WORKS~立川直樹全仕事~

1990年 SIDESTORY 2

 

SURF’90『新湘南伝説』

t: これはね、その頃三枝さんがね、面白いレコード作ってた時期があるんですよ。現代音楽とロックとクラシックとポップと融合したみたいな。で、当時、三枝さんはテレビの仕事もしてて。
i: OLの番組やってたりとかね。こう一番文化人的な時ですよ。
t: なんか『EX TV』だかなんだかにも出てて。つまり、やってることは難しかったんだけど、いわゆる人気文化芸能人に なった時だったのね。だから三枝成彰っていうと、発注も来るし、客も集まる。でも三枝さんって面白くて、結構反骨精神があってさ、わざと難しいことやるわ け。
で、演出とかプロデュースやってくれっていうことでいくつか一緒に仕事をしたんだけど、この『新湘南伝説』っていうのは、この年やったなかでも相当すごくてさ。
今はもうすっかり売れちゃったけど、パパ・タラフマラっていうダンスカンパニーの人たちにパフォーマンスを頼んだり、ベースが鳴瀬君とか、面白い人たちを集めてジャイブやったりしてた、その頃のぼくのやってたことの集大成みたいなものだったの。
つまり、三枝さんの基本はインストの音楽だから、それをどういう風に1時間半のショーとして見せるかっていうことを考えるわけ。
で、三枝さんも「やっちゃってよ!」って言うもんだから、それはもう火とか水とか花火とかダンサーとかオペラ歌手とか、そういうものを盛りだくさんにして、それは面白いもんでしたよ。・・・それにしても君も良いところに目つけるね(笑)。
m: (笑)。
t: この本番の時、ちょうど台風が来てたんだよ。もう暴風が吹きすさんでて。
打ち合わせで最初に下見に行った時には、海風っていうのは、海から陸に吹くんだよ。わかる? こっち側が海なのね。で、ここに野外のステージがあって、 こっちに客が入るわけ。後ろが駐車場なんだよ。で、下見に行った時は風はこういうふうに吹いてたから、ステージの上に花火を仕込んだわけ、ね? そうすれ ば花火の火の粉っていうのは、海風に吹かれて後ろに落ちていくから、これで大丈夫だということになったんだ(略図)。
で、まあそんなことを打ち合わせして本番になりました、と。
台風が来てるから、中止だどうのこうのって最初は言ってたんだけど、とにかくぼくは天変地異に関してはめちゃくちゃ強いんで、超強硬派なわけですよ。「やるんだ!」と。
m: (笑)。
t: そしたらほんとに本番寸前に雨が止んだのよ。
で、やりました。結構それなりに火が出るわ、上から雨は降らすわ、まあ面白いステージで。特殊効果の坂口っていうのがいて、舞台監督は高田憲治さん。ぼくはもうずっと舞監は高田さんなの、そういう大きいのはね。
で、下がステージだとすると、2階の屋根がこうちょっと出てるの。で、ここに階段でステージに上がるようにして、上でオペラの歌手が歌うことになってて(略図)。
リハーサルのとき、誰かがそのオペラ歌手が痩せてて風で飛びそうですって言ってきたんだけど、「針金で縛って固定しといたから風じゃ飛ぶわけがない!」って言ってやった(笑)。
m: あはははは。固定しちゃったんだ。
t: それで、その階段のとこでダンサーが踊ってるんだけど、すぐ下のところで火が燃えてるから(ダンサーは)避けようとするわけよ。そうするとぼくが下からメガホンで「バカヤロー! プロなんだから逃げるんじゃねえ!」(笑)て怒鳴るの。
m: 酷い・・・。
t: それを見に来てたぼくの友達のダンサーが「立川さんとは絶対仕事しない、あの人とは友達だけでいたい」って言ったぐらい・・・そういうのが平気な時代だったんですよ。
m: 時代・・・なんですかね。
t: This is a true story.だからね、これ(笑)。
で、最後アンコールになって花火をバーンってやって、その火の粉は予定では後ろに飛んでいくことになってるわけだよ。だって前は客が満員に入ってるわけだからね。
ところが台風で風が逆に吹いちゃって(笑)、火の粉が満員の客の上に降り注いでいくわけよ、ナパーム弾のように・・・。
m: ははははは!
t: もう、場内、悲鳴と怒号でさ。で、特効の坂口がインカムで「どうしましょう!?」って言うから、「バカヤロー、しょう がないじゃねぇか! 大丈夫大丈夫!」っつって(笑)。そしたら客はそういうもんかと思ってヒューヒュー言い出して。ま、低温花火だからさ。でもステージ の上で譜面は燃えてるんだけどね。
それで、終わった途端に雨が降ってきたの、演出のように。
m: へえー。
t: その日、こいつ(=飯田さん)は箱根(彫刻の森美術館)に行ってて。
i: それも野外のイベントなんですけど、台風だったんでどうしようかということになって。ぼくはまだ若いペーペーなのに、 周りは「プロデューサーが決めないとダメですよ、中にするのか外にするのか」。で、ぼくは「中にしましょう!」と。そしたら(立川さんに)怒鳴られました ね、「誰だっ、中にしたのは!」(笑)。
t: (笑)。
i: 「おまえ、まだわかってねえのか!」って。
まだ入って2年目ぐらいだったんですけど(笑)。
t: だから、音楽と照明と、そういういろんなエフェクティブなものが一緒になったすごいショーですよ。
i: 高田さんにちょっと話してもらってもいいかもしれないですね。
t: うん。
m: ぼくもこの前、紹介していただきましたけど、話面白いですよね、高田さん。
i: うん。(舞台の仕事は立川さんと)ほとんど全部一緒ですからね。
t: そうだね。
で、地方自治体とかからどんどん発注が来るからさ。とにかく「三枝成彰=なんか存在が派手=なんかウケる」、だから。これ(『三枝成彰ファッションコン サート』)は横浜美術館でやったんだけど、横浜美術館のエントランス・ホールの階段にステージ作って、そっからオペラ歌手が降りてくるみたいなね。だから もう最初に行ったときに「こういう風にしたい」って言うと、一応「三枝先生」と「立川先生」だったから、むこうはそんなすごいことやると思わないから、 「なんでもOKですよ!」って言うんだけど、これが恐るべきことになってしまうという(笑)。これもそうだな、流れとしては。
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