WORKS~立川直樹全仕事~

1993年 SIDESTORY 4

  

立川直樹、映画について語る(その2)

m: 『橋の上の娘』なんて、ちゃんとある種のハッピーエンドで終わるじゃないですか?
t: ハッピーエンドなんだけど、なんか痛いじゃない?
m: 痛いですね。
t: アメリカ映画のオチって、痛くないじゃない?あの痛くなさが嫌なのよ、ぼく。
m: それじゃ、ミュージカル映画もあんまり?
t: うん、そうだね・・・。
m: アメリカが嫌いなんですかね?
t: アメリカが嫌いってことはないんだろうけれど(笑)、なんかこう、闇雲に明るいっていうのはあんまり好きじゃないですね。ミュージカルって基本的に明るいじゃない?
ぼくが映画に求めてるものって「非日常」だから。
m: 昔のMGMのミュージカルって、過剰に派手で明るくて、それはそれで日常的じゃないと思うんですけど。
t: うーん、あのやたら健康的なのが好きじゃないんだね。
ミュージカル映画で言うなら、ボブ・フォッシーが出て来た時に「ボブ・フォッシー的なもの」に自分が初めて感応して・・・。
ぼくの年だと、『ウェスト・サイド・ストーリー』とか、『シェルブールの雨傘』とか周りはみんな好きだったのよ。(でも)ぼく、全っ然好きじゃなかった(笑)。ケッとかって思ってたから。
でもそれで言うと、ぼく、映画の趣味が合った大人っていなかったもん。
ぼくの前に、ぼくが好きだって言ってる映画を公に好きだって言ってる人っていなかったですよ。
後からはぼくの趣味に合う映画を好きだっていう(年が下の)女の子とか、編集者の男の子とかは出てきだしたけどね。
『あの胸にもう一度』とか、そういうものだからね。基本的に。
だから、今でも新しく公開される映画で「知的なエロっぽいもの」(笑)っていうのは必ずとにかく、映画会社の人たちはぼくのところにアプローチしてきてくれるっていうのは、そういうことなんです。
最近の映画で言えば、さっき言ったティント・ブラス(監督)の『ティント・ブラス~秘蜜~』とかそうだよね。
そういう、「非日常に溺れたい」って感覚を持ってる人って(今は)多いと思うんだ。
あとは、ぼく、あんまり真正面から「いい人!」みたいなのって好きじゃなくて。
これもまた、あんまり言うと誤解されるんであれなんだけど、ぼく、なんでマフィア映画が好きかって言うと、あの人たち、スタイリッシュじゃない?「情」みたいなものもありつつ、ね。
そこらへんにいるチンピラを、「おう、お前の煙草の火の点け方が気に入った」って言って3階級特進させて自分の運転手にしちゃう、みたいな、人を登用していく感じとか。
好きなものは好き、あいつはおれの知り合いだから守る、みたいな、そういうのがあるから、あの世界っておもしろいわけじゃない?
m: 『グッドフェローズ』のあの「これで大人になったな」みたいな場面とか・・・。
t: そうそう、あと、デ・ニーロの『ブロンクス物語』。
m: 良かったですねぇ。
t: 無茶無茶いいよ、あれ!
ぼくなんか、あの中に出てくる子供と自分がダブったりなんかするんですよ。昔、ああいう大人、いたよなぁ、みたいなね。
m: へぇー。ぼく、(あの系統で言うと)『ゴッドファーザー』と『グッドフェローズ』と『カジノ』って3ヶ月に一遍ぐらい、見直すぐらい好きなんです。
t: うん、それに『スカーフェイス』も入れるといいですよ(笑)。
 ぼく、自分の事務所に人を入れる時って、『ゴッドファーザー』は好きか?って聞くの(笑)、それで、好きですっつったら、『スカーフェイス』は見たか?ってね。
m: 『スカーフェイス』ですか。うーん・・・嫌いじゃないんだけど・・・。
t: だからたぶん、君とぼくの良い意味での違いってそこだと思うのね。
やっぱりキャメロン、真面目なんだよ、キャメロンっていうぐらいだからさ(笑)。
『あの頃ペニー・レインと』の主人公の少年(=キャメロン・クロウ)もまさにそうじゃないですか?彼は基本的にすごく真面目で、その真面目さゆえにあのロックン・ロールのライフ・スタイルの中で右往左往するところがドラマになってるわけであって。
ぼく自身はある部分では筋金入りっていうか、スティルウォーターのラッセル的な感覚も持ってるから。
だから君は『ゴッドファーザー』は絶対理解できる、マインド的にも。でも、『スカーフェイス』って劇画だから、感覚としては。
m: なるほど・・・(スカーフェイスは)どうも、最期に一直線にガーッと行っちゃうところが・・・。
t: だから、劇画だもん。で、ぼくの中にはああいう部分もあるんですよ。でも、飯田もスカーフェイス的なところ、あったりするんだけどね(笑)。
m: そう、ぼく、『ブロウ』も今一だったし。
t: わかるわかる。
m: あと、『キング・オブ・ポルノ』も、まあいいとは思うんだけど・・・
t: 『キング・オブ・ポルノ』ってなんだっけ?
m: チャーリー・シーンが出てる、伝説のポルノ王を描いたっていうちょっと『ブロウ』みたいな映画があるんですよ。
t: あ、知らない。あれは?『ブギーナイツ』はどうだった?
m: ああ、『ブギーナイツ』は見たことないです。
t: じゃ、見たほうがいいですよ。おもしろいよ。

立川直樹と映画談義というのも贅沢な話だ。 そう言えば、『橋の上の娘』、『あの頃ペニー・レインと』、『耳に残るは君の歌声』の3本って、メインの女優さんのキャラクターが共通しているような気がする。
意地っ張りで、気まぐれで、でもとても情がこまやかで。
顔の作りも近いものがあるように思うのだけれど・・・。
また、『ブロンクス物語』の子供と自分がダブるというのは立川氏が東京の浅草出身だということと関係があるのかもしれない。
1950年代の浅草で過ごした少年時代・・・。
それが彼の「情」という概念を重んじるところにつながっているような気がする。

t: わかるだろうけど、ぼくはだめなものってそんなにないですよ。
m: そうかなぁ・・・。
t: 貧乏くさくなきゃ、いいの(笑)。で、どんなメディアにでも、「甘い毒」っていうのは必要なんですよ、で、ぼくは「甘 い毒」なんです。女性って特にそうだと思うけど、真っ当になって行けば行くほど、昔、少女時代に感じたオスカー・ワイルドみたいな(笑)危ないものを本能 的に求める感覚って、みんなあるんだもの。
ぼく、今までやってきて、レコード、映画、アート・・・って関わってきて、一回もアイドルっぽいことってやってないのよ。どんなメジャーなアーティストとやろうが、全部暗くしちゃって(笑)、結果的にデカダンとか、フォギーな方に持ってっちゃうんだから。

●ティント・ブラス~秘蜜~
ティント・ブラス監督2003年2月時点での新作映画。
『髪結いの亭主』のアンナ・ガリエナが、激しい恋に落ちる上流階級の人妻を演じる。

●スティルウォーターのラッセル
『あの頃ペニー・レインと』で、キャメロン・クロウがモデルであるウィリアム少年が突撃取材を行うバンドが「スティルウォーター」。
「スティルウォーター」のリーダー的存在が、ギタリストのラッセル。

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