WORKS~立川直樹全仕事~

1990年 SIDESTORY 8

中国映画が良い理由

m: で、現代の中国映画って、昔の日本映画の良さがあるじゃないですか。
t: うん。
m: それって人件費が安いとかそういう話なんですか?
t: いや、気持ちですよ、映画を作ろうという。本当に作りたい映画を作るために――『紅夢』の時に感動したのは、合宿なんだから。もやし御殿で。
m: もやし御殿?
t: そう。それはまた『紅夢』の年に詳しく話すけど、とにかく「いつまでここにいるんだ」って思うぐらいやってましたよ。終わるまでは帰れない。日本みたいに通いじゃなくて、みんななりきってる。それはたぶん、日本映画も昔はみんなそうやって作ってたんですよ・・・。
でもぼくはね、自分で思うけど、侯孝賢に関しては――『戯夢人生』もやってくれって言われて、ぼくもああいう人形使いの話好きだから、やりたいと思ってたの。
ところが、中国ってスケジュールがめちゃくちゃ遅れるんだよ。
i: すごいっすよね。
t: ねえ? もう出鱈目だよね。そんな2ヶ月とかの遅れじゃないんだから。
話があって1年ぐらい経って、急に「始めるぞ」とか言うわけよ。そんなのできるわけないじゃない? だから実は、ぼくは『戯夢人生』やりたかったの。
ぼくがやると、だいたい、編集に口出すんですよ。「ここが長い」とか「もっと縮めた方がいい」とかって平気で言うから、監督が誰でも。でもたぶん侯ちゃんもそのやり方を理解してくれてたんだと思うんだ。
でもまあ、『戯夢人生』はぼくがいないまま進んでいって。そしたらある日、日活のスタジオで侯監督が「立川さん、今どこにいるんだ!?」って絶叫したんだって。
ぼくはその話聞いて、侯孝賢とは一生友達でいられるなと思って。その後、日本で久しぶりに会ったときに、その『戯夢人生』の話はしなかったけど、なんか感じるものはあるわけ・・・。だからこの間の『ミレニアム・マンボ』も、もったいないなあと思うんだよね。
・・・ぼくね、侯孝賢と伊丹十三っていうのは似てると思ってるんですよ。結局、日本映画を不毛な時期に引っ張った人と、台湾映画が不毛な時期に引っ張った人ですよ。
i: 台湾っていうか、中華圏の映画。
t: そう、中華圏の。こんな話は初めてするんだけど、『マルサの女』と『悲情城市』はある意味で似ていて。その、映画として似てるっていうんじゃなくて、映画界における位置関係としてね。
つまり「日本映画はもう(可能性が)無いんじゃないか」っていう時に『マルサの女』が出て、それが当たって「そうか、こういう方法論があるのか」ってい う。それと『悲情城市』が出たときが結構似てると思うんですよ。で、お互いの監督が持ってる、ねじれた感じとかっていうのも、どこか共通してる部分がすご くある。
i: 『悲情城市』が賞獲ってから、それまで侯孝賢のことなんか知らなかったような人たちがみんな群がっていく感じがあって、なんか嫌でしたね。
でも何かのパーティーで侯監督が「立川さん!」って来てくれて、矢内さんと3人で楽しそうに話してる時に、「ああ、なにがあってもそうなんだな」っていう感じはして、それはすごくうれしかったんですけど。
t: バカヤローだよな。そういうのを結構見てるから、ぼくはシニカルにもなるよ。

たまには過去の回想も

m: H・アール・カオスの話にしても、早すぎるんですよね、立川さんは。ダンス・オブ・ジ・イヤー獲ったときに「バカヤロー、そんなの当たり前だよ」って言っちゃったっていうこととか。
i: でもぼくは、H・アール・カオスは立川直樹のアートに対するところの評価を高めたと思いますよ。
t: でも(H・アール・カオスでも)もう1回ぐらいやりたいね、また全然違うことを(笑)。
m: すごい!
i: H・アール・カオスもやってて、MAYA MAXXもやってたりしてるっていうことが「あのオヤジは何者やねん!」っていうところですよね。
t: こうやって話しててふと思ったんだけどさ、やっぱり最近の連中ってさ、仕事やってるときに全開にしすぎてるよ。
m: 全開に?
t: なんかさ、自分がやってる仕事ってあるじゃない? たとえば80やってるとすると、もう78ぐらいまで喋ってんだもん、みんな。もう残2ぐらいしかないから、後が続かないんだよな。そう考えたら、ぼくなんか20ぐらいしか言ってないからな。
だからキャメロンに言われて、こういう風に話してて、『ああ、そうか、そういうこともあるなあ』みたいに。
i: いいことじゃないすか。だって、あんまり過去を回想したりっていうことをしないから。
t: 普通、しないもん。嫌いだからさ、基本的には。だから篠山さんなんかと一緒だよ。
・・・やっぱり全開の奴って嫌だよ、なんか。一所懸命なホステスみたいな気がするんだよ、最近の人たち見てると。
i: ははははは! 大ヒットです(笑)。
m: 「久しぶりに会いたいでーす!」みたいな(笑)。
t: そうそう(笑)。なんかいるじゃん、ほら、代官山辺りで編集やってる奴なんか、みんなそういう気がするんだよね。その時代なんか生きてないのにさ、なんか「ロックはこうだ」とかさあ。
i: いやあ、だからよかったですよねえ、三島さんと出会えて。
t: 感謝してますよ。
m: とんでもございません(笑)。

この後、話題は突如色っぽい方面へ。
バブル期ならではのミニスカ女性部長(!)の思い出や立川さんの女性に対するポリシーなどおもしろい話、意外な話、口に出すのもはばかられる話・・・とた くさんあったが、それはいずれオープンするかもしれない「裏tachikawanaoki.com」でのご紹介をお楽しみに。

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