キャノンボール・アダレイの「サムシン・エルス」を部屋で聞いてるとすごく気持ち良いなぁと思う。
アダレイの他のメンバーがマイルス・デイビス、アート・ブレイキー、ハンク・ジョーンズ・・・だからね。
M: 最近、ぼく思うんですけど、自分が新しく聞けばみんな新譜だなぁって。
T: なるほどね。
M: さっき言ったエリス・レジーナの「エリス・レジーナ・イン・ロンドン」とか、チャールズ・ミンガスの「直立猿人」とか、カーメン・マクレエの若い頃のアルバムとかがその「自分にとっては新譜」なんですけど、素直に良いなぁと思えるし、今、流行ってる音楽よりも全然楽しい。
T: そういうのはあるんだろうね。まあ、ぼくの立場としては新しい音楽もみんなに聞いて欲しいとは思うけど・・・。
そう言えば、この前、佐野元春さんと最近、じっくり話す機会があってね。話してても楽しかったし、とりあえず近々、何か一緒にやりたいね、っていう話になったんだけど。
で、話してる中で彼が「ぼくは18歳の人たちのための音楽も38歳の人たちのための音楽も、同じような売り方をしようとする今のシステムに、自分の音楽を乗せたいとは思わない」っていう意味のことを言ったんだけど、ぼくはそれって真理だと思ったね。
M: それってすごくわかります。


<さまざまな・・・死>
M: 内野二朗さん、お亡くなりになったんですね。かなりのお年だったみたいですけど。
T: ・・・76だからさ。うちの親父が死んだ歳と同じ。
M: 内野さんは永島達司さんの部下っていうことになるんですか?
T: 永島さんがいいところの坊ちゃんだったから、番頭だよね。(永島さんから)「内野、頼むよ」って言われていろいろやって、ああなっちゃった。
M: ああなっちゃったってのはビッグになっちゃった?
T: そう。・・・坂口みたいだね、言ってみれば。
M: ああー。
T: ちょっと変なたとえかもしれないけど。
M: (内野さんは)やっぱり、すごい方だったんですか?
T: ものすごい人ですよ。だってああいうプロモーター・ネットワークを作ったのあの人だし。キョードー・グループの基礎を。
M: ぼくは「この世の外へ クラブ進駐軍」でのつながりぐらいしか知らないんですけど、その他にも立川さんは内野さんとは縁が深かったんですか?
T: だってぼくなんか、さんざんかわいがってもらって、70年代には事務所どうしようかなって言ってたら、「うちに部屋があるから」って、あの青山の キョードービル(のスペース)を秘書もつけて使わせてくれて、家賃も払わないで2~3年いたりしたぐらいだからね。まあ、それは達さん(永島さん)も同じ ように言ってくれたんだけど・・・。
M: そうですか。それはそれは。
T: やっぱりああいう興業の世界って、獲ったり獲られたりだから、普通の人よりは老けるよね。今は近代的になってきてるけど、たとえば昔はアーティストが着くことを「荷物が着く」って言ってた、そういう世界だからね。  
そういう世界で、育ちの良い達さんを支えてたわけだから・・・。
M: 永島さんって、写真で見ると確かに、すごくきれいな感じの方ですよね。
T: だってお父さんが三菱系の会社の偉い人で、子供の頃、その関係でニューヨークに行く時に、女中が付いてったっていう人だから、普通の人とはちょっと違うよね。
ぼくが知ってる日本人の中でカッコ良い人ベスト・スリーに入るよ。
M: へえー。
T: まあ夜の小話みたいな話だと、名前は言えないけど超有名外人タレントがタツさんに一目惚れしちゃって、「タツがあたしと寝てくれなかったらステー ジやらない」って言ったっていう話があるぐらい。ぼくが「タツさんやったんですか?」って聞いたら「それは想像に任せる」って言ってたけど(笑)。
奥さんもきれいな人で・・・だからイブ・モンタン系なんだよ。
M: ああ、なるほどね。日本人離れしてる、と。
T: してるしてる。
M: なんか変な話になっちゃうんですけどね。
ぼく、最近、どんどん周りの人が死んでっちゃうってどういう感じなのかなぁって考えることがあるんですよ。  
ぼくも40を越えて、そのせいかなぁと思うんだけど、そのあたりを人生の先輩である立川さんに聞きたいなぁと思ってたんです。
T: それは個人差があると思うんだけどさ。
ぼくは年取った人が(死ぬ)っていうことだけじゃなく、すごく若い、自分より年下とか同じくらい(の人)とかっていうのが死ぬのを―――死が身近にあっ たっていうとオーメンみたいだけど(笑)―――普通の人よりも多分数多く経験してると思うんだよ。高校の同級生が死ぬとか、女友達が死ぬとかっていうのを ね。そのせいか、死に対する感覚っていうのが、なんか少しずれてるのかもしれないな、とは思う。
それと、たとえば映画なんかでも、ぼくは笑いとかをそこに求めないから。死とかデカダンスとか、そういうものが好きだったのね? ずーっと。 そういうこともあって、死に対する捉え方が、もしかしたら根本的に普通の人と違うのかもしれない。
これは前にも話したけど(「立川直樹全仕事」1993参照)、ある人とこんな風に飲んでて、その頃もやっぱりたくさん仕事をしてたから、「立川さんのこれ だけの仕事を支えてるものって何なんですか?」って聞かれたの。で、ぼくは「死とデカダンスかな」って答えた。ふっと、ね。それは別になにか格好をつけて 言ったわけじゃないんだけど。
ぼくの「死」というものに対する考え方っていうのは(その頃と)あんまり変わってないのかもしれない。
M: 普通の人と違うっていうと、どういうふうに違うんでしょう。

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