TIME WAITS FOR NOR ONE~立川直樹同世代トーク~

第5回 後編

2004.7.6 「The BLUES Movie Project」

T: そういう「街に出てぶつかって・・・」っていうところでいうと、今度、ぼくの発案の映画のプレミア・イベントをやるから、朝まで。
M: 「The BLUES Movie Project」ですよね。
T: そう、7/6、来るでしょ?
M: 朝までなんですか?どこでやるんでしたっけ?
T: ヴァージン・シネマでプレミア上映をして、映画が終わったら、六本木、西麻布周辺の、7つのバーが─映画が7本だから─全部、その日だけはブルースの店になってる。
アムリタ、PB、レッドシューズ・・・。
少なくともレッド・シューズは5時までだから、朝まで遊んでられるんですよ。 昨日、下見を兼ねて行ってみようって言って、アムリタで打ち合わせしてレッド・シューズ行ってPBに来たら、飯田はもうボロボロになって吐いて倒れてたよ(笑)。
M: 本番はすごいことになりそうですね(笑)。
その日、彩の国にピナ・バウシュを見に行ってるんで、終わったら駆けつけます(笑)。
T: ああ。この前ケイト・ブランシェットが、今誰と仕事がしたいかっていったら、ピナ・バウシュだって言ってた。
M: ああ、そうですか。
T: あの、ミスティックな振り付けがね。
それでさ、ダンスものと言えばベジャールの「ベジャール、バレエ、リュミエール」が、すごく面白いよ。
M: それは近日公開なんですか?
T: 夏前だね。もうすぐじゃないかな。
M: ああ、ほんとに。
T: ベジャールってほんとにエレガントな老人なんだよ。70超えて太ってて体型も悪いんだけど、なんかこう、ムチャクチャカッコいいの。
インタビューのシーンがあって、「音楽は水の流れのようなもの。ぼくはその水の中を泳いでるようなものだ」って。
監督もメチャセンスいいの。
M: 新人なんですか?
T: わかんないんだけどさ、すごくいい。
M: それすごそうですね、見たい。
そう言えば、知り合いの女性がこの「TIME WAITS FOR NO ONE」の第2回目の「ショー・ビジネスっていう意味では、極端に言えば新宿のTSミュージックで踊ってるストリッパーの女の子も、ピナ・バウシュのヴッ パタール舞踊団も同じなんだ」っていう言葉がすごく好きだって言ってて。
彼女もダンスをやってるんですけど、変なカテゴライズ主義みたいのがすごく嫌いなんだって。


クールな認識と正しい志の大切さ

T: 以前、活字になった時に妙にインパクトがあったらしいんだけど、ちょうどぼくがヴィスコンティの仕事してるときに、バウ・ワウ・ワウ(の仕事)も やってて、ぼくに取っちゃあヴィスコンティもバウ・ワウ・ワウも一緒だよって言って、それがなんか宝島で、さすが怪人・立川直樹ならではの発言って紹介さ れたんだよ。
でも本当にぼくの中ではあんまり変わらないんだよね。
たとえば小津安二郎も、熊切和嘉もぼくにとっては映画って言うことで括れば同じなんだよ。
M: (笑)「晩春」と「鬼畜大宴会」は同じってことですか。すごいな、それは。
T: それをなんか、知的コンプレックスのある人は、それは別のものだって言うんだけど、それはなんか“嘘空しい(うそむなしい)”感じがするんだよ。
M: そう言えばこないだ、小津安二郎(の作品)は子供にはわかんないっていう話をされてましたよね。
T: うん。
M: それってどのへんが、なんですかね。単純に子供が見るもんじゃない?
T: いや、見たっていいけどさ、すごく大人の映画であってさ、視点が。子供が見てもあんまり面白いはずがなくて、チャラけた、若いのが、安二郎が好き ですって、お前それ嘘じゃないか?と。あれは肌触りみたいものだとか、あの当時の大人っていいなとかって思ったりするものであって。
統計的に詳しいことを知ってるわけじゃないけど、ぼく、小津安二郎の映画って興行的に当たってたとは思えないんだよ。
M: そうですよね。
T: 当時、当たってたのは「紅孔雀」とかで、小津映画が映画会社に富をもたらしてたわけじゃないよね、きっと。
だからって小津映画に価値が無いとか「紅孔雀」の方が上だって言ってるわけじゃない、もちろん。
ただね、たとえば今年のカンヌで「誰も知らない」で弱冠14歳の柳楽君が賞を取ったっていう時に─見てないから、是枝監督がいい悪いとか そういう問題じゃないんだけど─またバカな映画評論家がさ、「これで日本映画も変わっていって、海外を見据えた映画製作が増えると思いま す」とかって言ったりするわけよ。
それってさ・・・全然違うだろう、と思うんだよ。映画って賞狙いのために作り始めちゃったらさ、観客はどこにいるんだよ?
だったらぼくは、この前キャメロンと行った「花と蛇」の方に与したいと思うよ。
M: 「花と蛇」は少なくとも産業として成立してますよね。
T: そうでしょ?だから映画は産業なんだよな。そこを勘違いしてる人たちって、非常に危険だと思うんだ。
音楽もそうなのよ。産業になりすぎるのもいけないんだけど、どっかでやっぱりそういう(産業だっていう)感覚を持ってないと・・・。
逆にそういうのが無くていいんだったら、こんなに楽な話はないぞってことだよ。
M: よく新東宝の化け猫映画があって(多くの観客を動員することで映画界を支えて)、小津映画があったんだって言い方があるけど、でもそういうことですよね。
T: うん。
今、小津安二郎が生きてたらさ、あの人って「そうだよ、ぼくなんかああいうのがあるから(継続して映画を)撮らせてもらってるんだよ」って言うような、そういう品の良さを持ってた人だと思うんだよ、きっと。
それが全部そういうものが無くしちゃって、ここからこっちのものだけが良いものだっていう物言い・・・ 小津安二郎は最高だとか、たとえば川島雄三が良いとか。違うだろう、それって。
M: いろんなシーンで「高踏派」と「現実派」の並存っていうのはあると思うんだけど、特にエンターテイメントの分野の芸術的なとこだけを切り取って、これだけが優れているって言い過ぎるのはやっぱりいびつな見方だと思う。
T: やっぱり代官山的なサンプリング文化の厭なのは、そこだけ抽出するんだよな。脈絡も何も無視して断続的にあれは良い、これは良いってやってく。その行き着くところはカフェ・アプレミディみたいな、世にも極悪なセレクション・ビジネスなんだよ。
M: ああいう良いとこ取り感覚っていうか、リスクを回避してちょちょっとつまんで無菌状態のものを作ってるようで厭な感じですよね。
T: だからあれ、バッタ屋なんだよね。
M: ね。
T: また、あれをありがたがって聞いてるやつがいっぱいいるんだよな。あれほどスピリットのないコンピレーションってないからね、気持ち悪いよ。
M: 気持ち悪い。
T: ほら、キャメにもこの前ちょっと相談した、ピエール・バルーの新しいプロジェクトをやろうっていう動きにしたって、根底にはピエールが変な崇められ方をしていることに対する、彼の周辺の人間の嫌悪感があるんだよね。
三竿さんって紹介しただろ? 彼女は本当に真剣にピエールの正しい姿を伝えようとしてる人だからね。
M: ええ。熱い方ですよね。今、どんな感じなんですか? ピエール・バルー・プロジェクトって。
T: ぼくがもうちょっとランニングみたいなものを書き込まなきゃいけないんだけど・・・。ただ、今さ、すごい勢いで社会が動いてるじゃない? で、ピ エールって単なる「ダバダバダ」の人じゃないの(笑)。「ダバダバダ」をやりながら、でももしかしたら、日朝首脳交渉とかだって、あそこにピエール・バ ルーがいたら話まとまっちゃうかもしれないな、みたいな人んですよ。
M: なんですか、それ(笑)。
T: 妙な人なんですよ。ものすごく本能的な戦略家だし、ネゴシエーターなの。だからそういうのを考えると、単純に「サラヴァ」が40周年とか、本人が70歳になっただとか、目先の、見えやすいところだけで、やっちゃあ面白くないなぁと思って。
考えてるの、いろいろ。
周りは、ほんとに立川さんはいつ企画書をつくるんだろうと思ってるんだけど・・・。
別にサボってるんじゃないのよ、いつも、ね。
M: そう言えばカンヌでマイケル・ムーアがグランプリを取りましたね。
T: あれもね、笑えるっていうかさ・・・。
デーブ・スペクタ-がすごい非難してるんだけど、まあ非難するのもしょうがないと思うけど、でも、マイケル・ムーアっていうのはあれを商売にしてるんだよ。
M: 前にもおっしゃってましたよね。
T: だけど、マイケル・ムーアもわかってるわけ。でもこんどまた、バカな奴が、あれを非常にちゃんとした政治映画だって言ったりする。
あれは商業映画なんだよ。それを曖昧にして政治映画がカンヌを取ったって社会面に記事が出ちゃったりする。もうムッチャクチャだよ。
M: ああ、なるほどね。それは間違ってるような気がしますね。
T: あれは芸能なんだよ。
M: 江戸時代のかわら版と一緒なんだと。で、あそこで、デーブ・スペクタ-の変なデッド・シリアスさが出てきちゃうところが、またおもしろい。
T: そうそう。でもデーブ・スペクタ-って、東スポのちょっと大き目のコラム、最高だよ。
M: ああ、そうですか?
T: むちゃくちゃ面白い。
M: 芸能コラム?
T: テレビ欄のとこに、週に一回かな?毎日取って毎日見てるからわかんないけど。
M: (笑) へえ。
T: デーブ・スペクタ-って、もっと評価されてもいい人だと思うな。
M: そうですね。
T: ぼくなんて、もう、すごい評価してるの。会ってこういうとこで話がしたいって思ってるくらい。
M: 高平哲郎さんの「スタンダップコメディの勉強」って本とか、あと、「放送禁止歌」っていう本の中のデーブさんのコメントを見ると、非常に真っ当だし、深い人なんだなと思いますね。
T: すごい深い。彼は。
M: その真っ当さを普段は隠して営業してるんだけど、ふとした瞬間についまじめになっちゃう、その一瞬が面白いなぁって。


T: そう、今度、日動画廊の仕事、することになりそうなんだ。
M: ぼく、アート・シーンって全然わかんないんですけど、それってやっぱりすごいことなんですか?
T: 画期的っていうか、つまり、ぼくが日動画廊の長谷川さんとシェイク・ハンズするってことは、どういうことかっていうと・・・アリス・クーパーがベルリン・フィルで歌うようなもんなの。
M: どっちがアリス・クーパーですか?
T: ぼく(微笑)。
M: それはすごい(笑)。
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