WORKS~立川直樹全仕事~

1990年 SIDESTORY 3

  

マリアンヌ・フェイスフル初来日

m: 『KIRIN LAGER CLUB』もこの年ってすごいんですよね。
i: やっぱりすごいのは、ワールド・ミュージックをやったのがすごく早かったっていうことでしょう。ミリー・ジョセリーンもそうですけど、タック&パティも初来日か2回目か、ですから。
t: うん。タック&パティは何回かやってるんだよね。
m: なるほど。マリアンヌ・フェイスフルも、なんとこの時が初来日なんですよね。
今回(2003年6月)のアル・クーパーに似てるなあと思って。
t: 似てる似てる、それは君の読みが正しい。だってもうぼくはマリアンヌ・フェイスフルが大好きだから、「マリアンヌ・フェイスフル、やりますから」って言ったんだから。今回のアル・クーパーと一緒ですよ。
今回も「アル・クーパーやりますから」だから(笑)。
(アル・クーパーの場合は)一応、資料は持って行ったけど、「もうやりますから」って。
i: ていうか、最初のうちは資料無かったですよね。だから周りはみんな「・・・そうなんですか?」。後で代理店さんが「アル・クーパーってなんだっけ?」。
t: マリアンヌ・フェイスフルの時も完全にそうですよ。で、そのときは(マリアンヌ・フェイスフルが)バリー・レイノルズと2人で来たんだけど、彼女が「(ステージには)セットもなにもいらない、花だけ置いてくれ」って言うんだよ。
で、(ステージの)真ん中に巨大な花を置いて、他にはバリー・レイノルズがギターを弾いているだけ。
m: へえー。
t: あのときはちょっとね、ファンになっちゃったよ。楽屋へ行ってマリアンヌ・フェイスフルに紹介されて、「呼んでくれてありがとう」かなんか言われたときは、思わず「my pleasure」とかって言っちゃって(笑)。
m: (笑)。バンド全員来たんじゃないんですね?
t: バンドじゃないんだよ、バリー・レイノルズと2人なんだよ。だから今で言う、いわゆるアンプラグドのハシリですよ。バリー・レイノルズのギターと、マリアンヌ・フェイスフルの歌だけなんだけど、こんなすごいショーはなかった。見た人はみんな「すごい!」って言ってた。
m: なるほどねえ。ストーンズの『シスター・モーフィン』の歌詞を書いたか参加したかしてるんですもんね、マリアンヌ・フェイスフルって。
で、たいへんな時期があって、前の年にライブが出て、その3年前に『ブロークン・イングリッシュ』が出て盛り上がってて――。
t: うん。とにかくやりたかったの、マリアンヌ・フェイスフルは。
m: ぼくも好きなんですけど、ぼくのなかではね――またバカって言われるかもしんないですけど(笑)――、ダミア、エディット・ピアフ、ビリー・ホリデイ、ジミー・スコットなどなど、その系列なんですよ、マリアンヌ・フェイスフルって。
t: うん、そうだよ。正しい。
m: ついでにビョークってのもあるような気がするんですけど、ダメですかね?
t: ビョークはねぇ、パフォーマーとしてはすごいけれども、(彼女自身の)人生が追いついてないのに、そういうフリをしてるって感じがするんだよ。そこが可愛いっちゃ可愛いんだけど――たとえば「I’m losing you」って歌った時に、その「I’m losing you」の裏が無いんだよ。ね?
だから、今キャメロンが言った人たちと、まだ並べちゃいけないよ。今のビョークは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』をそのままやってるだけな感じがする。
m: まあそれはあの人たちと比べちゃうとね。
t: うん、ダミア・・・・・・マリアンヌ・フェイスフルと来たときに、そこにビョークを持ってきちゃうのはちょっと時期尚早だなと。
m: なるほどねえ。(ビョークが)そのラインに加わる可能性はありますかね?
t: 無いね。
m : 無いですか(笑)、そうですか、はい。
t : ビョークは幸せ過ぎる。だって失敗してないもん、彼女。人生の地雷(を踏んでる経験)が無いでしょ。たとえばそのラインナップに入れるんだったら、美空ひばりさんですよ。歌に色濃く人生が投影されてるっていう意味では・・・。
m : ああー。
t : 美空さんはね、『悲しい酒』の映像がこないだもテレビで流れてたけど――。
m : 泣きながら。
t : そう、泣きながら歌うときに、その番組のためのバージョンのセリフを作るわけだよ。
で、「ここは1カメから撮ってね」って、そこまで構成できる人なんですよ。それで「なんであなたがいないところで、この悲しい酒を飲まなきゃいけないの」ってセリフを言う時に、そこに人生が投影されてるじゃない?
これはすごいですよ。
m : それって、ひばりさんやピアフの過去に、見る側が思い入れることができるっていうことですか?
t : いや、見る側が思い入れることができるっていうことじゃなくて、本当にその人がやったこと、生きてきた過程が行間からにじみ出てくるっていうことなんだよ。
エロチシズムっていうのもそうで、なんでぼくがレナード・コーエンを好きかっていうと、あいつがすごいのは本当にエロだからなんだよ。エロチシズムと知性 があれほどリンクしてる人はいない! ほんっとに女好きなんだもん。でも知性はすごいわけよ。それがあのレナード・コーエンのディープなエロさにつながる わけ。
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