TIME WAITS FOR NOR ONE~立川直樹同世代トーク~

第11回 前編

年末年始は何かと忙しい。
立川さんはもちろん、ぼくもあれこれと忙しく・・・。
おかげで更新がいつものペースよりだいぶ遅くなってしまった。
お待ちかねの皆さん、すみません。そしてお待たせしました!

お正月の話から始まった会話は立川さんが「ここ数年のベストかもしれない」とまで言う映画の話につながり、ぼくたちの大好きな夜遊びの話、今年の新しい仕事の話、そしてポップ・スターという存在の特異性の話へと。

2005年は立川さんにとって忙しさにしんにゅうがかかった年になるだろう。
それは程度の差こそあれ、ぼくも同じことで、この毎月の対話をいつまで続けていけるのだろう、と思うこともないではない。
でも立川さんと語る夜、「キャメロン、この日、何してるの?」と誘われて街に出て行くその夜が、いつも緊張感を残しながらも楽しいものであるうちは、(遅れ遅れの更新になりながらも) ぼくはこの対談を続けていきたいと思っている。

今回は「爐談」での会話にこの年末年始に立川さんと過ごした時間の中で印象に残った話もミックスしたいわばRe-mixバージョン。そのため立川さんとぼくの他にもいろいろな人々が随所に登場するTime Waits For No One特別編となった。

T=立川直樹 M=三島太郎 I=飯田裕人 K=謎の女性ゲスト R=「爐談」のママ S=早乙女道春)
M: お正月はどうしてたんですか? 今年も引き籠もってたんですか(笑)?
T: うん、年末の30日にキャメと「PB」に行ったじゃない?
あの後はほとんど・・・。
普段はやっぱり仕事で見なきゃいけないとか聞かなきゃいけないものが普通の人よりは多いじゃない?
でもお正月は好きなものだけ見たり聞いたりしてて、そうすると目と耳が異常によくなって冴えていく気がするんだよね。
M: どんなの、聞いてたんですか?
T: 相変わらずクリス・レアとかレナード・コーエンとかコルトレーンとかなんだけど、それでふと思ったのは、中途半端な引っ込み方をしてるミュージ シャンってかっこ悪いんだよね。クリス・レアやレナード・コーエンみたいな本当の意味でのマイペースだったらいいんだけど、(表に)出たいんだか出たくな いんだかわかんない、中途半端な厭世主義みたいなやつっているじゃない?
だったらペット・ショップ・ボーイズぐらいまでなっちゃったほうがいいんだよ。
ペット・ショップ・ボーイズの ’91年のライブっていう、オペラの演出家が全部やってるDVDが今度出たんだけどすごく良いよ。今度貸してあげるね。
M: あ、是非。
T: あれはゲイの感性がすごく良い形で出たバンドだね。
M: 不思議な肌触りがありますよね。例によってお正月はおいしいケータリングの食事だったんですか?
T: 今年は「ラ・ブランシュ」と金沢の「金茶寮」だったね。
ほら、疲れてないからさ、舌までわがままになってるのがわかっておかしいんだよ。
それで、ずっと家に居たら日記録っていうのを思いついてさ。
M: ニッキロク?
T: そう、普段、新聞や雑誌やテレビを見たりしていろいろ思うんだけど、やっぱり表に出せないことって多いんだよ。
あの役者、下手だなぁとか、あいつ、なんであんなに下品なんだろう、とか。
そういうのってオフィシャルな場に出すとやっぱりまずいわけじゃない?
だから、そういうのを全部メモして、その元の新聞の切り抜きとかと一緒に取っておく。
M: それ、どうするんですか?
T: どうもしない(笑)。どうもしないでおいて、ぼくが死ぬ時とかホントにもうどうでもよくなった時におまえにあげるから(笑)、それを公開するでもなんでも好きにすればいい。
M: 江戸川乱歩の「貼雑(はりまぜ)年譜」みたいなものですかね?
T: そうそう、それに近い。
M: でもそれを書いてるっていう事実だけが世の中に伝わってるっていうのがおもしろいですね。みんな「何、書いてんだろうなぁ?」ってなんとなく気になるという(笑)。
T: そうなんだよ、でも見せない、と(笑)。
M: 映画とかは?
T: ちょっと前の映画で「シモーヌ」って見たんだけど、結構おもしろかったな。デジタルの人造女優の話で、非常に漫画チックなミエミエの展開なんだけど、よく出来てるんだよ。
 あと、前からずっと気になっていた「デイ・アフター・トゥモロー」を見たら、これもいわゆるパニックものとしてはよく出来てると思った。エメリッヒ健闘ってところかな。
M: ぼくは折角の休みだから普段の時間の感覚だとちょっとためらうようなものを見ようと思って、新藤兼人監督の「人間」とか「ラスト・タンゴ・イン・ パリ」とかを見てすごく楽しかったんですけど。特に「人間」とか、登場人物はほとんど4人だけで舞台も船の上だけなのになんであんなに飽きずに見ちゃうん だろうって。
あと、村上龍さん原作の「昭和歌謡大全集」を見たらこれがおもしろくて。
T: あれ、おもしろいよね。みんなあんまり評価しなかったけどぼくも結構好きだったな。
I: 「恋愛適齢期」、いいですよ。
T: ジャック・ニコルソンは前はすごく好きだったんだけど、ある時ぐらいから脚本の選び方が好きじゃなくなった。なんか“ジャストないい男”っぽいとこに行きすぎてる気がする。
M: 「恋愛小説家」は?
T: あれはまあまあだったね。
でも最近うれしかったのは飯田が「ギャンブル・プレイ」を見て、はまったって言ってることなんだよ。
もしかしたらここ数年のベストなんじゃないかと自分が思ってた映画を“超身内”の人間が「いい」って言ってくれたことに、何かおおげさに言えば思想的な背景の共通性とでもいうようなものを感じたわけよ。
M: へぇ、どんな映画なんですか?
T: 峠を過ぎたギャンブラーの話。ロシアのマフィアが自分が娼婦にしちゃった女を好きになって・・・っていう、いわば「おやじfemme fataleもの」なんだけど、むっちゃくちゃいい。もう、完璧だね。
このクジラも完璧(笑)。
M: へぇ(笑)、そこまでいいんだ。
I: いや、ほんと、三島さん、絶対見てください。あれ、最高ですわ!  
あのギャングは立川さんでぼくはあの女なんじゃないかと思っちゃうぐらいすごい!
T: うるさいよ、おまえ・・・。クジラ食って帰れよ。
・・・ニック・ノルティってすごく脚本を読むのがうまい俳優でさ。昔、なんか帰還兵の映画ですごくいいのがあるんだよ。
M: 立川さんの好きな俳優って、どのあたりになるんですか?
T: ぼくはやっぱりデニス・ホッパーと(ロバート・)デ・ニーロだね。
デニス・ホッパーは好きとか憧れっていうよりは「これでいいんだ」って思えたんだよね。
彼はスターになろうと思えばなれたわけなんだけど、ならなかったわけじゃない?
あ、こういう生き方もあるんだ、あっていいんだって思えたの。
あと、すごく不良っぽく見せてるんだけど、話す言葉とかはエレガントで基本的に品が良いっていうのがいいなって。
M: 最近、「ザ・コンプリート・ピクチャー」っていうタイトルのアンディ・ウォーホールのドキュメンタリーを見たんですけど、その中でデニス・ホッパーが結構たくさんインタビューに答えてて、めちゃくちゃかっこいいんですよね。なにか異様な目の輝きとか笑顔とかが。
T: へんなオーラがあるでしょ?
M: そう。でもああいう、己(おのれ)を知ってて、でも自分の意思に沿った生き方をしてて、なおかつエレガントな人っていいですよね。  
品が無い人って、付き合ってて疲れる。
T: そうなんだよな。それ、すごく重要なポイントなんだよ。
最近、下卑た人間が多すぎてさ。「おまえら、金のためなら何でもやるのか?」って聞きたくなるようなのが。
金のためになんでも、っていうんだったら、本物のヤクザの金の儲け方のほうが好きだね、ぼくは。
いつだったか忘れたが、ぼくはある時、立川さんの生き方を見ていて「これでいいんだ」と思えた。
人並み外れた溢れるような感性を持ち、しかしそれにただ流されることなく、Coolに最高にエレガントに生きる。
徹底的な個人主義を貫き、強く、自分の美意識の中で快楽的に生きる。
そんな生き方もありなんだ、と、思えた。
「快楽とは物事を特別な角度からながめることだ。快楽とは、次第に老いぼれていく、用心深く、口やかましく、
いつもびくびくしている肉体の束縛から、ほんの少しのあいだ解放されることだ。」
「ジャンキー」ウィリアム・バロウズ著 / 鮎川信夫訳 河出文庫刊より

M: そう、立川さんの好きな「トーク・トゥ・ハー」もこの前やっと見て、すごく良かったな。
T: おまえさぁ。あの映画、ぼくは前からすごくいい、つってるじゃん。
I: ぼく、あれ、だめでしたわ。
T: あれはおまえ向きじゃないんだよ、飯田・・・。
キャメ、おまえ、なんで早く見なかったの?
M: いやぁいろいろ・・・。DVDが壊れてたりとかして・・・。
T: おまえ、ぼくのこと、信用してないんじゃないの?
M: (笑) そんなことはないですよ。でもあそこまでいいとは思わなかったな。
T: あれは、「フリーダ」は?
M: 見てないです。
T: ああ・・・。
M: 最近、日本映画の「ロッカーズ」とか見て感動したりしてるもんで。
T: (そういうのを)見るなとは言わないけどさ・・・。
M: ま、「 ロッカーズ」は置いといて、「フリーダ」も今度見ますけど、「トーク・トゥ・ハー」の話に戻ると、最近、ああいうしみじみ良い映画が好きなんで、なおさらはまったのかもしれない。  
あわてて見た「オール・アバウト・マイ・マザー」もすごく好きだったし、ポール・オースターの「ルル・オン・ザ・ブリッジ」とか、なんかこう「死」とか「損なわれたものの痛み」みたいな話がすごく好きなんですよねぇ。

M: そう、こないだ高円寺におもしろいロック・バーを発見して。  
とにかく「これある?」って聞くとなんでもあるんですよ。ムーンダンサーの「アラベスク」のシングル盤とか、コスモス・ファクトリーのLPとかあって、立川直樹ファンにはたまらないという・・・。
T: しかしおまえもよくそういうとこ探してくるね。
やっぱ元祖ストーカーだね。
M: ・・・多少、マニアックではあるかもしれないですね。
K: いつ行くの、そういうところ?
M: おもしろそうだったらとにかくなんとかして行く。  
秋葉原のメイド居酒屋もおもしろかったですよ。
I: メイド関係、すごいらしいですね。
M: 今、秋葉原って電機関係以外にいわゆるオタク系のカルチャーがすごいことになってて、アニメショップはもちろんのこと、5階建てぐらいのビルが1棟丸ごとコスプレ・ショップだったりしてますからね。
K: 私とかも着替えられるのかしら?
M: ショップだから買取りなんだけど、その場で着替えて写真に写ると何割引かになるんですよ。
K: へえ・・・。そういうのってどういうところが楽しいの?
M: ぼく、異常な人とか過剰な人とか、そういう事象を見てるのが好きなんですよ、最近気がついたんだけど。
やっぱり自分がそこまで過剰じゃないから。
だから立川さんと一緒にいるのも好きなんですよ。自分より過剰な人を見ていると安心する。
T: ぼく、自分でも過剰だと思うもん。最近、特に思う。
I: 過剰と言えば、レース・クイーン撮影会はすごかったですよ。
K: (笑)みんな、何やってるんですか、レース・クイーン撮影会って。忙しいって言いながら。いつそういうとこにいくわけ?
T: な、困るだろ(笑)。ぼくはこういう連中と一緒にいるわけよ。
I: 前に中野に自衛隊パブっていうのがあってこれはすごかった。
「空襲警報!」っていう声がかかると電気がパッと消えるんですよ。
それでしばらく経って電気がつくと、女の子を触ってるやつはいるわ、匍匐前進してるやつはいるわで・・・。
ぼく、「お客さん、自衛隊にいました?」って言われて結構人気があったんですけど、ええ。
T: そのキャメロンが行ったメイドの店のコスチュームっていうのはアンナミラーズ系なの?
M: ゴスロリが多いですね。ほら、ビジュアル系のバンドのファンがよく着てる。 それで店員のメイドさんがみんなすごく若いんだけど、これまた絵に描いたようなオタクのお客さん相手にすごく一所懸命接客してるの。  
でもすごく流行ってる。
T: 出てくる食べ物ってまともなの?
M: “グリグリ”とか“ニギニギ”っていうメニューがあって。
T: ・・・。
M: グリグリっていうのはグレープフルーツとかレモンと絞り器をメイドさんが持ってきて目の前でグリグリしてくれる。ニギニギはメイドさんがサランラップの上からおにぎりを作ってくれるんですよ。
T: 来てる人はほとんど単身なんでしょ?
M: それがね、結構グループが多いんですよ。とにかく40坪ぐらいある店が満員できっちり2時間制ですからね。
で、メイド居酒屋を出て、2軒目はメイド・ショットバーっていうのに行ったんですけど、そこがなぜかBGVは相米監督の「ションベンライダー」なんですよ。
T: すごいね、それ。
M: 見てると(お客さんたちは) みんなやっぱり、他の飲食店だと落ち着けないんだろうな、っていう感じの人たちなんですよ。で、そういう人たちがそのメイド系の店に・・・。
T: 安住の地を見出してる・・・。
M: そう。でもぼく、あそこはそういう光景も含めてなんだかすごくおもしろかったな。  
前に立川さんが言ってた、東京の街って距離的にはそんなに離れていないのに全然違うことが起きてることのおもしろさってあるじゃないですか。  
あのキッチュなメイド・ワールドの秋葉原と、たとえば「PB」「アムリタ」「レッドシューズ」のある西麻布界隈の、まるで同じ大陸にあるとは思えないみたいな違い方ってすごく刺激的だと思いましたね。
T: そういえばさ、この前ふと思ったんだけど、「PB」って、非常に正しいスナックだね。あの音量とかみんながしゃべってる感じとか、ロックバーのストイックさがなくてさ。
M: ああ、言ってましたね。「ここは正しい港区住民のためのスナックだ」って(笑)。
T: そう。よくあるパターンで、オーナーの「自分はロックバーやってるんだ!」っていう気負いみたいなもんが見えちゃうとさ、疲れる時ってあるじゃない?
そこへいくと(「PB」の)フクちゃんの場合、やっぱりこの前キャメロンと一緒に行った時に聞いたような豊富な人生経験がモノを言うんだろうな。
M: あの話、おもしろかったですね。  
立川さんも福田さんも同じようにキャバレーでバンドをやってて同じように年増のホステスにからかわれたり誘われたりしたんだけど、福田さんは頑なに誘いを拒否して立川さんは誘いに乗ったところが人生の分かれ道だったという・・・。
T: そうそう(笑)。
M: イイ話もさることながら(笑)、あの、年末の雪の日にお客さん同士が「よいお年を」って声を掛け合ってて、福田さんが「明日も来いよ! どうせ家に居たってやること、ないんだろ?」って言ってるあの感じなんてまさにスナックで、いい感じですよね。
T: そう、年末、「田佐久」行ったんでしょ。どうだった?
M: おいしかった。あんこうの肝鍋も相変わらずおいしかったけど、かわはぎの刺身、しょうゆと肝で食べるやつ、むちゃくちゃうまい。
T: ああ、あれおいしいよな。
そう、2月にさ、「あさば」で新内仲三郎さんを呼ぶ会があるっていうんでとりあえず予約しといたんだけど、行こうよ?
M: いいですね、行きます。
T: あとは「美加佐」にも行かなきゃね。
でも(爐談のママに向かって)ママ、これ、すごいね、口子(くちこ)。
R: そう、おいしいでしょ?
M: それって何なんですか?
R: これはねぇ、海鼠(なまこ)の卵巣を絹糸にかけて干し固めたものなのよ。
あぶって食べるの。
T: 高いぞぉー、これ(笑)。
R: うちは大丈夫よぉ。良心的な店ですから。
でも他のめったなとこで食べちゃだめよ。一万円札をあぶって食べるようなもんですからね。
K: これおいしい~。
M: あ、ホントだ、うまい!
刺激的なことが大好き
おいしいものが大好き
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