ARCHIVE:緊急日記

2006年5月11日~5月20日

May 11th(THU)
(Part1) 午後5時30分
ラジオからクイーンの「キラー・クイーン」が流れている。
ナショナル・ギャラリー・オブ・アートで観た、というか目撃した展覧会“DADA”の強烈過ぎる余韻をさまそうとホテルに戻ってからバスにつかり、本を読 み始めるが、これがまたここ2th間の知的欲望をさらに助長することになってしまう。「にほんの建築家 伊東豊雄・観察記」。前にコールハースの追跡本を 書いた瀧口範子の文章はスピード感と知性がうまく融け合っていてとても読みやすい。それにしても“DADA”のなんというおもしろさ。フェルメールもラ トゥールもグレコも全部吹っとんでしまう凄さ。物量もさることながら展示のセンスも最高。そしてナショナル・ギャラリーに行く午前中にはライブラリー・オ ブ・コングレス(議会図書館)のMUSIC Divisionでボブ・フォッシー愛用のバスローブと最愛の映画「オール・ザット・ジャズ」の脚本、オーソン・ウェルズが22歳のときに演出したオペラ 「ファウスト」の衣裳デザインの資料を目の前にひろげられて仰天していたことを考えれば、何年か分の驚きを半thで体験してしまったことになる。
ガーシュウィンの「ポギーとベス」、「ラプソディ・イン・ブルー」の手書きの譜面。ベートーヴェンとモーツァルトの手書きの譜面もあれば、見たこともない ビリー・ホリディやコールマン・ホーキンスの写真がテーブルの上にさりげなく並べられていて驚き。昨thはMotion Pictures, Broadcasting, Record SoundのDivisionでとてつもない量のSPと今までは話でしか聞いたことのない音楽や映画、TVの生の資料に驚き。デューク・エリントンとエラ の共演しているテレビショーの映像や、NBCの膨大な録音テープの中から発見されたというモンクとコルトレーンの共演ライブまで聴かせてもらい、建物同様 時間と記憶の巨大な迷路の中にはまり込んでしまったようになってしまっている。ズート・シムスとチェット・ベイカーの“I Remember April”、ジョー・ジョーンズとインドのタブラ奏者のバトルが強力だった“Caravan”……もうとても書ききれないぐらいに、ひとつでも驚きに値 するものが次から次へと降り注いでくるのである。

(Part2) 午後10時30分
ワシントンに到着して軽いランチをとり、出かけたサイラー・ギャラリーで開催されていた“HOKUSAI”展に始まった3th間に摂取したアートから音楽 に至る物量の多さというのは、50年も半ばを越えた長い人生で初めてのことと言えるぐらい。おまけにワシントンに向かう飛行機の中からホテル滞在中に読み 終えた「親父シェフ3人~フランス料理に物申す」がまた滅法おもしろいときている。ラ・ブランシュの田代和久さんが3人の著書の一人ということで贈ってい ただいたのだが、クラブ・シャングリラの料理版という趣きで、僕が今のグルメブームとか何かの類いに変だぞと思っていることを痛快に話してくれている。発 売元は柴田書店。これかなり人に薦めたくなる本だ。
機内で観た映画「プロデューサーズ」も同様。
明thは東京に向かうスケジュールだが、VH1がヘヴィメタルの特集をON AIRしているのを観ながらこれを書き、一区切りつけている僕は、やっぱり一般の社会からは確実に軌道を外れている。ピカビアからエルンスト、チェット・ ベイカーにビリー・ホリディ……そして勿論ウォーホール…。みんな社会の美しい裏側の住人だ。


May 13th(SAT)
ワシントンから13時間のフライトで成田に到着する。雨の中をそのままイタリア文化会館に向かい、ミンモ・イョーディチェの展覧会を見る。
ラ・ブランシュに向かう前には六本木のヴァイスフェルトで佐藤好彦の新作展 “1:4:9”。今度はスピーカー・システム。相変わらず実にユニークでおもしろい。
70年代の香りを残すビルもゆるくてとてもいい感じ。ブランシェではワシントンで読み終えた本が食前酒がわりで、いつもながらのおいしい料理を心ゆくまで堪能。帰りに “PB” に寄るが、さすが睡魔が忍びより、ジェットソーダ1杯でひきあげる。


May 14th(SUN)
交通博物館の最後のthを見届けに早起きして列に並ぶ。子供時代のおぼろげな記憶が展示物と重なり合う。本当に東京も変わった。11時前にはこれまた古色 蒼然たる雰囲気を漂わせるth比谷公会堂に入り、th本鳥類保護連盟の全国野鳥保護のつどいの立会い。夕方からはth比谷松本楼で愛鳥パーティに出席。夜 はBAR12でAshの極上カクテルを飲みながら不思議な時間を過ごす。


May 15th(MON)
朝、大学で2コマの授業を終えて車で諏訪に向かう。グラハム・ナッシュにエディ・リーダー。懐かしいカセットテープを流しながら2CVで200キロ、2時 間半のドライブ。新緑が美しく、ワシントンの新緑ともシンクロし時折どこにいるか忘れてしまいそうになる。2つ打合せをすませて、夜は “旬野” という不思議な店で上諏訪と下諏訪の若者たちと一緒に15,6人の宴会。狩猟好きの工務店の主人が病こうじて始めたという店で、鹿のたたきやのびる、じご ぼうなどの地物の野菜やきのこ、鹿と猪のメンチカツに驚きながら舌鼓を打つ。酒は御湖鶴の純米、純米吟醸、吟醸の飲み較べ。4時間に及ぶ楽しい時間だっ た。


May 16th(TUE)
朝7時に朝食。
2CVのドライブは快調。13時間の時差など軽々と克服している。午後はミーティングを4つこなし、夜はオーチャードホールでマリア・パヘス舞踊団の公演 を見る。世界初演の「セビージャ」。終了後、余韻を楽しもうと思い、前々から気になっていた「アモール・デ・ガウディ」に向かう。カバと生ハム、イカの墨 煮など、オーソドックスな料理のマッチングも悪くない。また1軒店のストックが増える。


May 17th(WED)
午前中は大学。
午後からミーティングと林正子のリハーサルにつきあう。夜は帝国ホテルでラッセル・ワトソンと林正子が出演するチャリティ・ガラ。天皇・皇后両陛下臨席で 行われるイベントだが、初めてポピュラーを歌うthに初めてマイクを使い、おまけにその目の前に天皇と皇后というのは中々、笑えるシチュエーションだ。
そしてth曜は常陸宮両殿下と一緒だったわけだからおもしろい1週間だといえるかも知れない。
夜は神楽坂の “弥生” で食事。鳥貝からブイヤベースまで相変わらずのおいしさ。子鮎の塩焼きなどはおかわりしてしまった。


May 18th(THU)
「ダ・ヴィンチ・コード」のプレミア試写。
やや期待はしたものの、単なるハリウッドの娯楽作品の域を全く出ていない凡作。ハンス・ジマーの音楽がまあまあの収穫か。
夜はオーチャードホールでラッセル・ワトソンのコンサート。「ボヘミアン・ラプソディ」を歌った林正子は大健闘。
終演後は “ANTI VINO” で久石譲さんと食事。シチリアの “タンクレディ” なる赤ワインが中々のうまさ。稚鮎のフリットでまた鮎を食べる。定番のはまぐりと青唐辛子のスパゲッティもおいしかった。


May 19th(FRI)
8時55分の飛行機で金沢に向かう。
“翼の王国” の取材。大好きな泉鏡花を扱って、夢のまちを描いてみようという試み。泉鏡花記念館で5時間ほど集中して仕事をする。
昼は “自由軒” 夜は “” と “二の字”。夜は手取川と初音、獅子の里でしっかりと酩酊する。


May 20th(SAT)
泉鏡花ゆかりの宿“まつさき”で取材。1週間前はワシントンから東京に向かっていた時間だ。外は雨。泉鏡花の間で短冊や初版本を見ながらまた夢の世界に入り始めている。

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