TIME WAITS FOR NOR ONE~立川直樹同世代トーク~

第13回 前編

程度の差こそあれいつもあることなのだが、今回は特に、立川さんの巧みな話術を文章に置き換えることの困難さにぼくは向かい合わずにはいられなかった。

カエターノ・ヴェローゾ日本公演の素晴らしさを語る時の純粋さ。
たちの悪い冗談のような世の中を冷笑する時の切れ味。
オーストラリア・ワインの程の良い旨さを語る時の含羞。
かつてキャンティにいた愛すべきマネージャーの口真似をする時の哀しい愉しさ。
そして“擬似ロック・ジャーナリズム”を語る時の憤り。

とてもかなわない。
最初から勝とうとは思っていないがなんであんなふうにしゃべれるのか、想像もつかない。
そもそも「五感」の研ぎ澄まされ方が常人とは違うのだと思うしかない。

ぼくはそんな話術を少しでも写し取ろうとする。
自分にとってのリアルな立川直樹を描き出そうとする。
補足、推量、そしてある時は捏造。
ぼくは可能な限りの技を駆使する・・・。
この立川直樹同時代トークとは、ぼくのそんな悪あがきの結果でもあるのだ。

T=立川直樹 M=三島太郎)

闇を感じ、“和”に感じる

T: 仙波由季がカムバックしたんだよ。それで、森永と早乙女とロック座に見に行って、その後に川崎のちょっとうまい中華料理屋に行ったらさ、(東京から)川崎まで首都高走ったら20分なんだよね。あ、こんなに近いんだ、って。
それで川崎の闇の多さがなんだか心地よくてね。
やっぱり夜は暗いんだよな、って思ったんだ。
M: あいかわらずいろんなとこ、行ってますね。
T: 昨日はさ、ワタリウムの「岡倉天心展」に行ったの。(岡倉天心は)前から興味ある人物ではあったんだけど、今回、ああやって見て、自分の中にあった“点”がぱっぱっと繋がったんだよね。
岡倉天心って、日本で最初にアート・マネージメントを確立した人でさ、ほら、(自分が)体制側になっちゃうと、とっとと次のとこに行っちゃう感じとか、すぐ別のことをやりだしちゃう、あれは正しいなぁって。
日本美術院とか作る発想とか、すごく刺激されたね。
M: ぼくは今回見て、初めて「ああ、こういう人なんだ」って知ったんだけど、あの立川さんが前にキリンプラザ大阪で(展覧会を)やった伊東忠太とも繋がってるんですよね。
T: そうそう、一味なんだよね。
M: あのへんの人たちって、日本人っぽくない感じがすごくかっこいい。
T: コスモポリタンなんだよね。良かったなぁ。
まとめ方も非常にワタリウムらしくて、たとえば (岡倉天心の)お父さんのことを、「福井藩の下級武士で、生糸の扱いをやっていた、今でいう商社マンのはしり」ってキャプションで解説してるところとか。
(ワタリウムは)前はキース・ヘリングとかウォーホールをやってたのが、このところ岡倉天心をやったり、中で座禅をやったりっていう“和”に近づいてきてる感じが、今のぼく自身の感じとも何か合うのかもしれないなと思ったね。
M: で、また例によって展覧会のハシゴとかしたんですか?
T: そう、岡倉天心の前は谷口吉生(の展覧会)に行ったの。話題になったMoMAのリニューアルっていうのもさ、あれ、両サイドは新しく作ってるわけだからもうほとんど新築だよね。
模型も含めて展示されていた中では、土門拳美術館とか、葛西の臨海水族館も良かったんだけど、広島のゴミ焼却場が画期的でね。“ゴミ・ピット”みたいのがガラス越しに見えるようになってるデザインとかさ。
すごくスタイリッシュな日本的美意識に貫かれた建築家なんだよね。

音楽の力

M: 少し前になっちゃうけど、カエターノ・ヴェローゾ、良かったですねぇ。
T: 良かったねぇ。
まさに本物の肉声というか、肉体だったね。
最近、誰かが言ってた「タレントもどきの人をアーティストなんて言っちゃいけない」っていうような現象とは全く対照的に、あれこそライブ・パフォーマンスと呼ぶにふさわしい、とってもしっかりしたものだったな。あれを見なかった人はかわいそうだね(笑)。
M: ほんと、そうですね。  
ニルヴァーナの「Come As You Are」とかのカバーもライブで見るとまたすごく良くて。
しかし、日本にカエターノ・ヴェローゾ好きな人がこんなにいたのかって思ったぐらい、入ってましたね。
T: それはぼくもそう思った。でも、ジョアン・ジルベルトの時も思ったけど、これだけ(そういう人が)いるんだったら、なんで普段からみんなまともな音楽を買わないんだろうって思うよね。
M: まあまあ(笑)。
T: カエターノ・ヴェローゾとかちょっと前のk.d.ラングとか見るとさ、音楽の力っていうのは普遍的にすごいんだなぁって思えて安心できるね。
たとえば「ラブ・ミー・テンダー」がああいうふうに変質していくことの気持ちよさ。
音楽の料理人だよね。それも、あ、普通のソテーかな?と思うと実はすごいソースがかかってたりみたいな、料理の仕方のおもしろさ。あと、時にはチェロの人にゆだねて、自分はあえて料理しなかったりっていう、あのへんのバランスが今のぼくの感覚に、とっても合ってたな。
M: k.d.ラングも良かったですよね。両方とも、立川さんの言う“音楽の力”に圧倒されるコンサートだった。でも両方とも会場にすごく親密な空気感があって・・・。
T: あとぼくなんか、自分よりやや年上でいい感じの人を見て安心したいっていうのがあるのね。 逆に、「ああ、あの人、昔は良かったんだけどなぁ」みたいのは、そういうマイナスの“気”をもらっちゃうようで、嫌なんだ。
M: わかりますね。
T: カエターノ・ヴェローゾは色気があって、品の良いギラギラ感があってすごく良かった。
しかしあの「ラブ・ミー・テンダー」はすごかったね。今まで聞いた中でベストのカバーかもしれない。
そう、あと、ジューダス・プリーストも良かったんだよ。
M: おお、なんかあんまり動かないステージだったらしいですね?
T: うん。威厳に満ちたダースベイダーのような動きだった(笑)。

「WE WILL ROCK YOU」

M: そう、「WE WILL ROCK YOU」、見させていただきました。
T: 「WE WILL ROCK YOU」はね、21世紀の「ヘアー」なんですよ。
あの明快なストーリーとか音楽のはまり方とか。
「ヘアー」に、やや「スター・ウォーズ」的“対決”構造が入ってるんだね。音楽が、全てがデジタル化されちゃってる世界に戦いを挑んでるっていうところは、アメリカン・コミックスの発想なんかもうまく取り入れてるのかもしれない。
そしてバンドがうまい、歌がうまい・・・。だから、ミュージカルっていうよりちょっとコンサートっぽいノリもあるよね。
M: 評判はいいんですか?
T: むちゃくちゃ評判いいよ。何、キャメロンはあんまり好きじゃなかった?
M: いや、好きじゃないってことはないんだけど・・・。 まず、今、コマであの公演をああいう形でやってるっていうのは画期的なことですよね。 ちょっと前に石原都知事が言ってた「家族で行ける歌舞伎町」が現実のものになっちゃってるわけで、その意味ってすごいなと思ったんです。 ただね、あれって、あんまり深刻なものを期待して行っちゃいけないんですね?
T: それはダメですよ。
M: ぼく、ロック・ミュージカルって聞いてたから「RENT」とか「Tommy」とかのイメージが頭にあったもんで・・・
T: あ、そりゃあ、違うね。「Tommy」的な要素はそれでも多少あるような気がするけど、「RENT」なんかはもう全く違う。
人間の業の描写だとか、細かな人間関係の綾とかそういうディープなもんは全くないですよ。
でも、だからこそ家族みんなで楽しめて、最後で「We Are The Champion」を合唱して、フレディの銅像の前で記念撮影したりする楽しみ方ができるわけで・・・。
極端に言っちゃえばもう、ほとんど「アレグリア」的なものだからね。
M: そうなんですよね。確かにぼくの周りの人もみんなすごく楽しかったって言ってたし。 よかった。ぼくみたいに「あれ?」って思っちゃった人が歌舞伎町あたりに多発してたらたいへんですもんね?
T: だから、おまえがおかしいだけだって(笑)。そんなやつ、おまえだけだよ。だいたいコマーシャルとか見ればわかるだろ?
M: ぼく、テレビ見ないもんで。
T: ああ・・・。
でもまあ、フレディ・マーキュリーが持ってたクイーンのデカダンスとかダークな部分は剥ぎ取ったものになってるから、そういうものは無いよね。で、そういうものがあったら3ヶ月(公演)はもたないと思うな。
(アミューズの)大里さんは「立川さん、(「WE WILL ROCK YOU」を)ミュージカルって言わない方法はないかな?」って言ってたぐらいだからね。

表現の濃さと暗さ

T: あとは最近良かったのが蜷川さんの「近代能楽集」だね。「卒塔婆小町」と「弱法師」の2本立てなんだけど、「弱法師」はすごく良かった。あの45分という時間もすごく良かった。
それで思ったんだけど、もともと濃い(作風の)人って、ある短さの中でものを作ると、その「おいしさ」が凝縮されていいのかもしれない。
「弱法師」なんかその典型だし、「エロス」っていうオムニバス映画の中のウォン・カーウェイの「ザ・ハンド」もすごくいいんだよ。もう仰天したね。
ウォン・カーウェイってくどいじゃない? でも、これが45分ぐらいだとちょうどいいのよ。「若き仕立屋の恋」って邦題にはまいったけどさ。
M: 「ニューヨーク・ストーリー」の中のコッポラの「ゾイのいない生活」もそんな感じでしたね。
T: 映画といえばさ、ぼく、「ミリオンダラー・ベイビー」がよくわからんのだよ。
M: へぇ。
T: あれって週刊誌の映画評とかを見ると、みんな5つ星なのよ。新聞評もみんないいし、アカデミー賞も取ったし・・・。けなしてるらしいのは井筒さんぐらいで、そんな作品って、今だかつてなかったと思うんだよな。
M: でも立川さんはそんなにいいとは思わない?
T: まあ、飛行機の中で見たっていうことはあるのかもしれないんだけどね。
でもそれを差し引いてもそこまでみんなしていいっていうようなもんかなぁ、と思うんだよね。
ああいうんだったら、たとえば昔の今村昌平とかビットリオ・デ・シーカとかさ、いくらでもあるような気がするんだよ。クリント・イーストウッドのあざとさが目に付くっつうかね。特に後半なんか絶望的に暗いからね。
M: まあ、「許されざる者」にしても「ミスティック・リバー」にしても暗かったですもんねぇ。「許されざる者」なんて、日本人には相容れない暗さみたいな気がしたな。「ミリオンダラー・ベイビー」はぼく、まだ見てないんですけど「チョコレート」とかより暗いんですか?
T: 暗いねぇ。それに「チョコレート」はまだ(映画評が)賛否両論あったのよ。
だから、「ミリオンダラー・ベイビー」のあの絶賛振りを見ると、あれ、世の中の人ってそんなにみんな暗いものが好きだったのかなぁって思っちゃうんだよな。
それだったらなんでテレビのバラエティとかを容認するんだろうって。
M: ああ、そう繋がりますか(笑)。
T: 最近、みんな繋げちゃうからさ(笑)。
M: でも確かにそれはぼくも同感で、こないだの夜、たまたま若い人向けのバラエティ番組を見たんですよ。  
あれってもう神経症的を通り越してほとんど痙攣的・・・ってそんな言葉はないんですけど、そんな世界だなと思って。
あれを毎日のように見てる若い人の頭の中はどうなっちゃうんだろうと思いません?

さまざまなリアル

T: かなりひどいよね。
何日か前の新聞で、映画の字幕の訳をしてる人が書いてた記事で印象的な部分があったんだけど、とにかく若い人の語彙の少なさがひどいっていうんだよね。
たとえば「ウサギが三羽」って訳すと若い子たちは「あーっ、ヘン!三匹でしょ?」って笑うんだって。それで言葉が難しすぎるからもっと簡単にしてくれっていうリクエストがすごく多くて、ニュアンスのある言い回しがどんどん使えなくなってきてるって。
でもやっぱり、ここはどうしてもこういうふうに言いたい!っていう箇所を映画会社の人が「いいです、それで行きましょう」って言ってくれるとほっとしたりするんだって。
M: 今の若い子たちのボキャブラリーの限られ方ってほんとすごいですよね。  
感情表現も画一的になってる気がするし。
T: 日本人っていうのは本来、深い思考をする民族だったんだけどね。
でも、最近のテレビ、映画、氾濫してる週刊誌の見出し、新聞と全てに言えるんだけど、リアルなものはいったい何なのか?っていうぐらいすごいことになってるよね。
まるで「真夜中の弥次喜多」の世界に生きてるみたい。最近だとあの「クールビズ」とか、さ。
M: 確かに。見てて恥ずかしくなるあのファッション・センスとか、後はあの、朝から貴乃花親方がテレビに出て狂ったようにしゃべってる感じとかね。悪い夢のよう。
T: 今日なんか(朝のテレビで)1時間ぐらいしゃべってたぞ。今まで寡黙だったぶん、話すことがどっかに詰まってたんじゃないかと思うぐらいだよな。
ほとんどオズボーン・ファミリーのホラー版だよ、あれは・・・。
M: でも、立川さん、「真夜中の弥次喜多」なんて、原作を読まれてるんですか?
T: うん。ぼく、前にしりあがり寿さんと仕事したからね。
M: あの人ってなんであんなとんでもないマンガを書けるんですかね?
T: 視点がすごく変わってるんだよね。あの人、結構長いことキリンビールの社員だった人じゃない? ぼくはその頃の彼は知らないんだけど、ちゃんと会社勤めができるアーティスト特有の“変さ”ってあるんだよ。
犬童一心とかも同じタイプだよね。今度の「メゾン・ド・ヒミコ」なんてその変な感じがよく出てておもしろいよ。
でもね、それでもいいテレビ番組っていうのもあってさ。こないだNHKで「バチカンとイラク戦争」とかいうドキュメンタリーやってて、これがすごくよくできてたんだよ。
京都に「都をどり」を見に行って「さか本」で、もち鯨の白ミソ仕立てとかのご飯を食べて(笑)、それでホテルに帰ってテレビをつけたらちょうどやってて見たんだけどさ。
バチカンの外務大臣みたいな人がいてね、サダム(・フセイン)のところに戦争をやめろって言いに行くんだよ。
「あなたが、今、自分の国の民衆を愛しているのならば、この国を攻撃させてはいけない。アメリカと真摯に話すべきだ」って。
サダムはそれに対してNOとは言ってないんだよね。
それで(バチカンは)ブッシュのところにも行くわけ。つまりバチカンっていうのはネゴシエーターなんだよ。
だからブッシュも一応は(話を)聞くわけ。でも、実はもうその時には攻撃するって決めちゃってたっていう、そんなのを祇園町の踊りの後に見てたら、もう眠れなくなっちゃってさ。
法王が亡くなった直後だったっていうこともあるんだろうけど、なんかすごくリアルにあの人のことを感じられたんだよね。
確か、(ドキュメンタリーの)サブ・タイトルは「法王が動く」だったと思うんだけど、(法王が)広島に来て日本語で「人々は戦ってはいけない」って発言し、アウシュヴィッツに行っては泣き、ポーランドではワレサがひざまづいて(法王に)キスする・・・。
あの人は、いやらしい意味じゃなくて尊敬を勝ち取るための演出っていうのをすごく考えてた人だったと思うんだ。(亡くなる)30年前、だからたぶんまだ全 然元気だったのにすごくゆっくり歩いてたりする感じとか、籠みたいなものに乗せられて移動してる時のあの佇まいとかを見るとね。
日本だって同じようなことはあって、たとえば天皇陛下が皇太子の時と今とって、しゃべる速度が明らかに違うのよ。だから「天皇陛下のしゃべるテンポ」って、きっとあるんだよね。
そんなことがどんどん頭の中を駆け巡って(笑)、でもそれがなんだかいい感じなんだよ。
それは、また変なたとえになっちゃうんだけどさ、ちょっと前のあのライブドアとニッポン放送の騒動なんて、亀淵さんにしても誰にしてもぼくが昔からよく 知ってる人がたくさん出てきて、「ああ、みんなたいへんなことになってるなぁ」とは思うんだけど、なんかピンとこない。どこかリアルな感じがしなかったん だよね。
まず、TOBだとかなんだとかってコメンテーターが言う言葉の一つ一つがぼくにはさっぱりわからないし(苦笑)。
コンビニでカレーをどうやって温めればいいのかよりもわかんない世界(笑)。
でもあの「バチカンとイラク戦争」は、ほとんど30秒ごとにグサッグサッと胸に来たし、すごく共感できるものがあった。
やっぱりぼくは情緒的な人間なんだなっていうことをすごく確認できたんだよね。

  「立川さん、こんばんは」
「ああ、どうも、こんばんは」
M: ・・・甘糟りり子さん?
T: そう。彼女が来てるってことは(この店=Stairは)相当ナウい店なんだろうな・・・。
でもなんで、ぼくがここ(Stairの個室)にいるってわかったんだろ?
(オーストラリアの白ワインと、鴨の料理を前に)
相当おいしいね、これ。
(ワイン、)ちょっとオーストラリアの草原を思わせるようだよね、なんか急に田崎真也みたいになっちゃうけどさ(笑)。
こういう白ワインって結構、こういう鴨とかの“野”のものと合うのよ。
フレンチともイタリアンともつかない、こういうおいしいものって、いいよね。
なんかカッコつけたレストランで、にせボーイみたいのにワイン注がれたりしてるより、よっぽど幸せだよな。
仰々しくワインリストとか持ってこられてさ、「ワイン、いかがいたしますか」とか言われちゃうとさ、こっちも難しい顔して「うーん」って言わなきゃいけないような気になるじゃない? なんか合わせちゃうんだよ。悲しい客の性(さが)っていうか、さ。
M: 性、ですか
T: そう、性。
昔さ、坂本龍一がYMOですごく無機的に見える演奏の仕方をしようとしてた時期があって。でも、一所懸命、無機的にやってるんだけど「東風」とかやると、 どうしても身体が動いちゃうんだよね(笑)。その時、ステージから下りて来た教授が「ミュージシャンの悲しい性だなぁ」って自嘲気味に呟いたことがあるん だけど、そういう意味での、性。
M: すごい説明(笑)。わかりやすいけど。
T: (飲食の)店は音楽と働いてる人がすごく大事だね。
あと、客層かな。ねえ、コウセイくん、あそこの女、うるさいからちょっと躾けたほうがいいよ(笑)。しかしなんであんなに大きな声でしゃべるんだろう。ああいう人って五感が衰弱してるんじゃないかな・・・。
この「立川直樹同時代トーク~Time Waits For No One~」-第13回は、今年の春から初夏にかけての立川さんとぼくの会話をまとめたものである。
青山「Stair」で話した時は、まだ桜の花の盛りの頃だった。そして六本木「Va-tout」、西麻布「PB」、新橋「まこちゃん」、あずさ21号の車 中・・・で会話を重ね、最後に西麻布の「TeTeS」で話したのは雨の少ない梅雨の蒸し暑さに人々がとまどっていた夜だった。
あらためて読み返してみると時間も雰囲気もさまざまな場所で話し、最大90日近くのタイ ムラグがある会話にも関わらず、全体に不思議な統一感がある。
ラフに生きているように見える立川さんの中に「常に揺るがない何ものか」=確固としたバックボーンが確実に存在することを、改めて思い知らされたような気がした・・・。

M: 昨日はどちらにいらしたんですか?
T: 昨日はね、ある人と四谷の荒木町あたりのスナックをハシゴしてて。
最初は「ストーン」っていう店、それから、昔、ザ・ピーナッツの振り付けをやってた小井戸秀宅(ひでや)さんの弟さんがやってる店に行って、そこはテーブルがゴルフのコースになってるの。 それで働いてる人の顔つきがもう尋常じゃないんだよ(笑)。
M: ああ、わかる。
T: それから六本木の「ノクターン」っていう店に流れて。そこ、ぼくはカラオケで唯一好きな店で、ニュー・ブリードにいた小林さんがオーナーなんだよ。
で、マコトちゃんっていう元歌謡曲歌手とミサキちゃんっていうとても可愛い女の子と3人でやってるんだけど、とにかく本当にうまい人しか歌えない店なの。
だってさ、(誰かが)マヒナスターズとか歌うと、マコトちゃんがハーモニーを付けて、小林さんがサックスで絡んじゃったりするんだから(笑)。
そこで元巨人軍の選手一行と歌合戦みたいになって、それから青木エミさんの店に行って・・・。
M: 相変わらず強烈な夜ですね。  
でも、スナックからカラオケっていうのは珍しいですね
T: やっぱり“人”だよね。
そういえば岡倉天心展を見に行った日に、久しぶりに「キャンティ」に行ったんだよ。
自分で予約して行ったのなんてもう何年ぶりだろうっていうぐらいだったんだけどね。
それでバジリコ半分とカラスミのスパゲティと・・・って普通のもの食べて、妙な安心感があって、なんかすごく良かったんだよね。いまだにギンガムチェックのクロスで、ランプも30年前と変わらない。プレゼンテーションの方法も昔と同じ。
つまんない愛想がない歌舞伎っぽい店、みたいな感じなんだ。
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