WORKS~立川直樹全仕事~

1993年 SIDESTORY 2

 

立川直樹が勝ち残っている理由

m: ぼく、キリンビールという日本を代表する大企業の1社を相手に、ひとりのプロデューサーが15年以上に渡って継続して大きな仕事をしてきたってすごいことだと思うんです。
それもアルコール飲料メーカーという、イメージを非常に大切にするであろう企業と。
その辺の「プロデューサーとしてのサバイバル戦略」をぜひ、お聞きしたかったんです。
t: まず、ぼくは(キリンビールさんとの仕事について)、自分は絶対いいものしかやってない、と思ってるんですよ。ぼくのやり方って、いわばおまかせの割烹なんでね。
おまかせの割烹って、お客さんは支払いをする時にこの茄子の料理はいくらでお吸い物はいくらで、って細かくは聞かない代わりに、もし2回続けて「なんか、最近今いちだなぁ」と思ったら、行かなくなるでしょ?
それと同じで、キャメロンが今聞いた「なんで続いてるのか?」ってことで言えば、ぼくは(毎回、)費用対効果という意味において「今回は何をもって良しと するのか?」っていうことをちゃんと考えて、毎回(キリンビールさんに)納得してもらえるようなやり方をしてきたんです。
そしてここは大事なとこだと思うんだけど、その「何をもって良しとするのか?」っていうのは毎回違うんですよ。
ある時は、メディアに露出することをもって良しとするとか、またある時は、その会社(キリンビール)の社員の人が、「今度、うちでやったイベント、かっこいいんですよ!」って胸を張れることをもって良しとするのかもしれない。
ただ、そういう意味でのアウトプットが、単一だと、長くは続かないとぼくは思う。
たとえば、メディアのことだけ考えてやってるものは(どこかで)メディアに負けちゃうんですよ。
それと、ぼくのようなインディペンデントのプロデューサーがイベントの提案をする時って、たとえば(今回の6月にキリンラガークラブで)アル・クーパーを 呼ぶ、なんて時にも、たいていは「アル・クーパーはシーンにおいてこういう位置づけで、だからこれをやるとこういう効果があって・・・」って話をしちゃう んだけど、それをやればやるほど、そこには微妙な嘘、と言って言葉が悪ければ、ささやかな事実の捏造が入り込んでくるものだと思うの。
でも、ぼくは、今回なんかでも「今、ラガークラブ、これをやるしかないです!」とか、「アル・クーパーですよ!」(笑)とかなんですよ。もうそれこそ出会い頭のラリアート一発みたいなもんだから(笑)。
m: でもそれをやって通用する人というのは限られてるわけで(笑)、そのへんのラリアートを繰り出すことを可能にしているのは、ずっといい仕事をしてきたっていう自信なわけですよね?
t: まあ、それと担当者をちゃんと見てその人に合わせるってことでしょうね。この人なら「アル・クーパーですよ!」を理解してくれるだろうなっていう人に「アル・クーパーですよ!」ってやるわけで。
それを担当者が変わった時に誰にでも「アル・クーパーですよ!」ってやってたら(笑)、これはダメなんで・・・。
m: なるほど・・・。
でも、聞いといて失礼なんですけど、それって当たり前と言えば非常に当たり前のやりかたなんですよね・・・。
t: そうそうそう、聞くと、「あ、そうか」ってみんな言うんだけど。
やっぱし何かがあるんだよね、妙なものが(笑)。そこらへんが、ぼくの「仕事=プロレス論」なんだけど・・・。
m: なんなんですかね・・・、そのあたりの、他のプロデューサーとの違いを生み出しているものって。
t: ひとつ思うのは、たとえば他のプロデューサーが(キリンラガークラブのように)年に12回のイベントを任せられたとすると、たいていの人はその(まかせられたという)ことに甘えちゃうんですよ。
変なところ理屈っぽかったり、自分がやってるんだって言い過ぎて、その割には詰めも甘くなるし、自分の趣味だけに走っていってしまう。
それで(1年間、)12回やって、「最近、どうなってるんですかねぇ」ってことになって(駄目になってしまう)。
ぼくはいろんなイベントの時に、決して自分の趣味に走るだけじゃなくて「これは今やっておけばキリンビールのためになる」とか、いろんな発想をそこに散りばめるんです。
その「散りばめ感」がないと、本当に「これは!」っていうものをやった時に、焦点がぼけて来ると思うんですよ。
それと、よく「これやれば絶対(お客さんが)入りますよ」って言うプロデューサーっているけど、絶対入るかどうかなんてわかんないじゃない(笑)?
興行なんだからさ。
興行っていうのは、入るか入んないかわからない、いわばミズモノだからそこにおもしろさがあるんだと思うんですよ。
もし、毎回必ず入るとか同じ結果が出るってわかってるんだったら、それは変な話、堅気の勤め人の仕事だと思うんですよ。そういうことが性に合わないから、こういう仕事をやってるんであってね・・・。
少しは飛んだり跳ねたり(笑)、があったほうが面白いと、ぼくは思ってるんです。

立川直樹は、緻密な論理と長年の経験に裏打ちされた動物的な直感との間を激しく振幅しているように思える。 立川直樹のプロデュース・ワークとは、彼の異常とも思える判断力によってコントロールされるCool HeadとHot Heartが、一種の異界を作り上げるプロセスなのではないだろうか。
そして立川氏は自分のことを「堅気じゃない」と言う。確かにね、と私も思う。
ニール・ヤングやトム・ウェイツの持つ、「あ、この人、堅気じゃない・・・」と直感的に他人に思わせるオーラを、「なにやらただならぬ雰囲気」を、立川氏もまた身に纏っているのだ・・・。

立川直樹とラジオ

t: それで、(キリンラガークラブでは)イベントに加えて、ラジオ、小冊子も作ってメディア・ミックス・プロジェクトってことでやろうという提案が通って。
ラジオはFM横浜でやろうってことになって、最初は自分でしゃべるつもりは無かったんだけど、(DJは)誰がいいとかこっちがいいとかやってるうちに、永 田さんが「それじゃあ、立川さんがしゃべればいいじゃないですか」って言い出して、そのまま7年間もやることになったということなんですよ。
m: ラジオのDJって、この前にもやってらしたんですよね?
t: うん、前にもFM大阪でやったり、ちょこちょことは。
ただ、あんまり長くやるのはどうかなといつも思ってるんだけど、この時は長かったですね。
m: 立川さんのDJスタイルって、いつも、『ナイトシフト』みたいなスタイルなんですか?
t: レギュラーとなると、あれが基本ですね。
m: 普段、こうやってお話ししてる時のスタイルとは、かなり違いますよね。
こないだの『ナイトシフト』のハッピーニューイヤースペシャルとか、選曲やタイミングも含めて、すごい世界になってました(笑)。
t: うん、そう。なにかこう、完璧に作るのが好きなんだよね。
今はFM局で偉くなったある人が昔こんなふうに言ってたんです。
「立川さんね、ラジオって素人の女の子2人連れてきてレコードも持ってこさせて、1時間の番組を作ろうと思ったら、テレビと違ってできちゃうのよ。」
って。それは一時の女子大生DJブームを皮肉って言ってたんだと思うんだけど、続きがあってね。
「でも、選曲もタイミングもきちんとして、本当に良い番組を作るとなったら、テレビより難しいよ」って。
その言葉が(今も)ぼくの中に残っているんですよ。
だから、周りはどう言おうが自分のスタイルを崩さない。
「(曲を出す)タイミングとかにそこまでこだわらなくてもいいじゃない」
って言われようが、ぼくはやるの(笑)。
でも他の人のゲストで、たとえば葉加瀬太郎さんの番組に出た時なんかはこうやってわぁっと(自由に)話したりもする。
グレート・ムタみたいなもんですよ(笑)。反則無しでやる試合と反則有りのと、両バージョンあるという・・・。

●ナイトシフト
ニッポン放送で毎週水曜日の20:10から20:40まで放送されているラジオ番組、『立川直樹 ナイトシフト』 のこと。

●ナイトシフト ハッピーニューイヤースペシャル
2003年元旦の17:30から21:00まで放送された『立川直樹 ナイトシフト ハッピーニューイヤースペシャル』のこと。

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